2017.02.28 - All , 海外レポート

Technology x Fashion : 進化するスマートウェア

ifsNewYork

ウェアラブルテクノロジーと聞いてまず最初に思い浮かぶのが、毎日の健康状態をトラッキングするリストバンド型のFitbit(Fitbit社)、iWatch(Apple)やメガネ型の拡張現実コンピュータGoogle Glass(Google)等ではないだろうか。
ウェアラブル元年と言われた2013年を皮切りに、身につけられる装着型のガジェットが続々と市場に登場。その後、2015年にはファッションとテクノロジーの関係が注目され、テクノロジーを取り込んだファッションにスポットライトがあたった。2016年には次の段階である身につける素材をインタラクティブにしたウェアラブルテクノロジーが主流になっていきている。最新技術を使った進化するテクノロジー×ファッションの事例を紹介する。

Google ATAP ×Levi’s(グーグル エーティーエーピー×リーバイス)

Googleの先端開発技術チームATAP(Advanced Technology and Projects)は、“あらゆる衣服をタッチスクリーンに変える新しいテクノロジー”をコンセプトに、独自のセンサー機能を携えたテキスタイル「Project Jacquard」(プロジェクトジャカード)(https://atap.google.com/jacquard/)の開発に注力してきた。

「Project Jacquard」とは、センサー機能を持つ極細のコードを糸に紡いだ伝導性繊維(綿、絹、ポリエステルをベース素材としている)で織った布に、超小型電子部品(チップ)を組み込み、布に織り込まれたセンサーに触れることで、端末を遠隔操作できるという画期的なテキスタイルであり、最先端の“ウェアラブル”プラットフォームである。ATAPチームは、繊維業界が現在使用している紡織機を使用して、この伝導性繊維の紡績・生産方法を開発し、小型のチップを生地に埋め込むことにも成功した。

LEVI’S® COMMUTER × JACQUARD BY GOOGLE(リーバイス コミューター×ジャカード バイ グーグル)
HTTP://WWW.LEVISTRAUSS.COM/UNZIPPED-BLOG/2016/05/FUNCTION-MEETS-FASHION-LEVIS-COMMUTER-X-JACQUARD-BY-GOOGLE/

進化するスマートウェア
Courtesy of LEVI’S® COMMUTER X JACQUARD BY GOOGLE(リーバイス提供)

Project Jacquardを使用した第一弾のコラボは、ジーンズメーカーのLevi Strauss(リーバイ ストラウス)社。デニム上からスマートフォンなどを遠隔操作可能な次世代トラッカーデニムジャケットの共同開発に着手し、Levi’s(リーバイス)が都会のサイクリスト向けに展開している「COMMUTE(コミュート)」(http://www.levi.com/US/en_US/features/commuter)ラインからこの「Project Jacquard」版が今春登場する(価格は未定)。このデニムジャケットは、ジャケットの袖を指先で軽く叩いたり、軽くなぞることでスマートフォンを遠隔操作できる仕組みになっている。例えば、サイクリストが移動中にスマートフォンに触れず、衣服の袖に触れるだけで、電話の着信音をオフにしたり、メッセージの送信といった電話受信の基本操作からGoogle Play Music(グーグル プレイ ミュージック)での音楽の再生、音量の調節、Google Maps(グーグル マップ)を使用して目的地までの距離、時間、行きかたを検索することができる。

進化するスマートウェア
Courtesy of LEVI’S® COMMUTER X JACQUARD BY GOOGLE

この優れた機能を可能にしたのは、デニムジャケットの袖に埋め込まれたJacquard tag(ジャカード タグ)と呼ばれるタグ。USB経由でチャージされ、ユーザーがおこなっている動作を基に色が変わるLEDライトと共に搭載されている。このタグがLED、ハプティクス(ユーザーの手を通して触覚的フィードバック[力、振動、動き]などを与える皮膚感覚フィードバックを得るテクノロジーの意)、バッテリーや布地に織り込まれたセンサーと連動することで、一連の操作を可能にした。今後は音楽アプリSpotify Music(スポティファイミュージック)やフィトネスアプリStrava(ストラバ)といった 第三者サービスとの相互運用もできるようになる。

Jacquard tagは取りはずしができ、デニムジャケット自体は他の洋服と共に洗濯可。さらに、このプラットフォームには、クラウドとデニムジャケットを繋げるモバイルアプリも含まれている。

Googleは今後、アスレティックウェアブランドやビジネスウェアブランドとのコラボも視野にいれている。このLEVI’S® COMMUTER X JACQUARD BY GOOGLEの広告は国際的なクリエイティブの祭典「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル」のプロダクトデザイン部門のグランプリを受賞。

Under Armor(アンダーアーマー)

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CES 2017 会場風景(ラスべガス)

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Courtesy of Under Armour(アンダーアーマー提供)

アスリートを進化させる革新的なアクティブウェアを提案するUnder Armor(UA)が、自動的にアクティビティを感知しトラッキングする「履くデバイス」と呼ばれるスマートシューズ (UA SpeedForum Gemini 3 RE(ユーエー スピードフォーラム ジェミニ 3 アールイー), UA SpeedForum Velociti RE(ユーエー スピードフォーラム ベロシティ アールイー) とUA SpeedForum Europa RE(ユーエー スピードフォーラム ヨーロッパ アールイー))3シリーズを1月初旬にラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show(コンシューマー エレクトロニクス ショー))で披露した。iPhone, Android用の無料スマートフォンランニングアプリケーション「MapMyRun(マップ マイ ラン)」をダウンロードし連動させて使用する。

UAが特許を持つ「UA SpeedForm®」アッパー(フィット感や快適さを追求したテクノロジー)や超高反発のチャージドクッショニング(衝撃の強弱に応じてクッショニングを変化させその瞬間に適した反発力と衝撃吸収力を発揮する)といった最新テクノロジーを搭載。従来のランニングシューズとは異なる、足に「装着」するような軽やかなフィット感が特徴。特筆すべきは、UAのアプリUA 「MapMyRun」と接続可能な小型のセンサーチップを右足底の真ん中に内臓。このセンサーが走行中の速度やペース、距離や歩数などのデータを自動的にトラッキングし記録。その後データの集積、分析を容易に行い、ランニングデータを正確に管理できるシステム。

ステップとしては、まずはじめに3日間シューズを履き、簡単なジャンプテストをおこなう。ジャンプをし続ける事でスニーカーに内臓されたセンサーが着用者の体を熟知し、ジャンプのスコアをもとに筋肉の疲れや、回復率など基本的なスコアを計測し、どのくらいハードに走れるかどうかを分析する。その後、日々のランニングをプランしていく流れになる。
シューズの寿命は650kmを走破した時点で新しいシューズの買い替えを通知。新しいシューズに替えても、以前記録したデータは利用していたアプリを通して維持される。

“Rest Win Repeat”(レスト ウィン リピート)

https://www.underarmour.com/en-us/tb12?iid=hero

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Courtesy of Under Armour(アンダーアーマー提供)

また新たな試みとして、世界初のアドバンススリープシステムを採用したスマートパジャマ“Rest Win Repeat”を発表。これはアメフトのニューイングランドパトリオットの人気クウォータバックで、スーパーモデル、ジゼル・ブンチェンの夫Tom Brady(トム ブレイディ)が、試合中に最高のパフォーマンスを持続させるために、寝ている間に体を回復させ、睡眠の質を改善するアイテムを考えて欲しいと相談してきたことから、このラインの開発が始まった。遠赤外線技術を使用したTB12テクノロジーは、就寝中にも人間の体を回復する手助けをする。衣服の内側にプリントされた柔らかいバイオセラミックが体の熱を吸収し、遠赤外線を肌に反射する仕組み。これが体の回復を早めるだけでなく、良質な睡眠を誘い、炎症を減らし、細胞のメタボリズムを規則的に整える作用がある。パジャマトップスとボトムス(定価:各$80-$100)

IBM x Marchesa (アイビーエム×マルケーザ)

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Courtesy of IBM x Marchesa(アイビーエム×マルケーザ提供)

ファッション誌アメリカンVogue(ヴォーグ)の編集長Anna Wintour(アナ ウィンター)がNY市内のメトロポリタン美術館で毎年5月に主催する「Met Gala(メット ガラ)」は、ハリウッドセレブ、スーパーモデルやファッション関係者が一同に集う豪華絢爛なガラ。昨年は、同美術館で5月から開催された特別展と同じ「Manus x Machina: Fashion in an Age of Technology(マヌス×マシーナ:ファッション イン アン エイジ オブ テクノロジー)」(手仕事x機械:テクノロジー時代のファッション)がテーマであった。

会場にはテーマに沿った近未来を意識する装いが目立ったが、中でも人目を引き話題になったドレスが、IBMとラグジュアリーウィメンズブランドMarchesaがコラボして作り上げた”cognitive dress(コグニティブ ドレス)”。IBMのコグニティブ・コンピューティング・システム(人間の言語で人と対話し、意思決定のサポートをするコンピューティングシステム)のひとつ「IBM Watson(アイビーエム ワトソン)」を採り入れた”cognitive dress”をスーパーモデルのKarolina Kurkova(カロリナ クルコヴァ)が着用し登場。

このドレスは、半分は人の手仕事で半分は機械(コンピューター)の手で作り上げられたもの。チュール地のドレスにはLED接続の花が150個縫い付けられ、花に取り付けられたLEDは、Watsonの「Tone Analyzer(トーン アナライザー)」というAPI(アプリケーションプログラムインターフェイスの略語。プログラミングの際に使用できる命令や規約、関数等の集合を指す)に繫がっている。このAPIは「#MetGala」や「#CognitiveDress」のハッシュタグのついたTwitterのツイートから感情を表す内容をリアルタイムで読み取り、ツイートのムードが変化すると、Watsonが生成したパレットのなかから色を選び出し、ドレスの色をリアルタイムに変化させるというシステム。ツイートが「喜び」の感情を多く含むと刺繍された花はバラ色に光り、「興奮」した状態が強いときには水色に光る。

Marchesaのデザイナー、Georgina Chapman(ジョージナ チャップマン)とKeren Craig(ケレン クレイグ)は、感情によって色が変わるドレスがあったら面白いと考え、喜び、忍耐、興奮、勇気、好奇心という5つの感情を、色彩心理学を利用して感情に対応する色彩を選びだすプログラム「Cognitive Color Toll(コグニティブ カラー ツール)」に与えた。最新のテクノロジーとデザイナーの豊かな創造性が繰り広げた話題の1着となった。

テクノロジーの進化とともに、全てのものがインタラクティブになる時代がすぐそこに来ているのかもしれない。