2020.10.26 - ifsインサイト

マーケティング戦略アップデート
第2回 オフライン体験に期待を高めるインスタ世代

ナレッジ開発室 室長

小原直花

当社では、バブル崩壊後の1995年から生活者を捉える視点に「世代」を据え、その志向性・消費傾向についてリサーチ&分析を続けている。世代とは、「同じ時代を同じような年代で過ごした生活者はその共通体験を測る共通の価値基準をもっており、その人々をグルーピングしたもの」。当社では20歳前後の五感的刷り込みが年齢を重ねても志向のベースとして保持されつづけると考え、現時点では20~84歳を11世代に区分している。世代視点は“今” を解く鍵であり、“今後” を予測する礎にもなると考えている。

インスタ世代とは

第1回で取り上げたインスタ世代とは?

インスタ世代(1997 ~ 2000年生まれ)は、幼少期に米国同時多発テロ、小・中学生で東日本大震災、近年では東京オリンピック・パラリンピックの延期や新型コロナウイルス感染症など、経済的にも社会的にも目まぐるしく変化するなかで育ったこともあり、己の立ち位置を客観的に捉えている。物心ついたころには現在展開されているSNSが浸透。地球の裏側に住む人ともゲームを楽しむなど、物理的な距離などを超えた民族や文化にふれる機会の多さは10年前に20歳だったハナコジュニア世代とは比べものにならない。また、多様化する教育環境の影響もあり、各人の違いを認め合う意識をもつのも特徴だ。
インスタ世代の名称理由は、SNSのなかでもInstagramとの親和性が高いことにある。情報源でもあり、娯楽でもあり、思い出帳でもあり、自己表現にもなるが、何より、誰とでも気軽につながる手段であることが大きい。

インスタ世代の特徴
● 消費自己裁量権獲得時期 20年東京オリンピック・パラリンピック前の緩やかな好景気と、新型コロナウイルス感染症流行による不況
● 時代から受けた影響 ネット環境による高いSNSリテラシー、客観姿勢、個別性志向
● 生活消費価値観 無理しないこと重視・「なるべく~する」
● ファッション意識 ファッション=共感ツール、場のトーンに“寄せる” のがマナー
● 主な情報源 きっかけは身近な人やセンスの合致する一般の発信情報だが、検討・決定時までに、クチコミで評判を、公式ホームページで情報の確かさをチェックする
● お金の使い方 無駄なものにはお金を使わないが、自分にとって必要なモノ・コトには価格に関係なく投資する
● 時間の使い方 友人との時間を有意義なものにするためにも、「自由」「集中」できる一人の時間を大切にする

「一人で」「誰かと」“好きなこと” には消費する

今年3月に実施した、「積極的にお金をかけていること」の調査結果のトップ5には「好きなものを収集すること」「好きなアイドル・アーティスト・作家などを応援すること」「おいしいものを食べること」「体験を得ること」「日帰りで友人知人と過ごすこと」があがる。コロナ禍でアプローチ手法は変えざるをえないが、自身の好きなこと、興味・関心事には熱心に消費することは想像に難くない。その裏づけとなるのは5月に調査した「収束したらやりたいこととその理由」だ。たとえば、「友人とお祭りに行きたい。みんなが楽しそうに過ごしている時間を共有したいから」「江ノ島観光。食事がおいしいと聞いたから」「海外旅行。行く予定だったのにコロナで行けなくなってしまったから」「友人と音楽フェス。夏の定番、みんなと盛り上がるのがとても楽しい」「一人でゆっくり映画館で映画を観たい。家で観ていても迫力がなくてつまらないから」と。

オンラインの便利さはコロナ禍以前から熟知している彼ら。外出自粛時もイエナカエンタメを十二分に楽しんだ。だからこそ、オンラインとオフラインでは得られる気分の質=価値が違うことの認識を新たにしたようだ。「これはオンラインで十分」といった判断基準をもちはじめたぶん、オフラインへの期待は高まっている。
「誰かと一緒に」「一人で」それぞれの時間を充実させたいインスタ世代の、大切なシーンとその気分を見極めさえすれば触手はおのずと伸びるに違いない。

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小原直花 Naoka Ohara
ナレッジ開発室 室長
“ifs オリジナル世代区分・気分・見た目で消費を読み解く”をベースに、会員制マーケティング組織「FA CLUB(ファッションアスペクトクラブ)」の企画・運営を担当するほか、クライアント別案件にも携わる。最新発行物『解適化-コロナ禍の暮らしと消費』では、変わること・変わらないことにフォーカスし、生活者の今と今後をレポートしている。1992 年入社のばなな世代。趣味は人間観察と散歩と茶道。