ウェアラブル元年と言われた2013年を皮切りに、身につけられる装着型のガジェットが続々と市場に登場。その後、2015年にはファッションとテクノロジーの関係が注目され、テクノロジーを取り込んだファッションにスポットライトがあたった。2016年には、次の段階である「身の周りにある素材をインタラクティブなデバイスに変える」というコンセプトのもと、開発が進んだ。2017年、タッチセンサー機能を衣料に搭載したスマートガーメント(機能衣料)が本格的に市場に参入。 今後、アパレルデザインに於いてテクノロジーは革新を後押し、スマートガーメントは、これまでの衣服の機能性に対する我々消費者の期待を大いに覆そうとしている。スマートガーメント市場は2020年までに38ビリオンドル(約4.2兆円)を超える市場になると言われている。注目のスマートガーメント、テクノロジーをご紹介させて頂きます。


ガジェットではない注目のスマートガーメント

■事例1) Google x Levi’s 「Project Jacquard」
注目のスマートガーメント

Googleの先端開発技術チームATAPが、“あらゆる衣服をタッチスクリーンに変える新しいテクノロジー”をコンセプトに、独自のセンサー機能を携えた電子化されたテキスタイル「Project Jacquard」(プロジェクトジャカード)を開発。Project Jacquardを使用した第一弾のコラボは、ジーンズメーカーのLevis’s Strauss社と共同で開発したサイクリスト用の デニムジャケット「Levi’s Commuter」。
「Levi’s Commuter」は、デニム上からスマートフォンなどの遠隔操作が可能な次世代トラッカージャケットである。当初は春の発売を予定していたが、ようやく2017年9月27日からLAのFred Segal, BrooklynのKinfolk, BostonのConceptsで販売が開始される。一般のファッション衣料としては初の本格的なスマートウェア参入事例となる。洗濯機と乾燥機の使用も可。フィット感とデザインに拘ったガジェットではないスマートガーメントが誕生した。価格は$350(約39,000円)。

■事例2) Nadi X
注目のスマートガーメント

2013年にオーストラリア・シドニーで設立され、現在NYを拠点とするファッションテック会社「Wearable X」が、「デザインとテクノロジーの融合による生活の質の向上」をコンセプトに掲げ、開発したスマートヨガウェアライン「Nadi X」。
通常、ヨガスタジオでは先生が、生徒一人一人のポーズを直してくれるが、このNadi Xは、ヨガパンツの装着者自身がセンサーの指示を受けながら、自分でポーズをアジャストできるというもの。まず、Nadi Xのモバイルアプリをダウンロードし、アプリとヨガパンツを連動させる。ヨガパンツには、お尻、膝、足首の部位に5つの振動センサーが埋め込まれ、ヨガのポーズが少し傾いたときにゆるやかな、指でとんとんと叩くような振動がおくられ、どちらの方向に動いたらよいかを教えてくれる。ヨガパンツ内のセンサーとバイブレーションは軽量のクリップ式バッテリー($132)で作動され、クリップは左足の膝上に装着する。
Nadi Xのクリエイターはファッションデザイナーでもあるため、ウェアラブルテクノロジーの課題でもあるデザイン性にもとことん拘り、スタイリッシュなデザインに仕上げている。ヨガパンツ価格($299)。

スマートテキスタイルの開発

ニューヨーク州ブルックリンにキャンパスを構える私立大学Pratt Instituteでは、ニューヨークに生産回帰を促すことをコンセプトに、ニューヨークを拠点にするデザインスタートアップのビジネスインキュベータープログラム「Brooklyn Fashion Design Accelerator 」(BF+DA)を2013年に設立し、30人のデザイナー候補者用のスタジオスペースと生産機能を提供。またその一貫で、最近TEK-TILESというプロジェクトが発足された。BF+DAは、環境と社会の双方に貢献する起業精神の支援に注力するブルックリン地区のプレジデントEric L. Adams氏から50万ドル(おおよそ5500万円)の資金を調達。ブルックリン地区からも後押しを受けた。

このプロジェクトは、商品開発、アパレル、テキスタイルデザインやインタラクティブテクノロジーを専門にするデザイナーや研究員グループを各大学から召還し、スマートガーメントの新しい生産方法、機能素材を模索することを主としたもの。TEK-TILESプロジェクトでは、30ものユニークな性質と機能を持つ伝導ヤーン、ナノファイバーやフィラメントを結合し活性化させた“TEK-TILES”と呼ばれる新しいニットスウォッチの開発を主に行っている。ニットスウォッチは、その製造性、機能性と意図を審査され、素材の寿命とともに環境へのインパクトも査定される。更に、開発チームは新素材を模索するだけでなく、持続性可能なテクノロジーの初の資源として、テクノロジーをテキスタイルに統合することで起きる環境や倫理的なインパクトも探る。
スマートテキスタイル
先日、そのTEK-TILESプロジェクトの進行及び、スマートガーメントと機能性生地についてのパネルディスカッション「This is Not a Sweater: Smart Garments & Functional Fabrics」が行われた。このパネルディスカッションは、Brooklyn Fashion +Design AcceleratorのエグゼクティブディレクターDeb Johnson主催、ゲストスピーカーには、テクノロジーを採り入れた、アクティブヨガウェアブランド「Wearable Experiments」社のガーメントエンジニアOlivia Burca, ウェアラブルコンピューティング(スーマトフォンやノートPCとは異なり、主に衣服状や時計状で身につけたまま使用できるものの意)と情報連携方遠隔医療のパイオニアでWatson財団のディレクターでボードメンバーでもあるChris Kasabach, ファッション・テクノロジーデザインサービス会社「Wearable Media」の創立者、ファッションテックデザイナーでTEK TILESの研究員でもあるYuchen Zhangが参加し、“どのようにしてスマートガーメントや機能性素材を創りだしていくか”を語った。

このBF+ DA TEK-TILESプログラムは、ニューヨーク市において、真のパイオニアプログラムと呼ばれている。商品開発者と資源を繋ぐことで、企業は、商品のコンセプト作りから市場に商品がでるまでの時間とコストを大幅に短縮することが可能になった。また、この新規素材は、非常に大きなポテンシャルを秘め、アパレルの機能性を再定義するだけでなく、我々の暮らしを健康的に、安全でより生産性のあるものへと導いてくれる。また、経済成長の観点からもこの新しいテック素材は、新しい仕事や新しい市場を創造する大きな要因となると予測される。

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