2018.11.20 - 海外レポート

米国の多様化する働き方:営業時間外のレストランが仕事場に!

ifs New York

■多様化する働き方

今日米国では、個々のワークライフバランスの改善を図るために、時間や場所の制約、従来の価値観に縛られない柔軟で多様な働き方が浸透しつつある。WeWorkに代表されるコワーキングスペースからお気に入りのカフェまで、様々な場所が仕事場になりうるという認識が定着し始めている。

この背景には、テクノロジーの進化によって、インターネットで仕事が完結できるようになり、ノートPC、スマートフォンのみで、いつでもどこでも仕事ができるようになった事で、リモートワークを推奨する会社やフリーランスの人口が急増し、型に嵌らない仕事場を必要とする人々のニーズが大きくなった事が挙げられる。

■2027年までに、主な米国労働人口の半数以上が
フリーランス形態に!?

調査会社Edelman Intelligence(https://www.edelmanintelligence.com/)、世界中の企業や個人が仕事の依頼をしたり、受注したりできるクラウドソーシングサービスUpWorkとフリーランス労働組合Freelance Unionが行った調査“Freelancing in America: 2017”(FIA)(https://www.upwork.com/i/freelancing-in-america/2017/)によると、現在約5,730万人(米国労働人口の36%を占める)のアメリカ人がフリーランス形態で仕事をし、米国経済に年間1.4兆円規模の貢献をしていることが判明。この数字は2016年以降、30%以上の上昇を見せ、現在の成長率からいくと2027年までに、主な米国労働人口の半数以上がフリーランスになる見通しだ。

ここ数年で爆発的な成長を遂げたWeWorkを筆頭に、女性限定のコワーキングスペースから、健康に拘り、会員にヨガや瞑想のクラス、マッサージ、鍼やエステなどのトリートメントを提供するコワーキングスペースなど、様々なコワーキングスペースが登場する中、新しい傾向としては、かつて、コワーキングスペースやカフェを行き来していた人々の一部が、営業時間外のレストランを新しい職場として利用し始めているという。ビジネスでのニーズと商業不動産の隙間時間をマッチングさせた新しいコワーキングスペースの現状をレポートさせていただきます。

■営業時間外のレストランが仕事場に!

個人やスタートアップのコワーキングスペース利用者にとって、仕事に必要なものが完備され、居心地の良い自由な空間で他の入居者同士の交流も深められるコワーキングスペースのメリットは大きい。また、スタバ等のカフェで仕事をする者にとって、WiFi環境が整い、電源数の多いロケーションは、これまで非常に重宝されてきた。

一方で、コワーキングスペースを仕事場として利用する個人の中には、「月額の料金がもう少しリーズナブルだったら」、「毎日違ったロケーションで仕事がしたい」という声があった。また、カフェを仕事場として利用する人の中には、席の確保、カフェ代、周囲のノイズなど、毎日仕事場として利用するには気を揉む点が多いことも事実。

そこで、このような利用者のニーズに応えるべく、夜の営業のみしか行っていないレストランを対象に、昼間の営業時間外のスペースをコワーキングスペースとして貸しだすビジネスモデルが誕生し広がりを見せている。

Spacious

https://www.spacious.com/

Preston PesekとChris Smothersによって、2016年にNYで設立されたワークシェアリング会社のスタートアップ。夜間営業のみのレストランと提携し、昼間の営業時間外の空きスペースをコワーキングスペースとして提供。現在NYに16拠点とSFに7拠点の計23拠点を構え、2018年5月、シリーズA投資によりおおよそ910万ドルの資金調達に成功。今後100の新拠点のオープンを目指す。

かつて不動産管理会社に勤めていたPesek氏は、マンハッタンやブルックリンにあるハイエンドレストランおおよそ2000店舗以上が、営業時間の夜6時前まで店を閉めている事に着目。開店前の空きスペースを有効利用できないか考えた末、昼間の営業時間外の空きスペースをワークスペースとして、オフィスを持たないフリーランサー、スタートアップ企業や遠隔で働く社員に、コワーキングスペースとして提供するビジネスモデルを考案した。

Spaciousの特徴

Spaciousの特徴は、①なんと言っても物件を自分達で所有しないことで、コストを必要最低限に抑え、より少ない初期投資で他のコワーキング施設よりも低価格な料金体系を実現させたこと②事前のサインアップの必要はなく、当日のスケジュールや気分によって好きなロケーションを利用することが可能③メンバーは事前に席の空き状況をネットから確認することができる④どの拠点にも性能の高いWi-Fiが完備され、各テーブルには電源のコンセントが設置されている⑤従来のコワーキングスペース同様、コーヒー、お茶、水やスナックが随時用意されており、特にコーヒーは、シカゴ発、サードウェーブコーヒーを代表するブランドでもあるIntelligentsia(https://www.intelligentsiacoffee.com/)のコーヒーが飲み放題⑥レストランに付随しているプライベートダイニングスペースをミーティングルームとして使用することが可能⑦Spaciousの会員は全ての拠点を自由に使用することができる。

まず、Spaciousのサイトに行き、1週間の無料トライアルにサインアップする。無料のトライアル中は何度でも提携しているスペースに足を運び、施設をチェックすることが可能。トライアルが終了した後は、メンバーになり、3つのオプションの中からプランを選ぶ。プランは、1ヶ月会員$129、3ヶ月会員$357(1ヶ月$119)、年間会員$1,188(1ヶ月$99)。どのプランにも高速Wi-Fi, コーヒー、お茶、お水、スナックのサービスが含まれる。また、全てのロケーションを使用できること、ゲストを招待した際、最初の1時間は無料(その後1時間毎に$6請求されるシステム)。

使用プロセスは至ってシンプル。Spaciousの公式サイトで、営業時間、ロケーションの混雑具合を確認し、好きなロケーションに出向く。お店についてチェックインすると携帯電話にWi-Fiのパスワードが送られ、席は決まっていない為、好きな席に座るだけ。各ロケーションにはSpaciousの社員が在中し、営業時間内は対応してくれる。ロケーションの営業は、基本8時30分から17時まで、各レストランの都合によって、スケジュールは若干変更になる。

レストラン側にとっても、普段は営業時間まで使用しないスペースを提供するだけで、空きスペースの利用料が入るだけでなく、Spacious側がSNSを使用してロケーションをPRするため、無料でマーケティング、宣伝効果にも繫がり、貸し出す価値は十分にあるようだ。

現在NYでは、La Sirena, Aldea, Leuca, Bar Primi, Saxon +Parole等が加盟。

Kettle Space

https://www.kettlespace.com/

創業者は、スタートアップ企業のエコシステム創生に長年携わってきたAndrew Levy、WeWork発足時の不動産チームに在籍していたDaniel Rosenzweigとホスピタリティー業界のベテランで、NY市内のレストラン「Distilled NY」のオーナーNick Lovacchini。モダンワーカーのために、手頃な価格、アクセスが良く、快適なワークプレイスを作りたいとの想いから、2016年に設立したスタートアップ。NY市内の夜間営業のみのレストランと提携し、昼間の営業時間外の空きスペースをワーキングスペースやミーティングスペースとして提供。現在は、Distilled NY, The Cannibal Liquor House, P.S. Kitchen, Atwood, Mykonos Blue Grill, Hotel Chantelle他、NY市内に10ロケーションを展開。

会員になる前に1週間の無料トライアルにサインアップすることができる。トライアルが終了した後は、メンバーになり、3つのオプション(LITE, PRO, UNLIMITED)の中から自分に合ったプランを選ぶ。LITE:月10時間のネットワークアクセスプラン($25), PRO:月40時間のネットワークアクセスプラン($49), PRO:月アンリミテッドアクセスプラン。どのプランにも高速Wi-Fi, コーヒー、お茶、お水、スナックのサービスから、エクスクルーシブなイベントへの招待、コミュニティベネフィット、ゲスト(5人)を招待した際、最初の1時間の無料サービス(その後1時間毎にゲスト毎に$3請求されるシステム)が含まれる。

家で仕事はしたくない、かといって従来のコワーキングスペースで一席借りるのは値段が高い、カフェで仕事をするにも席、電源の確保が煩わしく、カフェ代がかかる。そう考えるとSpaciousやKettle Spaceのようなサービスは手頃で、働き方の多様化が進むNYでは、今後同様な施設が益々増えていくと予想される。