2019.01.10 - 海外レポート

広がるVRの実用化

ifs New York

■ゲーム分野から他分野へ実用化が進むVR

Grand View Research(https://www.grandviewresearch.com/)が行った新しい調査によると、グローバルVR市場は2025年までに485億ドル規模に到達すると予測されている。

VR*やARと聞いて、真っ先に思い浮かぶのが、ゲームや動画などのエンターテイメントとしての用途ではないだろうか。専用のゴーグルのような形状をしたディスプレイ(Head Mounted Display)装置を顔面に装着することで、装着者がコンピューターで生成された3次元の仮想空間の中にあたかもいるような体験ができ、その世界と相互作用ができる。これは、ゴーグルのレンズ部分に小型の液晶やCRTが取り付けられ、左右其々の眼に映像を映しだすことで、立体視を可能にしているという。

*VR(仮想現実)とは、現物・実物ではないが機能としての本質は同じであるような環境を、ユーザーの五感を含む感覚を刺激することにより理工学的に作りだす技術及び体系の意で、コンピューター・モデルとシュミレーション技術を用いて、コンピューターで作られた三次元空間を視覚、そのほかの感覚を通じ疑似体験できるようにしたものと定義される。

多くのVRゲームや動画が発表され、VR(Virtual Reality)元年といわれたのが2016年。VR技術を活用したゲームは、熱心なゲーム愛好者の中で瞬く間に普及した。近年VR技術は目覚しい発展を遂げ、ゲーム以外の分野での急速な実用化が進んでいる。その背景には、かつて高額であったヘッドセット端末の価格が手頃になったこと、ユーザーにとって使い勝手がよくなったこと、また、映像がより高精細になったことが挙げられる。

今回はVR技術を活用した業界毎の新サービス事例をレポートさせていただきます。

■小売での実用化事例

小売に於けるVR活用事例として、バーチャルな試着室体験、商品のデザインや商品のカスタマイズといったサービスまで消費者に提供できることが可能に。また、実際に店舗を訪れなくとも、ゴーグルのようなディスプレイ装置を装着するだけで、仮想空間での買い物体験が実現化した。

事例①Bold Metrics(https://www.boldmetrics.com/)

2012年に、サンフランシスコで設立された機械学習とデータサイエンススタートアップ企業Bold Metrics(https://www.boldmetrics.com/)は、VR技術を活用し、買い物客の体の「バーチャルマップ」を作成し、3次元の仮想空間で試着できるサービスを着手。VR導入によって、フィッティングとそれに伴う返品というECが抱える大きな課題を改善することに繫がる。また、VR技術を活用して顧客が、あたかもその場にいるかのように小売各社の在庫にアクセスすることも可能に。

事例②Lowe’s (https://www.lowes.com/)

米住宅リフォーム・生活家電チェーンのLowe’sでは、店舗内にバーチャル上でキッチンやバスのレイアウトやデザインを自由にカスタマイズできるVRショールーム「Holoroom」を併設した。顧客はVR装置を装着し、バーチャル上のショールームで自分好みのデザイン、装飾や電化製品をチョイスして理想のキッチンやバスルームのレイアウトをつくることができる。

■マーケティング・広告での実用事例

様々な分野でその活用が広がるVRだが、マーケティングや広告に於いてVRを適用し、新たなユーザー体験を行っている企業も増えている。VR技術によって、消費者に自社の製品やサービス、そして世界観を視覚や聴覚をもって体験してもらうことで、映像を強く記憶させ、製品の理解やブランド認知に於いても高い訴求力があるようだ。

事例①OmniVirt(https://www.omnivirt.com/)
Google, YouTubeやMicrosoftでキャリアを積んだBrad PhaisanとMichael Ruckerの2人が設立したサンフランシスコを拠点にするスタートアップOminiVirtは、ユーザーに没入体験を提供する「360度VR広告のプラットフォーム」を提供。モバイル、デスクトップから、Snapchat, Pinterest, Facebook, Twitter上での360度広告配信も可能にした。モバイルブラウザでは、ユーザーは高価なヘッドセットの購入や別のアプリをダウンロードする必要もなく、360度のVR広告を体験できる。

例えば、自動車メーカーのGEは、OmniVirtのテクノロジーを活用したInfiniti車のキャンペーン広告をThe New York Times誌のウェブ上で配信。一見、普通のバナー広告のようだが、広告をクリックすると360度のコンテンツが広がるビデオがスタート。通常のVR体験と比較すると興奮度はさほど高くはないが、広告主にとっては、広範囲の視聴者に到達する手段のひとつにになっていると好評。現在、多くのブランドや出版社がVRコンテンツに投資を行っているという。

■カスタマーサービスでの実用化事例

事例①Walmart

米小売最大大手のWalmartでは、米Strivr(https://www.strivr.com/)と業務提携し、年末までに1万7000台以上のOculus Go Stand AloneのVRヘッドセットを米国内の約4700店舗に、ゆくゆくは国内全店舗に配置し、VR技術を店舗従業員の研修プログラムに導入し始めた。プログラムの中には、ホリデーシーズンのショッピングで大混雑する店内の様子をVRで再現し、体験しながら顧客対応を訓練するプログラムを実施。

WalmartアカデミーのシニアディレクターAndy Trainor氏によると、「VRの素晴らしいところは、実際に体験しながら学習できること」だと言う。VR装置を通して、トレーニングモジュールを見ると、脳は現実の体験と同じように認識する。VRトレーニングを利用した習得率にいたっては、10~15%の改善をみせているということがわかった。

今後は軍事訓練により活用される動きが広がっているという。VRの活用からますます目が離せない。