2017.11.7 - All , ビジネス

EC・ユーズド…ファッションにおけるモバイルフレンドリーという可能性

マーケティング開発グループ

リーテイルマーケティングビジネスユニット 

太田 敏宏

2017年もあと2ヶ月足らずを残すのみとなったが、他の分野に比べ、生活者はファッションへの関心がなくなってしまったのではないかと思えるほど、ファッションのリアルコマース市場は不振に陥っている。それに天候不順が加わり、泣きっ面に蜂というべき状況だ。本号では、さまざまな課題に直面した2017年の業界を振り返ってみようと思う。

◆衣料は売れず、インバウンドに頼る百貨店

例えば百貨店。衣料品売上は、2017 年8月まで、22か月連続で前年比マイナス。9月にようやくプラスに向いたが、これも急激な気温低下が大きな要因で、ファッションへの関心が復活したからとはいえない。そんな中、大阪や札幌地区の百貨店では、LCC就航数増加によるインバウンドの影響を受けて店舗全体では売上は好調。しかし、好調なのは化粧品が中心で衣料品はその恩恵にあずかれてはいない。

百貨店の売上高対前年比

◆相対的にEコマースが上昇

リアルコマースが不調の一方で成長しているのはEコマース市場だ。4 月に発表された経済産業省の「電子商取引に関する市場調査」によると、衣類・服装雑貨のEC化率は、9.04%(2015 年)から10.93%(2016年)に伸長した。市場全体のEC 化率が4.75%→ 5.43%(同)にとどまっていることに比較すると、ファッション分野のEC化率は、その伸び率も上回っている。2017年は、リアルコマースが不調なことから、さらに衣類・服装雑貨のEC化率は上昇することが予想される。以前、経済産業省は2020年の衣類・服飾雑貨のEC化率を14%と予測していたが、このまま伸びると仮定すると2018 年には15%を超える可能性もある。そうならば、ファッションの生き残りをかけて、Eコマースにシフトすることが得策なのか。アメリカのToys“R”Us 破綻のニュースでは、ECのamazonが、リアルコマース中心のToys“R”Usに勝利したかのような構図で取り上げられた。しかし、何でもEコマース化すれば成功するというほど単純ではない。ファッションECで成功しているのは、リアル店舗でブランディングできている企業であり、ネット専業ブランドはなかなか成功しづらいのが実情だ。Eコマースが増加すればするほど、ブランディングという意味でのリアル店舗の役割はますます重要になる。リアル店舗は売り上げや利益を稼ぐ役割ではなく、ブランドの世界観を伝えることに注力することになるかもしれない。

電子商取引に関する市場調査

◆ユーズドファッションマーケットの伸長

今年、もう一つ大きく成長したのがユーズドファッション市場で、このマーケットは大きく3つに分けられる。

1つ目は「ヴィンテージ」といわれるマニア垂涎の歴史的名品を扱う分野。これは飾って楽しむ美術品的な領域であり、景気が強く影響するため、現在は活況ではない。2つ目は、○○年代風のファッションを再現できるような「古着」マーケット。ファッション感度の高い若年層が、トレンドに合った個性的な商品を探した結果、「古着」に行き着いた格好だ。これは、「新品」がコモディティ化しファッション性をどんどん失っていることが背景にある。「古着」の方が、素材もデザインも時間をかけて企画された商品が多く、品質も高く、個性的ということを直感で嗅ぎ取っているのだ。「古着」を超えるオシャレで価値のあるものづくりを復活させなければ「新品」のマーケットの復活はないだろう。

3つ目は「中古衣料」の分野である。フリマアプリや大手ECサイトのユーズド強化で、中古衣料品の流通が活性化している。これまでは「ヴィンテージ」や「古着」ではない商品の購入に消費者はかなり心理的抵抗が強かったといえるが、スマホアプリでの取引の簡便さ、大手ECサイトによる「まとめて買います」的なサービスなどで、まず、中古衣料を売る心理的ハードルが下がった。さらには「シェアリングエコノミー」というマジックワードで、中古品を売り買いするのは「私って、なんてエコでエシカルな人かしら」と、“ 何かいいことをしている” 感もある。飽きたら売ることを前提にリセールバリューが高そうな商品を購入するという行動も生まれており、今後はリセールバリューまで含めて商品企画をする必要がありそうだ。

しかし、中古衣料品の流通がこのまま成長し続けるのかという疑問もあり、分野は異なるがブックオフの失速がそれを予感させる。中古品の流通は、売り手と買い手がそれぞれ数多くいることで成り立つが、ブックオフ失速の原因は、活字離れやデジタルコンテンツへの移行などで、売り手と買い手の双方が減少したことが要因だ。同様のことが中古衣料品流通の分野でも起きる可能性があり、ファッションに対する興味が低下すれば、中古衣料市場にもいい商品が出回らなくなる。つまり、今の中古衣料品の流通活性化は、人々のファッションへの関心がまだ保たれているという証拠なのだ。

中古衣料の流通

◆“モバイルフレンドリー”である必要性

今年、消費を語る上で欠かせないキーワードが「フォトジェニック」だ。SNSにアップしたいフォトジェニックなものかどうかで商品や行き場所が選択される。「古着」の人気も、「個性的」「見たことない」というフォトジェニックな要素でもて囃されている側面もある。スマホで情報収集から行動・購買まで連続して行う時代だからこそ急浮上したキーワードである。Eコマースでは商品の一覧性があり、検索も自由にできる。商品にアクセスできる機会が増した反面、新品であろうが、希少なコラボ商品であろうが、同じ見え方になりつつある。だからこそ、フォトジェニックさが、購買喚起の重要な意味を持つようになったともいえる。

ウェブサイトがスマホなどの端末でも閲覧・利用しやすいように作られているかどうかの基準で、モバイルフレンドリーに作られていないと検索順位が下がったり、アクセス数が減少したりする。ECの隆盛も、フリマアプリによるユーズドファッションもモバイルフレンドリーになったことが大きい。

◆“モバイルフレンドリー”化するには

これまで商品は、「トレンド性も個性もそこそこで、コーディネイトの汎用性があり、幅広いターゲットに対応できる」ものが優等生とされてきた。これは、お客様が店頭まで辿り着いた際に最後の購買の決断をさせるためのテクニックである。一方で、モバイルフレンドリーであるためには、消費キーワードの「フォトジェニック」のように、写真映りが良く他の商品と並べても目立つ、スマホの小さな画面でも特徴が伝わりやすいということが重要だ。今年売れているロゴアイテムも、90 年代調の復活というトレンドだけではなく、消費者がスマホの画面でも興味を持ちやすく、かつ“ インスタ映え”する、またフリマアプリで売りやすいという意味で、モバイルフレンドリーな条件も揃ったことが後押しした。

さらに、興味を持ってもらうには店舗も特徴的であることが必要だ。外観・サービス・スタッフ、イベントなど何らかの関心を引く要素があるか、体験者の評判が高い必要がある。既に飲食店は、スマホで店を決めるためのツールである「食べログ」などの洗礼を受け、モバイルフレンドリーにシフトしている。

そして、価格変動にも対応しなければならない。Eコマースの隆盛で、クーポンなど価格変動で購買を喚起することが常套手段になってきている。あまり連発させると効果が薄れるという側面もあるが、これに対応できないと競争力も失う。リアルコマースが不振に喘いでいても、Eコマースやユーズドファッション、フォトジェニックなアイテムが好調であることを考えると、まだファッション市場は浮上の可能性を秘めている。消費者のファッション離れを加速させないためには、他の消費財分野に負けない価値提案が要求されている。