2020.06.22 - 海外レポート

コロナ禍に於けるZ世代の過ごし方:DIYファッションの加速

ifs New York

新型コロナウィルス感染症のパンデミックの影響で、ファッション業界に於いても、多くのアパレル企業が店舗の一時閉鎖を余儀無くされ苦境に立たされている。一方で、ロックダウン措置が取られ、外出自粛が長引く中、Z世代を中心とする若年層の消費者の間では、コロナ禍の新しい趣味として、今まで以上に服のカスタマイズやリメイクが盛んになっており、カスタマイズやリメイクするためのDIY(Do It Yourselfの略語。自身でやろう の意)ファッションキットの消費とリセール利用が急増。この流れに乗って、DIYファッションのチュートリアル、デッドストック生地やハードウェアを提供し始めているブランドもある。

社会、環境問題に最大の関心を抱き、多様な考えを受け入れる価値観を持つ事で知られているZ世代は、消費に於いても他世代とは異なる。彼らの消費は、個人のアイデンティティの表現としての消費、倫理的懸念に基づく消費、所有ではなくアクセスとしての消費の3つに分けられる。全てに新鮮さを求める彼らにとって、ワードローブの中に眠っている服をアップサイクルし、ユニークなアイテムに蘇らせる“DIYファッション”や、廃棄して環境に負荷をかける事なく、再販する“リセール”というクリエイティブなエコシステムは、正に、彼らにとっての理想の消費の在り方だと言えよう。

DIYファッションの為のデッドストック生地やハードウェアを提供するファッションブランド

コロナ禍に於ける若年層のDIYファッションへの傾倒は、一見するとブランドにとって良いニュースに聞こえないかもしれないが、新世代のクリエイティブなエネルギーをうまく活用する事によって、新しい顧客関係構築の可能性を秘めている。Alexander McQueen、DiorやGanniは、従来のマーケティングをInstagramチュートリアルやチャレンジに方向転換することで、消費者のDIYファッションのインスピレーションとなることを目的としている。また、Samuel Ross氏が手がけるメンズウェアブランドA-Cold-Wall(https://a-cold-wall.com/)や米ワークカジュアルブランドDickies(https://www.dickies.com/home)を含む一部ブランドでは、コロナ禍で新しい趣味を求めている若年層の消費者との繋がりを構築するために、デッドストック生地やブランドのハードウェアの販売や提供を行っている。

A-Cold-Wallハードウェアパッケージ

https://sp1.a-cold-wall.com/collections/hardware
2015年、ロンドンを拠点に元Off-WhiteのクリエイティブディレクターSamuel Ross氏が設立したメンズウェアブランド。A-Cold-Wallは、消費者向けのDIYファッションプロジェクト促進のために、ハードウェアに特化したカプセルコレクション“Open-Source”をローンチ。30ピースのハードウェアから成るコレクションにはバックル、メタルバッジ、ジッパープル、ストッパー付きゴム紐などが含まれ、同ブランドのハードウェアを1点からDIY用に購入可能。

Lingua Francaバーチャル刺繍ワークショップ

https://linguafranca.nyc/products/virtual-embroidery-class

courtesy of Lingua Franca
2016年、Rachelle Hruska MacPherson氏によってNYで設立されたスローガンが手刺繍されたニットウェアブランド。Lingua Francaは、コロナ禍で外出自粛が長引く中、同ブランドの刺繍講師によるZoomでのオンライン刺繍クラスのワークショップを開講。バーチャル刺繍ワークショップの値段は$320。この中には、Lingua Franca 100%カシミアのセーターと刺繍キットが含まれる。

ロックダウンで加速するDIYファッション

ソーシャルセリングプラットフォームDepop(https://www.depop.com/)のCOO、Dominic Rose氏によると、“モノとモノ同士が繋がり、以前とは違う新しい価値を創造するハイパーコネクテッドワールドで育ったデジタルネイティブである若年層は、従来のスタイルサイクルに自分達の欲求を合わせる必要がない。また、DIYファッションは、新しもの好きで無駄を嫌う彼らにとって、数回着用した服をリセールで販売し、その売り上げで得たお金で新たなものを買う。そしてパーソナライズしてユニークなアイテムに仕上げることが平行して可能だ”と話す。

外出自粛中にDIYファッションでトレンド入りしたのが、Tie-dye (絞り染め)だ。YouTubeやTikTokといったZ世代の好きなプラットフォーム上で、DIY Tie-dyeに関するチュートリアルが急増。TikTokでは、ハッシュタグ#tiedyeがこれまで5億8400万回も視聴され、AmazonではDIY Tie-dyeキットが、アートやクラフト商品の中で最も大きな売り上げを上げている。https://www.amazon.com/DIY-Fashion-Kit-Tie-Shibori/dp/B00CSM5B7U

次世代のソーシャルネットワーク
フリマプラットフォームDepop

Depopとは、ロンドンを拠点に2011年、Simon Beckerman氏によって設立された、ECとSNSを足した次世代のソーシャルネットワークフリマプラットフォームだ。Depopの特徴は、Instagramのように画像投稿やメッセージ機能を持ち、売り手と買い手がソーシャルネットワーク上で交流し、フォローする相手から商品を直接購入できる点。かつてのフリマの概念である「不要なものを売りたい、安く買いたい」から、「ファッション性の高いもの売りたい、買いたい」を目指した結果、若年層のユーザーの大きな支持を得た。

現在Depopは、世界126カ国に1,500万人の登録ユーザーを抱えており、其の内90%が25歳以下のユーザーだ。コロナ禍によるロックダウンに於いても、Depopのコミュニティの盛況ぶりはかつてないほどで、マーケットプレイスに掲載されている2,000万アイテムの大部分がカスタマイズ、アップサイクルまたは再構築されたアイテムだという。2020年3月と前年2019年3月を比較すると、掲載アイテムは40%増、売り上げは65%上昇、アプリのトラフィックも74%上昇した。Depopに於ける販売活動は、若年層の消費欲求を示す良いバロメーターとなっているようだ。Depopは、2019年6月のシリーズC投資に於いて6,200万ドルを調達し、累計1億560万ドルの資金調達に成功。米国内のユーザー数は、おおよそ500万人(2019年時点)で、今後3年間で米国内のコミュニティーの拡大を狙う。同社の2019年の収益は5,000万ドル。

Depopのトップセラー

Sam Nowell

https://www.depop.com/samnowellstudios/
英国マンチェスターを拠点にするDepopのトップセラーSam Nowell氏(22歳)は、YouTubeを見ながら裁縫を覚え、現在は自身のブランドを持つ。シャワーカーテンから古いタオルまで廃棄された生地をアップサイクルし、まるでアートワークのようなユニークで独特のアイテムを新たに生み出し、Depopのプラットフォーム上で販売している。

Happy Loco

https://www.depop.com/happyxloco/
courtesy of HappyxLoco

米国ニューメキシコ州、アルバカーキを拠点にするJeremy Salazar氏は、Happy Locoの愛称で知られ、セカンドハンドの服や地元のスリフトショップから調達したテキスタイルや物をアップサイクルし、Depopで販売している。Salazar氏は、「世の中に既に洋服やテキスタイルが溢れ、リソースとなりうる物がこんなにあるのに、何故、新しいものを買いに行く気になれるだろうか」と話す。

常にユニークでフレッシュなアイテムを求め、単に新しい洋服を買いたくないと考える次世代の消費者の需要の高まりから、今後も様々なブランドからDIYファッションキットやハードウェアコレクションが登場するかもしれない。
キーワードは、フレッシュ、カスタマイズ、ユニーク、アップサイクル、リセール。