2020.08.7 - 海外レポート

新たなコンテンツビジネス:ファッションを盛り上げるゲーム&アプリ

ifs New York

新型コロナウィルス感染症のパンデミックの影響を受け、大打撃を受けているファッション業界では売上の失速が目立つが、だからと言って人々のファッションへの興味が失せたという訳では決してない。 コロナ禍に於いて、自宅で過ごす時間が劇的に増えた事で、自分のアバターに着せ替えができる試着アプリやインタラクティブなスタイリングゲーム等、ファッションで遊べるデジタルファッションアプリの使用が急激に増加し、ファッション業界では、アプリを活用したデジタルファッションが急速な拡がりを見せている。 洋服が売れない昨今、如何にファッションビジネスを構築するかが今後の小売の課題となっている中で、現在、注目を集めている好調なデジタルファッションアプリを幾つかご紹介させて頂きます。

スマートフォン上で試着・着せ替えできるアプリForma

https://www.formatech.com/

Forma は、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点に、ゲーム業界のバックグラウンドを持つBen Chiang氏(現Forma CEO)とQianyi Zhou氏によって、2017年に設立されたコンピューターソフトウェア企業。

2019年、スマートフォン上で試着・着せ替えができるバーチャル試着アプリ“Forma”をローンチ。Formaアプリを使用する事で、ユーザーは、同社のコンピュータービジョンとグラフィックテクノロジーを介して、写真のようにリアルなアバターを瞬時に作ることができ、又、そのアバターに服の着せ替えを施す事が可能だ。Formaは無料でダウンロード可能で、利用者は、バーチャルな着せ替えを楽しみたい人から、ECで衣類を購入する前に利用する人まで様々。

ユーザーは、まず第一に自身の正面写真を同アプリ上にアップロードして、自分のアバターを作るか、もしくは服を試着させるモデルを選択。次に、アプリ上の何万着もの服の中から試着したい服を選び、バーチャルでアバターに試すというシステム。Formaはコンピュータービジョンを使用し、3Dスペース中に於いて、服と人間の体を分けることで、ユーザーが同じボディに服をスワップアウトすることを可能にした。

共同設立者で現CEOのChiang氏によると、“コロナ禍に於いて、オンラインを中心とした生活が成長し、その重要性が高まる中で人々は真正性や親近感を求めるようになっている。つまり、ユーザー自身のイメージが他の何よりも身近なものだと人々が強く感じているためだ”と話す。

Formaアプリの新規ユーザー数は、現在毎週2倍に増えており、コロナ以前に比べ、同アプリの利用時間は50%増、ユーザ−毎の試着数も倍に増えているという。
また、多くのブランドからFormaのテクノロジーを使用したいとの要望が増えている、とコメントしている。

ファッションゲームアプリDrest

https://www.drest.com/
courtesy of Drest
courtesy of Drest

Drestは、世界初の革新的なインタラアクティブなラグジュアリースタイリングゲームとして昨年秋に、Lucy Yeomans氏によってローンチされた、ゲーム・SNSとショッピングが一体化したハイ・ファッションスタイリングゲームアプリ。

Yeomans氏は、ファッションウェブサイトNet-a-Porterが発行するファッション誌Porterの元編集長であり、英Harper’s Bazaarの元編集者として活躍していた人物。同アプリ誕生の経緯について、Yeomans氏は、自身が編集者時代にしていたことを、多くのファッション好きな人とアプリを通じて共有したかったからだと語る。

Drestは昨年秋のローンチ後、快調なスタートを切り、イタリアでは4月1週目に前週比400%の上昇を記録した今注目のスタイリングファッションアプリだ。同社は5月、賞受賞メイクアップアーティストでハリウッドセレブを顧客に抱え美容業界を牽引するMary Greenwel氏とパートナーシップを結び、デジタルビューティー分野にも進出を遂げ、その躍進ぶりは目を見張るものがある。

Drestのユーザは、スタイリングチャレンジとして、毎回ミッション毎にシーズンテーマ、ドレスコードやキーカラー等の情報が与えられ、Irina Shayk, Imaan Hammam, Doutzen KroesやNatalia Vodianovaといったスーパーモデルのアバターにスタイリングを施し他のユーザーと競う。チャレンジ初めは、ファッション雑誌のジュニアスタイリストとしてスタートし、”Reputation points”なるポイントを獲得・構築することで、次のレベルであるスタイリストやクリティブディレクターへとレベルアップしていく。Drestは基本、無料でダウンロードできるが、ゲーム内に於いてアイテム課金制度が組み込まれている。

ユーザーは、スタート時に、洋服、アクセサリーやメイクアップに費やす為のバーチャルバジェット$15,000が与えられ、追加の$5,000毎に$3.99のコストがかかるシステムだ。Drestのアプリで登場するブランドは、Gucci, Prada, Stella McCartney, ValentinoやBurberry他160ブランド以上。ゲーム上で試着した商品は、実際にDrestのパートナーでもあるFarfetch.comで購入することが可能だ。また、Drestは2019年6月から6ヶ月間Gucciとパートナーシップを結び、Gucci 2019-20年秋冬コレクションがアプリに登場した。更に、2020年7月Christian Louboutinとパートナーシップを結び、同ブランドのSummer 2020 Nude Collectionの中から、写真撮影とムードボードを製作するChristin Louboutin ブランドチャレンジをアプリ上でスタート。作品はChristian Louboutin氏が直々に審査し、選ばれた10人にはDrestアプリ内のお金、2,500Drest dollarが贈呈される。

No.1 ファッションゲーム Cove Fashion

https://www.covetfashion.com/

Cove Fashionとは、アバターにリアルなブランドを着せ替え、同じテーマでエントリーした他のユーザーと1対1のコーディネートバトルを行うファッション好きの為のファッションスタイリングゲーム。

Cove Fashionのユーザーは、まず好きなテーマを選び、ゲーム内のお金「Covet Cash」や「Diamonds」を使って、テーマに沿ったスタイリングを完成させる。Drestと同じく、スタイリングしたアウトフィットを気にいれば、現実にアイテムを購入することも可能だ。また、他のファッションスタイリングゲームと同様、無料でダウンロードしプレイすることができるが、アプリ内で使用するアイテムの購入オプションは本物のお金を使用。

同ゲームは、昨年5,340万ドル (約56億円)の売上を記録。モバイルゲームは、ユーザーがデジタルアセットにお金を喜んで費やす事を既に証明していると言えよう。

スニーカー仮想試着アプリWanna Kicks

https://wanna.by/
courtesy of “Wanna Kicks app”
courtesy of “Wanna Kicks app”

ベラルーシ共和国のミンスクを拠点にするAR CommerceのスタートアップWannbyが手がけるスニーカー仮想試着アプリWanna Kicksも、この長引く外出自粛中に、多くのブランドから導入したいという声が増えているという。

Wannby は、ARに於ける新世代のフィッティング、サイジング、スタイリングやパーソナリゼーションサービスを作る為のコンピュータービジョンとレンダリング技術を開発し、モバイルショッパーが様々なスニーカーの中から自分に合うスニーカーを仮想試着して探せるアプリ“Wanna Kicks”をローンチ。

ユーザーは、3Dモデルのリストの中からスニーカーを選び、カメラを足に向けるだけで、Wanna Kicksのアプリが足の動きを追跡し、ショッパーはリアルタイムまたは、異なるアングルからバーチャルシューズを試着する事ができる仕組み。

Wannaby CEOのSergey Arkhangelskiy氏は、”我々のミッションはオフラインとオンラインショッピングのバリアを壊す事。多くのシューズブランドが新作をオンラインとオフラインの両方で発表する昨今、沢山の客が新作スニーカーについて知りたがっており、ARの導入により、実店舗に足を運ばずとも市場に登場したばかりのスニーカーを人々がバーチャルで試着体験でき、オフラインとオンラインショッピングの垣根をとる事を可能にした”と語っている。

Wannaby社は、Bulba VenturesとHaxusから支援を受け、同社は、シード投資により200万ドル(約2.1億円)の資金を調達。また、GucciはWannaby社と提携し、ショッパーがバーチャルにスニカーを試着できるAR機能独自のiOSアプリに追加した。

“Digital Only”のコレクション発表したブランドCarlings

https://digitalcollection.carlings.com/

スカンジナビアを拠点にするマルチブランドリテーラーCarlingsが、昨年11月に初のデジタルコレクションをリリース。

このコレクションは19のジェンダーレス、サイズレスなアイテムから成り、価格帯は€10 から€30。各アイテムは限定生産で、12アイテムのみの展開。顧客は、好きな商品を選び自分の写真をアップロードするとブランド側がスタイリングをしてくれた画像を送り返してくれるシステム。コレクションはリリースから1週間で売切れになったという。

この前例のない不安なコロナ禍に於いて、消費者はインスピレーションを求め日常生活から逃避するためにオンラインに新しい場を求める傾向にあり、ファッションブランドやデザイナーにとってもゲームやアプリといった新しいコンセプトを試す絶好の機会になっている。今後もオンラインコンテンツに新しい場を求めて新たなファッションゲームやアプリが続々と登場すると予測される。