2017.03.30 - All , 海外レポート

Direct to Consumer Brandsの台頭

ifsNewYork

近年、デジタルメディアとテクノロジーは、あらゆるビジネスの既存のあり方をディスラプト(破壊・崩壊する意)し、新たな価値や技術、サービスを提供しはじめている。
2010年頃から、オンライン経由で、第三者を介さず直接消費者に自社製品を販売するブランドが出現しはじめた。彼らは、中間マージンをカットすることで大幅にコストを抑え、高品質を保ちながらも低価格の打ち出しに成功。また現在の消費の担い手であるミレニアル世代の購買動機の一つ、生産背景や環境に与えるインパクトへの配慮も行い、透明な生産過程の開示と賢いブランディングで消費者を魅了した。昨年は、オンラインを主軸とする小さなブランド(アパレルだけでなく、レザーグッズやシューズのカテゴリーからも誕生)が台頭し、小売販路における伝統的な流通の在り方をディスラプトした年でもあった。
現在、勢いに乗っているダイレクトコンシューマーブランドを幾つか紹介する。

ifsNYレポート

■Warby Parker(ウォービーパーカー)

https://www.warbyparker.com/
Warby Parker(ウォービーパーカー)
Courtesy of Warby Parker(ウォービーパーカー提供)

ダイレクトコンシューマーの先駆けで、現在勢いに乗って拡大を続けているブランドが、2010年にDavid Gilboa(デーヴ・ギルボア)とNeil Blumenthal(ニール・ブルーメンソール)によって設立されたオリジナルの度つき眼鏡やサングラスを展開するアイウェアブランド「Warby Parker」。ファッショナブルでスタイリッシュなアメリカ人に人気のアイウェアブランドである。2015年に120億円の資金調達を行い、時価総額は1440億円といわれている。

Warby Parkerは、自社でのオリジナルフレームのデザインや生産、インターネット上で直接消費者に販売する手法により、各眼鏡フレームの価格を$95~で提供することを実現させた。さらに特筆すべき点は、購入前に自宅で試着できる画期的なサービスを打ち出し、オンライン通販のネックである「買う前に試着が出来ない点」を克服した。

ステップとしては①Warby Parkerのサイトで好みのアイウェアを5つ選ぶ。②選んだ商品が無料で自宅に送られてくる。③試着(返却期限は5日間)。④試着して気にいった商品をネットでオーダーする。⑤送られてきた箱に商品をつめて返送用のラベルを貼って郵便局で投函するという非常に簡単なシステム。(試着用のアイウェアは商品でないため、そのまま買い取ることはできない。)

Warby Parkerは、オンラインからスタートして最も早く旗艦店をオープンし、成功しているオンラインブランドの一つとして注目されている。現在は米国内に12店舗を構える。店舗はあくまでもアイウェアを試着する場所で、在庫を一切おいていないためレジも見受けられない。商品の購入は店頭のiPad(アイパッド)から行い、商品は後日自宅に発送される。

Warby Parker(ウォービーパーカー)
Courtesy of Warby Parker

また社会貢献にも積極的で、眼鏡の売り上げから、毎月非営利団体のパートナーに寄付を行い発展途上国の視力検査や眼鏡の販売支援に力を入れている。ただ単に眼鏡を寄付するだけではなく、視力検査や眼鏡販売のトレーニングをすることで、継続的な支援を行い眼鏡を必要とする多くの人が商品を手にする仕組みを構築した。また環境にも配慮しており、二酸化炭素を排出しないフレームを使用している稀なアイウェアブランドの一つでもある。

2015年、Apple社やGoogle社を抜いてFast Company(ファスト カンパニー)社(https://www.fastcompany.com/) が選ぶインターネットで最も優れた企業に選ばれた。

■AWAY(アウェー)

https://www.awaytravel.com/
AWAY(アウェー)
Courtesy of AWAY(アウェー提供)

AWAYは、元WarbyParkerのエグゼクティブJen Rubio(ジェン・ルビオ)とStephanie Korey(ステファニー・コーリー)の2人によって2015年に設立されたコンシューマーダイレクト形態のラゲッジブランド。「高品質で手頃な価格のスーツケース」をコンセプトに、Warby Parkerで培った生産と、第三者を介さず消費者に直接自社製品を販売するノウハウをラゲッジ業界に持ち込んだ。

AWAYは、ミレニアルズや若いプロフェッショナルトラベラー等800人の旅行体験談を参考に、ラゲッジにどんな機能があったら便利かを徹底分析。その結果、スマートで快適な旅を演出してくれる理想的なラゲッジの開発に成功した。シンプルでミニマルなデザインのハードシェルタイプのキャリーオンスーツケースをシグ二チャー商品に掲げ、現在では大中小のサイズ違い、カラー違いのラゲッジを消費者のフィードバックを基に展開している。キャリーオンサイズ($225)、ミディアムサイズ($275)、ラージサイズ($295)と非常に手頃。

AWAY成功の鍵は、Tumi(トゥミ)やRimowa(リモワ)等のハイエンドブランドから販売されているキャリーオンスタート価格($500+)の半分以下の価格を実現したこと、またトラベルフレンドリーでスマートな機能を搭載したことがある。

Away Luggage(アウェー ラゲッジ)の特徴
AWAY(アウェー)
Courtesy of AWAY

・ラゲッジ外側のハードシェルは、強度と衝撃抵抗に強く、傷や指紋がつき難い100% Bayer Makrolon®(バイエル マクロロン)のポリカーボネート(熱可塑性プラスチック)を使用。
・ラゲッジ内側の構造は、片方は洋服用、もう片方は靴、トイレタリーやその他の硬いものを収納できるように仕切られている。また取り外し可能なランドリーバッグも付随している。
・取り外し可能な10,000mAh(ミリアンペアアワー)バッテリーの内臓と、いつでもどこでもUSB機器を充電できるように埋め込まれた2つのUSBポート。
・ラゲッジの上部に設置されたTSA認証を受けたコンボロック。
・360度回転するHinomoto社のダブルウィール。
・重量おおよそ3.2kg
2016年にはおおよそ10億円の売り上げを計上した。

■Tamara Mellon(タマラ メロン)

https://www.tamaramellon.com/
Tamara Mellon(タマラ メロン)
Courtesy of Tamara Mellon(タマラ メロン提供)

「50歳以下の人達はもう百貨店で買い物をしない」と公言したのが、Jimmy Choo(ジミー チュウ)の設立者で、元クリエイティブオフィサーとして活躍していたTamara Mellon。昨年、LAを新拠点に自身のラグジュアリーシューズブランド「Tamara Mellon」の再スタートを切った。(もともとは2013年に設立されたラグジュアリーライフスタイルブランドであったが、設立当初は様々な問題に見舞われた。ようやく2016年10月に、新ブランドとしてオンラインのみでのエクスクルーシブな販売で新たな再スタートを切った。)

Tamara Mellonは、2011年にJimmy Chooを去った後、自身のブランド「Tamara Mellon」の設立時に、実際の季節にあった商品を展開し、消費者がショーで見たものをすぐに購入できるデリバリーシステムSEE NOW BUY NOW(シーナウ,バイナウ=見てすぐ買う)を業界でいち早く採り入れた。また昨年のブランド再生と共に、次世代のラグジュアリーブランドのあり方として、Jimmy Choo時代のマーケティングとは正反対の手法「第三者を介さず直接消費者にウェブサイトを通じて販売するダイレクトコンシューマーモデル」を選んだ。間に小売店を挟まない事で、Jimmy Chooと同品質ながらも$500以下のラグジュアリーシューズブランドが誕生した。

現在Tamaraは、生産の全ての工程を監督。「Tamara Mellon」の商品はクラシックシルエットの他によりエッジーなデザインの限定“Lab” collection(“ラボ”コレクション) がある。商品はオフォシャルサイトでのみエクスクルーシブに販売され、各スタイルとも数量限定生産。売れ行きをみながら数量の追加調整をおこなっている。
価格:$350-$975

現在の消費の主な担い手であるミレニアルズやジェネレーションZにとって、ただ価格が低いというだけでは響かず、ブランドのストーリーや透明な生産背景が購買を決める上での重要な判断材料となることは度々お伝えしてきた。

それに加え、ダイレクトコンシューマー販売の成功の鍵は、高品質で手頃な価格の商品、ソーシャルメディア上での魅力的なコンテンツの提供、アクティブなコミュ二ティの形成とユニークなウェブのプレゼンスではないだろうか。