2021.01.15 - 海外レポート

加速するサステナブルな新素材

ifs New York

昨今、社会や環境問題に自ら立ち上がるZ世代の台頭と動物由来の素材に代わる環境負荷の低いサステナブル素材に対する需要の急激な高まりにより、世界中に於いて、サステナブルで高機能な新素材の開発が盛んになっている。今回は、加速するサステナブルな新素材と題して現在市場で注目されている次世代の持続可能な新素材をレポートさせて頂きます。

■僅か20%の消費者が
ブランドや企業のサステナビリティ主張を信頼

ロンドンを拠点に、様々なファッションブランドのサステナビリティやエシカル度を比較するプラットフォームCompare Ethics(https://compareethics.com/)の新たな知見によると、今日、僅か20%の消費者がブランドや企業のサステナビリティ主張を信じていることが判明。昨今、社会や環境に真に配慮したサステナブルな企業が多く存在する一方で、サステナブルな企業というイメージを消費者に植え付けるために、一見環境に配慮しているかのように見せ、実際は上辺だけのサステナブルな主張Greenwash*だと指摘される企業も存在する為、多くの消費者は、企業やブランドのサステナビリティ主張に懐疑的な姿勢を示しているという。
*Greenwashとは、環境に配慮した、またはエコなイメージを思わせる「Green」と、ごまかしや上辺だけという意味の「Whitewash」を組み合わせた造語。

■消費者の購買意思決定には “信頼”が鍵

Compare Ethicsの共同設立者兼CEOのAbby Morris氏によると、“サステナビリティに関しては、世界で今非常に重要な転換点を迎え、かつてないほどサステナブル商品が求められている。多くの消費者に於いて、自身の消費が信念に沿っているかを非常に気にするようになったこともあり、企業の正直なサステナビリティ主張とそれを裏付ける関連情報無しでは、消費者は直ぐに真実を見破る。今まさに消費者の信頼危機が訪れている”と話す。また、市場調査会社Centiment(https://www.centiment.co/)が行った調査では、消費者の購買意思決定には “信頼”が鍵になると明らかにした。実際、ハイファッションリテーラーによるサステナビリティ主張に疑問を抱く消費者は増えており、83%の消費者が、第三者機関によって認証された商品のサステナビリティクレームを信頼すると回答。企業やブランドは自社のサステナビリティ主張を立証する責任が生じるようになり、今後、多くの企業がAmazon社のClimate Pledge Friendly(https://www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=21221607011)プログラムのようなサイト上の商品のサステナブル主張を立証する第三者認証制度を利用していく傾向にあると言われている。

■次世代のサステナブル素材の開発を加速する
The Material Innovation Initiative

https://www.materialinnovation.org/
The Material Innovation Initiativesは、2019年、カリフォルニア州サンフランシスコを拠点に、植物性食品のムーブメントに携わったStephanie Downs氏とNicole Rawling氏によって設立された非営利団体。The Material Innovation Initiativeは、ブランド、インキュベーター、起業家、科学者、投資家、教育者、工場、材料供給者、小売りや非営利団体を繋ぎ、個々の力を借りながらエコシステムを構築し、次世代のサステナブル素材の開発を加速させている。共同設立者のDown氏はスタートアップのスペシャリストで、インドを拠点にする植物由来で作られた代替肉企業Good Dot(https://www.gooddot.in/)の共同設立者でもある。一方、Rawling氏は弁護士であり、肉、乳製品や卵の代わりに植物ベースの代替品を推進する国際501(c)団体Good Food Instituteのディレクターを務めた人物。Downs氏とRawling氏の両者は、代替肉企業や乳製品業界で培った知識と経験を活かし、動物性素材の代替となりうる植物性由来の新素材の開発推進を行い、ファッション、自動車やホームグッズ業界に於ける環境フットプリントの削減に注力している。

非営利団体であるThe Material Innovation Initiativesは、3部からなる戦略を伴い、ファッション、自動車やホームグッズの分野をより環境に優しいものに転換したいと考えている。まず第1段階は、革新的な素材や技術の確認と査定。第2段階は、選択したイノベーションが計画の一環かどうかを測るための投資及び研究と開発。第3段階は、The Material Innovation Initiativeはブランド、リテーラーやサプライヤーとパートナーシップを結び新たなサステナブル素材を市場に出すという3ステップを踏んでいる。最先端のテクノロジーを駆使しマッシュルームから作られたレザーから、人工シルクや人工ウールまで、今様々な新素材が続々と開発され素材業界に素材革命を起こしている。

■廃棄されたりんごを活用して作られた
アップルレザー

北イタリアのボルツァーノを拠点にするFrumat社は、レザーの代替として、廃棄されたりんごから作られた革新的な新素材”Appleskin”を開発。ボルツァーノは、世界でも有数のりんごの産地として知られているが、毎年大量のりんごの廃棄物問題に長年頭を抱えていた。2008年、Hannes Parth氏は、この大量廃棄されるりんごを有効活用できないかと考え、新しいサステナブルな素材の開発に乗り出す事で、地元の抱える産業廃棄問題及び、レザーに代わる新たなサステナブル素材への需要の高まりに対する解決策を生み出した。アップルレザーは、セルロースベース素材で色、質感や厚み、型押しやレーザープリントが豊富。また、合成皮革に比べ通気性や耐久性に優れ、水を通さない性質が特徴で高品質なレザーの代替としてファッション業界や家具業界で使用されている。

■アップルレザーを活用する
NY発のシューズブランドSylven New York

https://sylvennewyork.com/
Sylven New York は、2017年、Casey Dworkin氏によってNYで設立されたサステナブルなシューズブランド。Earth Dayに生まれたCasey Dworkin氏は、幼少の頃から持続可能な活動に貢献してきた人物。クラフトマンシップ、デザインそしてファッションとサステナビリティの両立をミッションに掲げ、NYを拠点に自身のシューズブランドSylven New Yorkを設立。最近、Dworkin氏は、有機りんごの廃棄物から作られたアップルレザー、小麦やとうもろこしの副産物から作られたライニング、樹皮から抽出した植物タンニンで染色したレザー、そして100%リサイクル素材から作られたヴィーガンレザー等の素材やパーツを積極的に取り入れ、シューズの再デザインに徹底して取り組んでいるという。特に、レザー素材の代替として、有機りんごの廃棄物50%から作られたアップルレザーを使用して作られたシグニチャーラインAlmasi ($495)やJayne($425)はファッション業界から非常に注目を集めている。アップルレザーの次は、ヤシガラ素材を使用する予定だという。

■アパレル、靴、バッグ、家具からヒルトンホテルまで!パイナップルレザーPiñatexの活用事例

https://www.ananas-anam.com/
パイナップルレザーPiñatex

Piñatex は、アニマルレザーの代替素材として、廃棄されたパイナップルの葉から抽出したセルロースファイバーを基にポリ乳酸と石油系樹脂から作られているパイナップルレザー。環境に優しく、社会的責任のある、クルエルティフリーな素材として、フットウェア、バッグ、アクセサリー、アパレルや家具他、その使用用途は多岐に渡る革新的な次世代のサステナブル素材だ。

Piñatex は、人々、環境そして経済を繋ぐ持続可能な未来の為のヴィジョンを持つエシカル起業家Dr. Carmen Hijosaによって開発され、現在はHijosa氏によって設立されたAnanas Anam社で製造・配給が行われている。Hijosa氏は、元々レザーグッズデザインと製造に於ける業界コンサルタントとしてのバックグラウンドを持つ人物で、Ananas Anam社でもチーフクリエイティブオフィサーを務め、現在も第一人者として素材開発の進行に直接関わっている。

Piñatex を使用した事例
・Svala

https://svala.co/
Svalaは、オーストラリア、シドニー出身のHelga Douglas氏がLAを拠点に設立したラグジュアリーヴィーガンバッグ・アクセサリーブランド。当時、Douglas氏が求めるようなバッグやアクセサリーが市場になかった事から、アニマルフレンドリー、PVC(塩ビ)フリーの革新的なプレミアヴィーガン素材を使用し、サステナブルな方法でハンドクラフトしたバッグやアクセサリーを作り始めた。Svalaの商品に使用されている主なテキスタイルは、Piñatex であるが、その他にもコルク、植物性由来のスウェード、オーガニックコットンやリサイクルプラスチックボトルから作られたポリエステルといった素材も取り入れられている。2019年、Svalaは、世界初のサステナブルなラグジュアリー雑誌Eluxe Magazine(https://eluxemagazine.com/)のEluxe賞に選出され、2020年にはBest Vegan of the Yearを受賞。

・Drew Veloric
https://www.drewveloric.com/footwear
Calvin Kleinでのインターンを経て、ミラノのCarol Christian Poell、アントワープのDaniel Anderson、そしてNYではLanvinで経験を積み、現在は、マルチメディアコンテンツ製作とPiñatex、マッシュルーム、ヘンプ、オーガニックコットン、ココナッツ他、ナチュラル素材を使用したファッション、フットウェアそして家具デザインを手掛けている。

・Hilton Hotel
https://newsroom.hilton.com/hilton/news/the-worlds-first-vegan-suite-welcomes-guests-at-hilton-london-bankside
Piñatexを主要な室内装備材料として起用した世界初のヴィーガンホテルスウィートが2019年、Hilton Bankside London内にオープン。Piñatexは、ベッドルームのヘッドボード、シッティングエリアのクッションやアームチェア、バスルームに使用されているだけでなく、ホテルのルームキーまでもPiñatexから作られており、最大限にヴィーガン体験ができる空間になっている。また、ホテルの全ての装飾と室内は、意識的に環境に優しい素材で作られ、室内に併設されているミニバーには地元産の植物由来のスナックのみが常備されている。

■Ralph Lauren Corpがマイナー投資した材料工学
スタートアップNatural Fiber Welding

https://www.naturalfiberwelding.com/
イリノイ州ペオリアを拠点に、レザーやプラスチックに代わる植物由来の代替素材を開発するスタートアップNatural Fiber Welding社が、今年初め、Ralph Lauren Corpから1,300万ドル(約13.5億円)の新たな投資を得て話題を呼んだ。この投資は、2015年に設立された同社にとって重要なブーストアップへと繋がった。

Natural Fiber Weldingは、50%リサイクル、50%オーガニックバージンコットンの紡績糸から作られた素材Clausと、天然由来で生分解性のあるポリマーで作られたヴィーガンレザー素材Mirumというサステナブルで特許取得高機能性素材を開発し展開。今年初めにはPorscheと協業し、Porsche社のTaycanモデルのドアカバーにNatural Fiber WeldingのMirumが使用された。

消費者の需要の高まり、そして更なるテクノロジーの進化によって、今後も続々とサステナブルで高機能な非動物性素材が登場すると予想する。