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■2012年5月

伊藤忠ファッションシステム(株)
ブランディング第2グループ ブランドアライアンスBU 
田島 淑江

業界を育てて生かす
―出版メディアを生かしたブランディングとは―

2011年の雑誌市場が27年ぶりに1兆円を割り込んだ。出版科学研究所の調べによると、年間の推定販売金額は前年比6〜7%減の9850億円前後になり減少幅は過去最大。休廃刊が相次ぎタイトル数が減ったことに加え、スマートフォンの普及が若者らの雑誌離れに拍車をかけたとみられる。出版社も、あの手この手で打開策を打っているがなかなかその動きはコンサバで従来の出版業界の枠を越えられてはいない。ただ一方で、最近他業界が仕掛ける“出版メディア”の動きが面白い。本の枠を飛び出た新たな発想が人々の価値観を変え、本のカタチ、そしてそれに付随するブランドの価値を高めている。出版メディアを用いたブランディングとは、業界の新たな動きに注目したい。


本屋を超えた編集力

4月18日東急プラザ表参道原宿5Fに『Tokyo's Tokyo(トーキョーズ トーキョー)』がオープンした。空港オリジナル編集型店舗として「東京発の旅」をコンセプトに羽田空港第2旅客ターミナルに1号店がオープンしてから約3年、東京のカルチャー発信地である原宿表参道を舞台にした第2号店のコンセプトは日本が世界へ誇る文化、マンガ・アニメである。本棚も平台も、お店全体が徹底してマンガ仕様。「漫画の中にいるような感覚を体感できる空間」をコンセプトにした店内にはマンガ本を開いたようなコマ割りや、吹き出し、効果線などを用いて空間がつくられている。

空間デザインは建築家・松井亮さん、店員のユニホームは「アンリアレイジ」、漫画のセレクションはブックディレクター幅允孝さん(BACH)、そしてそれらの環境をつなぎ合わせる雑貨セレクションは「method」山田遊さん。ファッション、プロダクト業界の若き精鋭たちが集結し、“本”の枠を飛び出て“本”の価値を高めている。

「魔女の宅急便」の横には主人公キキが頭に付けた赤いリボンのイメージのポーチ、「ワンピース」の横には、ルフィの帽子を彷彿とさせる麦わら帽子…そんなマンガとファッションの関係図を店内で表現している。

彼らがこの店を通して願うことは1冊のマンガ本を入口に、未知なるモノや本に出くわしてもらいたい ということ。それこそがネットショップにも電子書籍にも出来ない“書店”のあるべき姿だったのではないだろうか。手に取ってときめく本とその本の横できらめく雑貨たち。今までにない出会いがある本屋さんが出版業界の外から誕生した。


表紙のメディア力

本の枠までは越えないが、書籍の内容とは別に、表紙という場所を一つのメディアとして考える仕掛けも広まってきた。今文庫、書籍ジャンルで人気が高いのは「ライトノベル」と呼ばれるイラストなどを挿入した小説のことで、表紙だけ見ればマンガと勘違いするようなポップさと軽さが感じられ、活字離れした若者でもつい手に取ってみたくなる新感覚の書籍に人気が集中している。

ただ、キャッチーな表紙、豪華な付録も日々、形を変え進化し、とくに付録は付いていることが当たり前となってしまった今、今後は希少価値の創造がマーケティングポイントとなるだろう。

日本国内、そして海外で大人気のキャラクターを使ったキャラクタービジネスを行うサンリオは、書籍の表紙を新たなブランディングの場所として考えている。今年3月に宙出版発行の小島アジコさん著書の最新刊『となりの801ちゃん 6 限定版』でその主役キャラクターの801ちゃんとキティちゃんのコラボレーション企画を発表した。

『となりの801ちゃん』は、小島アジコさんが2006年4月に自身のブログで展開し、じわじわと人気となったことで書籍化されたシリーズもので第5巻までで70万部を超えるヒット作である。ただ、その第6巻の発売にあたって話題性の限界を感じていたところにサンリオからの企画の持ちかけがあった。このコラボは書籍上でしか起こらない希少価値の高いキャラクターとして注目が高まり、互いにファン層の拡大につながった。

サンリオはこの801ちゃん×キティちゃんキャラクターの作成によるロイヤリティー収益と購入者特典付録としての「ハローキティ×801 特製コラボクリアファイル」の制作費収益の2つを得る。他の書籍との差別化を持てる話題性を作りたい出版側にとっても、付録カルチャーが根付いた消費者にとってもうれしい出版形態であり、双方のキャラクターの価値を高める新しいアイディアの一つとして業界でも注目されている。

「となりの801(やおい)ちゃん」
著者/小島アジコ



ブランディング視点の出版のカタチ

伊藤忠ファッションシステムは消費者マーケティングを基盤としたブランディング事業ビジネスの主軸に置いているが、弊社も今、出版メディア流通を用いたブランディングのあり方について注目している。

今年3月初旬に大人気ブランド、レスポートサックの春夏コレクションを特集したブランドブック『LeSportsac Special Magazine 2012 Spring-Summer』が発売となった。これは当社が出版元となり発行している。発行を手掛けるにあたり、ブランディングの視点で今までの付録ありきのものではなく、本来の“ブランド価値と売り上げへの貢献”というブランドブックのあるべき論を振り返ったコンテンツ作りにこだわり、ファッション性を高めることでブランド価値向上と新規顧客の獲得も図っている。

今やブランドムックは、単なる付録の域を越えて、バッグに付録の雑誌がついてくるという発想に変化しつつあり、肝心の雑誌の中身の方が薄っぺらいという意見が高まっている。また付録で満足してしまい、実際の店頭商品の売り上げを食いあうという事態を引き起こしているケースもある。本来共存共栄であるべき出版社とブランドとの関係を立て直し、レスポートサックのブランドホルダーである伊藤忠商事と、レスポートサックジャパンとともに企画立案から制作まで手掛けたものが今回のレスポマガジンである。ブランドホルダーとしてブランド価値向上という命題を持つ、伊藤忠商事のグローバルな視点と、日本マーケットにおけるレスポ顧客のニーズを熟知しているレスポートサックジャパンの視点を汲み取りつつマーケットニーズに則したブランディングにつながるコンテンツを提供している。


◆「LeSportsac Special Magazine 」
 表紙と特別企画2Wayナノポーチは2柄展開

◆TSUTAYA 六本木店
 店頭プロモーションの様子

また、弊社は取次大手の日販と提携することで過去のデータを最大限に生かしながら、効率的な流通ルートの選択を行い、売り場の優先的確保と主要店頭でのプロモーションを実施、また代理店を通さないことでトータルコスト削減を図っている。

発売から本誌の売上はもちろんのこと、本誌で掲載されていた商品の店頭での動きも期待以上だった。本誌で大きく取り上げられていた商品の発売日には公式WEBサイトへのアクセスが集中し回線がつながりにくくなる事態も起こり、マガジン限定のキャンペーンを店頭と連動させたことで来店客数や問い合わせ数も急増するなど効果が発揮された。それだけ読者が本誌の内容にまで関心を寄せていたということであろう。

 
◆木下優希菜さんを起用した
ディズニーコレクションページの掲載商品は
すべてにお客様からの注文が殺到

◆ブランド情報だけでなく
ハワイのお勧めスポットも紹介


変化し始めている出版業界にあって、ブランディングメディアとしての可能性が広がる。実は表現の可能性は無限大であり、本もショップもこれまでの受け身な存在から、仕掛けて応えを得る「場」、そして異なるジャンルが自由に交われる場として変化してきている。アップデートできない普遍的な部分は本の良さであり、つまりネットのような瞬間的な儚さとは逆の、いつまでもそこにある、じっくりと伝わっていく機能を、単なる読み物としてではなく、改めてひとつのメディアとして意識していただきたい。



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