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■2007年9月

伊藤忠ファッションシステム(株)
リーテイルソリューションチーム 
辻田 泰子

時代とともに進化するセレクトショップの行方

セレクトショップ業態がスタートして既に40年余となる。この間の時代の流れ、ファッションの趨勢とともに消費者がセレクトショップに求めるもの、その果たす役割も大きく変わってきている。今までの流れを振り返ると同時に今後の方向性を考察してみたい。

■セレクトショップの変遷   (図1参照)

 海外へのあこがれと希少性の価値 (草創期〜1970年代)

最初にセレクトショップと名乗ったのは、1964年オープンのサンモトヤマであろう。まだアメリカ製品への憧れが強い中、取扱いブランドはエルメス、グッチ、バカラといったヨーロッパの超一流品ばかり。当時は各界の名士が集まる特別な社交場のようだったという。
その後、70年代半ばにエレガンス系としてザ・ギンザ、アメカジ系としてミウラ&サンズ(後のシップス)、ビームスがそれぞれセレクトショップとしてスタートした。いずれも、ここでしか買えない希少性に加え、海外のライフスタイルを垣間見られることが大きな魅力になっていた。

 ブランド全盛の中での“目利き”の価値 (1980年代〜バブル期)

DCブランドの拡大に加え、ルイヴィトンなどのインポートブランドがブームとなり、それらを身につけることが当たり前になりつつあった。インターナショナルビームスやシップスもアメカジだけではなく、ヨーロッパのブランドも取り入れ始めていた。そこで扱われていたのはブランドブームに乗っかった有名ブランドではなく、個性が光る、人とは違うスタイルのためにセレクトされた半歩先を提案してくれるブランドであった。各ショップそれぞれの“目利き”によるセレクトこそがショップの価値であった。

 セレクトブランドの同質化とオリジナル≒パクリの氾濫 (バブル後〜1990年代)

バブル崩壊後、ファッションは一気にカジュアル化へと拍車がかかり、価格志向が強まった。レディスアパレルのベイクルーズ、トゥモローランドなどが自社ブランドとインポートのセレクトブランドを上手くミックスしたショップ展開を始めていた。オリジナル商品の主な目的は、インポートのエッセンスを加え手軽な価格でクィックに対応した商品による消費者への間口の拡大と高粗利率の確保であった。
そして90年代半ば以降、大小を問わず様々なセレクトショップが乱立。次第に、セレクトされるブランドはどこもそう変り映えせず、コピーと見まがうようなオリジナル商品ばかりが目につくようになっていた。一方消費者にとっても海外は既に身近なものとなり、インポート商品の有り難味も薄れつつあった。次第にセレクトショップにも魅力や提案が感じられなくなってきていた。

 淘汰〜新たな個性の追求へ (2000年以降)

99年秋ユニクロのフリースキャンペーンにより、セレクトショップだけでなく、業界全体が価格競争に巻き込まれ、大きな衝撃を受けた。 その後、この流れは消費の二極化を生む。当たり前のことなのだが、消費者は「安くて良いもの」が当然のものとして手に入るようになったからこそ、あえて「多少高くても欲しいもの」、「人とは違うもの」の意義とその使い分けを今まで以上に意識するようになったのだ。
おそらくこのあたりが転機となったのであろう。一時はあきらかなパクリや面白味のないベーシックな低価格商品にシフトしかけたオリジナルへの取組が軌道修正され、旗艦店の見直し、大人向け業態の取組などを中心に、再びショップとしての個性を追求する姿勢が見え始めてきた。また、リステア、ドロワー、ラブレスなど頭一つ飛びぬけて明確な個性を持ったセレクトショップが登場したことも見過ごせない。

◇図1 セレクトショップの変遷 (拡大する

 

■セレクトショップに立ちはだかる4つの壁

今後ますますブランドでの差別化は難しくなると考えられる。その主な理由として4つある。

1.ネットをはじめとするメディアの進化が挙げられる。今や一般消費者もほぼリアルタイムで海外のコレクション情報やデザイナーの動向を目にすることができるようになった。逆にメディアを通して東京のリアルクローズが海外に与える影響も大きくなっている。

2.消費者のファッション経験値が高くなったことが挙げられる。ブランド好きだとしてもブランド依存ではなく、自分でセレクトする眼が養われてきた。情報が氾濫する中、仕掛けられた流行を理解し、自分をどう見せたいか計算した上で上手く取り入れるスキルが身に付きつつあるのだ。

3.ジャパン社設立やエージェント契約が整備され、販路およびPRのコントロールが強化されていることが挙げられる。昔はセレクトでしかお目にかかれなかったブランドが百貨店インショップや直営ショップの展開を始める中、ただブランド集積するセレクトでは意味が感じられなくなっている。

4.このユーロ高の中、インポートの価値が揺らいでいる。セレクトショップにしてみれば約5年前に較べて3割近い原価高であり、消費者にとってもただインポートというだけでは割高感の感じられる商品となってしまっているのだ。

 
■今後のセレクトショップの大きな2つ方向性    (図2参照)

1. クリエイティブ編集型
強烈なディレクターのもと、同じブランドであっても他にはない編集力によってショップとしての個性を打ち出す。例えば、ファッションだけでなくカルチャーミックスまで行うラブレスのように、“ゴヤールをラブレスで買いたい”、と思わせる。成功のためには、独創的なディレクションのできる人材の確保がキモとなる。消費者もかなりセグメントされるがインパクトもある。

2-1. オリジナル洗練型
時代性の提案としてセレクトでエッジを効かせながらも、その間をつなぐ役割としてオリジナリティのある商品を開発しショップの世界観を創る。例えばドロワーは何十万円もするニナリッチのドレスの横にオリジナルのドレスが10万円前後で展開されている。いずれも少し甘さのあるエレガントなドロワーテイストで上手にまとまっている。
またエストネーションではセレクトだけではコーディネートが成り立ちにくいところに、それなりのグレードを保ちながらお手軽感も感じられるオリジナルを差し込むことでトータルコーディネートを提案する。オリジナル≒パクリではないのだ。
いずれもショップ起点で作られた洗練度の高いオリジナルを加えることで、セレクトの価値を高め、ショップ全体のまとまり感も高めている。代表的なセレクトショップであるユナイテッドアローズ原宿本店をはじめ、旗艦店では比較的こういった取組の成果が見えてきた。

2-2. オリジナル主導型
多店舗に拡大する場合は”オリジナル洗練型”の流れを汲みつつも、エッジ的なセレクトよりオリジナルの比重がさらに高くなる。オリジナルがある種ブランド化していっているのだ。しかし消費者のショップに抱くブランドイメージの源泉は、旗艦店等で発信されるエッジな部分に寄るところが大きい。

◇図2 セレクトとオリジナルの役割
   

 

■最後に・・・

最近行ったセレクトショップユーザーへのインタビューの中で、印象に残ったコメントがある。“セレクトショップに求めるものは新しい出会いや発見。特に手軽に流行を取り入れられるオリジナルは便利、オリジナルが上手にできているショップは評価する”、というものだ。賢くなった消費者を取り込むためには、セレクトブランド以上にオリジナル商品がもはや重要なものとなっているのではないだろうか。

 

 



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