2017.10.18 - All , フォーラム

2017ifsマーケティングクリエーションフォーラム 第1部

次代へ向けて、マーケティングのベクトルも価値共創、生活者と企業が共に社会的価値を創造する方向に向かっています。そういった次代を担う若者を、伊藤忠ファッションシステムの世代知見と重ね合わせ、“若者3.0”と定義しました。従来の“若者1.0”“若者2.0”とどう違うのか、“若者3.0”の特徴をレビューするとともに、これからの時代を彼らはどう創るのか、企業はどのように存在し続けるのかを探ります。“若者3.0”を牽引役として、どの世代・年代にも訪れる“共創の時代”を予見します。
スピーカー:吉水由美子

第1部フューチャーアスペクト
“若者3.0”と“共創の時代”を予見する

2017ifsマーケティングクリエーションフォーラム

◇ はじめに
今日のテーマ「若者3.0と共創の社会を予見する」は、あえて予見という言葉を使っています。予測ではなくこれからの時代をどう見るか、1つのものの見方として考えていただけたらと思います。日頃の業務の中で、“点”で感じていることを線でつなげたいと思いこのようにまとめました。伊藤忠ファッションシステムは、普段は消費者・生活者というミクロ目線から今の時代はこうと分析していますが、今日はなるべくミクロ+マクロ的な視点、つまり世の中の流れがどうなっているか、という視点も持って進めたいと思います。

◇今後へ向けたマーケティングのベクトル
今後へ向けたマーケティングのベクトルとして、従来の「欲望喚起型マーケティング」から「関係構築型マーケティング」への流れがあると思っています。欲望喚起型マーケティングは企業から消費者へ情報提供、主に広告宣伝をすることで、競合との差別化により利益を得るというパターン。それに対して、いまどきの関係構築型マーケティングは、生活者と企業が水平的に価値観や気分を共有することで、顧客と企業が共創的に価値を作っていくパターンです。前者は物を買いたい欲望があることが前提となっているが、今はその欲望が薄くなっている時代で、欲望を喚起しても消費になかなか結びつきません。後者は水平的な話題供給や価値観共有によって消費が起こるのはないかという仮説です。

◇30年→15年→今/今後の若者について
次に、30年前、15年前、今、そして今後の若者についてご紹介します。弊社の世代論では、バブルエコノミーを社会人になってから経験した人たちをプレバブル、バブル崩壊後に社会人になった人たちをポストバブルと呼んでいます。若者1.0はプレバブルの後半世代で、80年代に20代だったハナコ世代が典型的。右肩上がりやバブルを謳歌し、現在50代になります。若者2.0は団塊ジュニアが典型で、バブル崩壊直後に社会人になり、不況や先行き不透明な中で戸惑いながら生きてきた世代です。現在30代後半から40代。若者3.0がいまどきの若者ですが、ポストバブル第2世代なので不況や不透明な感覚はもはやデフォルトであり、その中で対応戦略を身につけた世代と言えます。20代後半のハナコジュニア世代、20代前半のLINE世代が相当します。若者3.0は別名ゆとり世代とも呼ばれているが、本人達はそう呼ばれるのを非常に嫌っています。(図1)
マーケティングフォーラム第1部 今後の若者
日本、北米、中国の世代を比べると、若者3.0は北米でいうところのミレニアルズ、中国でいうところの80后・90后というように、いまどきの新しい価値観を持った消費者としてどの国でも注目されています。

価値観やライフスタイルの形成要因とは、最も近い関係にある親との関係と教育、消費の自己裁量権獲得期の経済状況、周囲と関わるコミュニケーション手段、この3点だと思います。

まず親の価値観を見ていると、若者1.0は親が戦争体験世代なので自分たちは戦争で得られなかったこと、教育や習い事を子供に託す傾向があります。若者2.0は親が団塊世代(企業戦士と専業主婦のカップル)なので、型にはまったことを嫌ったのか子供には自分らしさを強要しがちになります。その結果、子供は自分らしくいなくてはと自分探しに走る傾向があり、ニートやフリーターの比率も高くなります。そして、若者3.0の場合は、1.0と親子関係にあります。親の方はバブルを謳歌しつつも、その後の不況も体験していて現実的なサバイバーです。そのため、子供にもそのサバイバル能力を身につけたいと投資してきており、子供に現実的にできることを気づかせるようにしています。

2番目に、消費の自己裁量獲得期の経済状況です。20歳前後に自分の稼いだお金で消費をするようになった時の経済状況や社会状況が、その後の消費価値観にも大きく影響します。若者1.0はバブルを謳歌、若者2.0はバブル崩壊後の不況に遭遇、若者3.0は不況がデフォルトという中で育ちました。若者1.0は80年代の気分を受け、個性化=他人との差別化と考えています。若者2.0世代が20代だった頃のインタビューでは、「私って◯◯な人だから」という言い方をよく聞いたものです。つまり自分らしさの自己規定が重要であり、ナンバーワンよりオンリーワンを目指すようなところがあります。一方で若者3.0は、「素敵な自分を探しても見つからない」と自分探しからは脱却しています。どのようにサバイブしていくかと言うと、自分らしさを周囲の人達に決めてもらって、その上で快適な居場所を探しています。結果的に周囲への同調志向が強くなり、差別化もオンリーワンも目指さず、自分がワンオブゼムであることを認識し、どこにいれば居心地が良いかを分かっています。三者の違いを仕事で見ると、若者1.0は規模感や一流感のある会社に勤めたい、若者2.0は自分らしさや自分の才能を活かせる仕事をしたい、若者3.0は人間関係が良いとか職場が家から近いとか居場所として快適であることに重きを置いています。(図2)
マーケティングフォーラム第1部 経済状況
3番目の周囲と関わるコミュニケーション手段に関しては、若者1.0はアナログ世代、若者2.0はデジタルキャッチアップ世代、若者3.0はデジタルネイティブ世代と言えます。コミュニケーション手段は、若者1.0は家電(いえでん)と手紙、若者2.0はケータイという新しいデバイスによるメールとPCによるEメール、若者3.0はスマホとSNSでビジュアルといいね!によるコミュニケーションです。

デバイスの変化と同時に、交友関係も変わりました。若者1.0の交友関係は限定的で、友達の数を数えるのは年に1回年賀状を書く時くらい。若者2.0からつながり志向が顕著になり、友達の数が多いこと、ケータイに登録されているメアドの数やプリ帳に貼るプリクラの数が多いことが重要になりました。また、絵文字を中心とした感覚的気分共有が中心となりました。現在のSNSのビジュアルコミュニケーションでは、直感的にテンションを共有するある種の反射神経のようなものが必要です。そして、お互いの行動が可視化される中、写真の撮り方など感性が勝負のポイントになってきて、インスタ映えすることや「いいね!」の数を気にするようになっています。

こうした変化をまとめます。若者2.0は日常の空間や時間をちょっとだけ逸脱した非日常空間時間であるサードプレイスを持ったのに対し、3.0はリアルな空間や時間を持ちながら、リアルとネット両方にコミュニティを持つ傾向が強くなっています。リアルの空間時間を生きつつも、リアルにもネットにもある快適な居場所、快適なコミュニティを渡り歩いているのです。(図3)
マーケティングフォーラム第1部 違い

また先ほどもお話ししましたが、若者2.0は「私ってAな人」「私ってBな人」と各々自己規定するいろいろなタイプの人がいて、それを個人の多様化と呼んでいます。一方で若者3.0世代は、1人の中にA1、A2、A3といった多様化した個人がいて、1人が5種類くらいのキャラクターを持っているとお考えください。そのキャラクターをグループやコミュニティによって変えていて、ペルソナには仮面とキャラクターという2つの意味がありますが、ペルソナを都度変えるような感覚を持っています。(図4)
マーケティングフォーラム第1部 違い

◇若者3.0の特徴
若者3.0は、今という時代への対応戦略に長けています。時代に適応しているし、リスクヘッジ感覚が強く将来への不安要素をなるべくなくそうと考えています。例えば、経済的に落ち込む可能性や仲間から外れる危険性などを上手く避けている傾向があります。デジタルネイティブ世代としてこれからの時代の価値観をつくり、その価値観を他の世代へも拡大普及していくと思われます。若者3.0の特徴や価値観は、今の時代を生きる30-50代にも共通して言えることがあると思います。

次に若者3.0の価値観を見ると、「自分らしさは周囲が決める」「自分のコンフォタブルな居場所探しをしている」のが基本です。また非常に友人・家族とのつながり志向が強く、自分から積極的に海外に出ようというよりは、クラスの中にハーフの子がいたり、街に出ればインバウンドで外国人が溢れていたりする受動的なグローバリズムの中にいます。さらに、多様性・多様な価値観を容認しているところがあり、人を否定することも競争もせずに、「ああいう人っているよね」という感覚を持っています。

消費においては、「モノよりコト」「思い出づくり消費」「所有から使用」「シェアリング消費」などを、本当の意味で体現しているのが若者3.0だと思います。例えば、皆でお揃いの服を着てディズニーランドに行くなどコトにまつわるモノ消費をしています。シェアリングに関しては、ファッションで言うと最初から「メルカリ」「ZOZOTOWN」で売ることを考えて、買う人も少なくありません。シェアリングの中には環境に配慮し社会的なバリューを重視する「経済合理性+社会性」の動きもあるが、海外のミレニアルズと異なり日本ではどちらかと言うと社会的バリューよりも自分にとっての経済合理性が大きいようです。そして、情報が数多く等価に存在しているので、自分に必要な情報だけをスクリーミング・フィルタリングする能力が求められ、そのために似た志向の人やコミュニティが必要となってきます。また、SNSでのシェアが消費の目的化しているところがあり、今年の夏のレジャー目的地として、インスタ映えするナイトプールが流行ったのが顕著な例です。

では、なぜ若者が服やファッションにお金をかけないのでしょうか。まず、ファッションの意味が変化していると言えます。若者1.0にとってはファッションが自己表現のツールだったのに対し、若者3.0にとっては今の気分の表出と共有くらいの軽い意味になっています。また、全体的にコト消費へシフトしているので、花火大会に行くから浴衣を買う・レンタルするなど、コトついでにモノが消費される傾向があります。そして3番目にメルカリやairClosetなどのインフラが登場し、使用価値へのシフトが加速、もはや彼らにとって高いお金を払うモチベーションがない状況です。

◇若者3.0がつくる共創の時代
若者の価値観☓時代の気分について考えてみると、“きょうそう”にも2つあって、「競争(Competition)」から「共創(Co-creation)」に変わってきています。ゆとり世代ゆえに競争が嫌いだし、多様な価値観が前提となる中で競争しても仕方がないと考えるようになっています。 また、気分やテンションを共有できる心地よい居場所を探す中で、目標達成よりも目的や気分の共有、ゴールよりもプロセス重視になってきています。

例えばプロジェクトや仕事のあり方では、まず左の図は上に目標があってそれが下へ落ちていく目標トップダウン型。目標という言葉の持つ意味として達成期限や達成測定が前提なので、数値を追い求めて「競争」になりがちになりがち。対して右の図は、真ん中に共通の目的や課題・関心事があり、そこに参加したい人が「私はこれをやる」「私はこれができる」というように自由に参加するような形です。出入り自由なゆるい感覚があります。(図5)
マーケティングフォーラム第1部 共創の時代

これを企業で見てみると、左がヒエラルキー型経営あるいは中央集権型です。右がホラクラシー型経営、権限分散型となる。ホラクラシーとは役職や上下関係をなくして全員参加型の組織にし、経営の決定権をトップダウンではなく組織全体に分散させることです。例えばスターバックスでは、コーヒーを入れるマニュアルはあるが接客のマニュアルはない、と聞いています。窓際に近い席で寒そうにしている人に毛布を持っていくなど、その場の判断や状況に応じた対応することで、それが顧客のグッドウイルにつながります。このように、企業全体がホラクラシー型経営的考え方に転換するのは難しくても、部分的に採用するのも1つのやり方ではないかと思います。そういった1つ1つの点の積分値がスターバックスのブランドのロイヤリティや売り上げにもつながっているのです。

そうなった時の社会のあり方は、ピラミッドがたくさん連なった競争社会から、コミュニティ的な価値観の集合体である共創社会へと変わっていき、経済価値の最大化から社会問題への解決へとシフトしていきます。

では、共創の概念を消費に置き換えたらどうなるかを考えてみます。企業側が選択肢を提供するプロセスに消費者・生活者も巻き込んでしまおうという流れが生まれつつあります。購入する前につくるプロセスに参画し、購入した後はモノを使うことやコトを体験すること、使っている時間を共有することに価値が生まれています。左側の自分参画価値という意味では、売り手と買い手がボーダーレス化するし、右側の時間共有価値という意味ではライフスタイル提示者と生活者の関係が水平化します(図6)
マーケティングフォーラム第1部 消費の共創

自分参画価値の事例としては「ネバーセイネバー」というアパレル企業があります。渋谷本社にオフィス、自社工場、ショールームを統合していて、職人とデザイナーが密接なコミュニケーションが取れる場を設けています。社会的目的としては、日本の縫製産業を守りながら働く人が幸せな会社をつくりたいと、キャリアップ支援や海外渡航支援などの各種制度も揃えています。そして、自分参画ということでは、一般消費者がデザインから携わるブランドを立ち上げるべく募集をして、実際に60人ほどの応募があったとのことです。

時間共有価値に関する例で、京都にある「ザ・ミレニアルズ京都」という、名前の通りミレ二アルズに向けたホテルがあります。カプセルホテルで個室はリクライニングベッドがあるだけのミニマム空間ですが、その分共有スペースがワンフロアあり、ワークスペース、セルフキッチン、バーカウンターなどが備わり、実際に泊まった人同士の交流が生まれています。

いずれも、小さな拠点での活動や年に1-2回のイベントかもしれないが、こういう小さな事例が同時多発的に世界で起きているのが今の時代の気分でもあります。

◇未来に向けて
「若者3.0」である20代前半の東阪名に住む男女500名に、30年後の生活イメージについて聞いたところ(JT様調査)、企業の役割ではトップ3は現在も30年後もあまり変わらず、「従業員の多様な働き方やワークライフバランスを配慮する企業」「利潤を追求して経済を活性化する企業」「男女問わず育児や介護をサポートし働き続けられる企業」が上位にきています。また、数字的には低いものの現在よりも30年後の期待値のほうが高い企業の役割としては、「技術開発を積極的に行い社会の諸問題を解決する企業」「国際化を積極的に進め海外での日本の存在感を高める企業」「エコ活動を行い環境保全に積極的な企業」があがっています。企業にも社会問題の解決という方向性が今後は企業に求められていることがうかがえます。

今の企業は製品サービスの開発力と消費者ニーズの把握力をベースとして、CSRや企業コンプライアンスを遵守しなくてはいけない状況だとすると、今後は、製品サービスの供給力(開発ではなく、若者の生活に馴染む方向でデリバーする力ということであえて「供給力」という言葉に書き換えている)、生活者とのインタラクション力も必要となります。そして3つめに「社会問題の解決ができること」「環境への配慮」「多様性への適応従業員の働き方への配慮」など、企業市民としての立居振舞いが大切で、生活者の隣に座っている人として企業が見られていく感覚になっていきます。(図7)
マーケティングフォーラム第1部 若者4.0に向けて

次に、30年後の社会がどうなっているか聞いてみると、「人工知能やロボットの普及によって仕事が奪われる社会」が38%、「貧富の差がますます広がる社会」「災害やテロによって自分の生活が脅かされる社会」など、ややネガティブな傾向に偏っています。6番目の「AIやロボットの進化で単純作業が減り、よりクリエイティブな仕事が求められる社会」が22%となっており、この辺りからは少しずつポジティブな要素が出てきます。そして気になる点は、人工知能によって仕事が奪われる方が、クリエイティブになる方向よりも多いという結果です。

それを図式化すると、左側の図は人や車や交通などがAIに支配統合されるようなイメージで、対して右側はクリエイティブな方向性で、知能化したよりコグニティブなAIが人の能力拡張やシステムの効率に貢献し社会全体が進化する、人とAIが共創するイメージになっています(図8)。
マーケティングフォーラム第1部 若者4.0に向けて

左側の図式を考えた時に、「2001年宇宙の旅」という、1960年代に作られたスタンリー・キューブリックの映画を思い出しました。HAL9000というコンピューターが宇宙船全体を制御していて、会話型なので現在のAIに近いイメージです。「HAL、ハッチを開けて」と言えば「はいわかりました」と対応してくれるが、映画の後半でHALが人間に逆らうようになり、「そのご命令には従えません」と返してきます。それどころか自分の存在を確保するために人間を殺していく結末になります。今や2001年をはるかに超えて2017年になりますが、現在AIやコンピューターに人間が支配されているかというと、そうでもない。でも、そういう未来が描かれたということは、私達の中にある価値観の結果なのかもしれません。私達の頭の中にある価値観、知らず知らずのうちに刷り込まれ思考パターンが、“支配する・される”、“命令する・される”という中央集権的な考え方を呼び、まさにあの映画の恐怖を生み出したのではないでしょうか。つまり、価値観が右側のように共創的に変われば、未来も右側のように進んでいきます。冒頭に予測ではなく予見だと言ったのは、そういう意味です。

最後に、有名なアラン・ケイの言葉、「未来を予測する最善の方法は。自分で未来を発明すること」という言葉で、第一部を締めくくりたいと思います。