2018.01.10 - FASHION ASPECT , All

2018 年の生活者の気分 削ぎ落とすことで平穏に。そして“動く”年に

ナレッジ室 室長

小原 直花

伊藤忠ファッションシステム(以下、ifs)では、恒例の「生活者の気分」リサーチを行った。昨年は、2021年にフォーカスし、「暮らしのイメージ」をテーマにまとめたが、今回は、2020年代という新たな年代へのカウントダウンが始まる年を迎えることもあり、あらためて、「生活者にとっての幸せとは?」をテーマにその輪郭を探った。調査結果から、生活者の、“自らかろやかに動くため不必要なもの、余計なものを削ぎ落としながら次に向かう”という姿勢が浮かび上がってきた。

■心緩む状況づくり

データ1:「これから半年間で増やしたい気分」のトップ5を見ると、「楽しい」「安定した」「穏やかな・安らかな」「のんびり・ゆったり」「いきいきした」が挙がる。一年前と比べ、ほぼ変わらないが、「のんびり・ゆったり」と「いきいきした」の順位が入れ替わっている。またトップ5以降でも、「うれしい」が「うきうき・わくわく」と、「やさしい」が「自信に満ちた」と、「ぬくもりがある」が「チャレンジする」とそれぞれ入れ替わり順位を上げていることから、積極的な行動を起こしたり瞬発的な心躍る感覚を求めるよりも、優先させたいのは、心緩むような空気感に浸る状況をつくりだすこと、その状況が前提として求められていると言えそうだ。

■心の穏やかさが、次の行動に向かわせる原動力

また、データ2:「2018 年の暮らし方の方向性」のトップ5を見ると、「余計なモノや無駄な空間を持たないようにする」「予定を詰め込まずスケジュールにゆとりをもつ」「今までずっと憧れていたモノ・コトを手に入れる/体験する」「休日は郊外など自然に触れる場所に出かける」「他者からの評価よりも自分がどう感じるかを重視する」となっている。「これから増やしたい気分」との関係性を見るため、コレスポンデンス分析を行った結果、1位「余計なモノや無駄な空間を持たないようにする」と2位「予定を詰め込まずスケジュールにゆとりをもつ」の傍に、増やしたい気分3位の「穏やかな・安らかな」と2位の「安定した」が位置することが分かった。確かに最近生活者にインタビューをしていると「整理収納が趣味です」といった言葉を耳にすることが多くなっている。「共働きで毎日忙しいので、帰宅した時に散らかっていたり汚れたものが目に入るのが一番のストレス。余計なものは飾らないようにしている」(プリクラ下世代・女性)など、今の自分の暮らしにとって優先すべきことは何なのかを見極め、心穏やかにいられる住空間づくりに腐心する傾向が見られる。住空間への思いは、今の時代に生活者が求める気分に直結する姿勢となっていることは確かであり、3位の「今まで憧れていた…」や「今まで自分とは関係ないと思っていたこと…」へと触手を伸ばしたいという行動を実現するためにも、心の余裕や空間の余地をつくる工夫が必要になっているようだ。

増やしたい気分1位の「楽しい」の周辺には、「のんびり・ゆったり」気分と「休日は郊外など自然に触れられる場所に出かける」が位置している。暮らしがデジタル化して便利になる一方で、際限なく情報の海へと誘われる環境に疲労気味の生活者にとって、「デジタルデトックス」の中に身を置くことが逆に楽しさを醸成するという感覚を持ち合わせている。これは、インスタ映えを追い求める若者世代にも共通しており、「子どもに自然の中でいつもとは違うのびのびとした体験をさせてあげたい」(プリクラ下世代・男性)など、アウトドアは家族とのコミュニケーションのためにも大切な時間として暮らしに取り込まれていくに違いない。

2018年 生活者の気分

■幸せに必要不可欠なものは至ってシンプル

生活者にとっての「幸せ感」を探るため、「幸せを感じるために不可欠なものは何か」について弊社で選出した40 項目から選んでもらった結果、トップ10は「家族の健康」「自分の健康」「経済的安定」「現金」「居心地の良い住空間」「家族との時間」「恋人・パートナーとの時間」「知識・教養」「資産」「人とのつながり」となり、逆にワースト10は、「見栄」「フォロワーからのいいね!」「他者からの評価」「トレンド情報の収集」「社会的な地位」「トレンドの洋服やファッション雑貨」「クルマ」「テレビ」「ネットで買い物をする機会」「仕事に必要なスキル(資格、語学など)」となった。不可欠なのは、さまざまなレンジの他者評価や移ろいゆく現象、かつては三種の神器として憧れであったようなモノを持つことなどではなく、自分自身の基盤となる資本(経済面、心身の健康、知識)、誰にも気遣うことのない自分でいられる住空間、近しい人との関係性など、“素”の状態を構成するとてもシンプルな要素であることが分かった。

あらためて留意したいのは、データ2「暮らしの方向性」のトップに「余計なモノや無駄な空間を持たない」が挙がり、幸せに不可欠なもののトップ10内には「持ち家」ではなく「居心地のよい住空間」が挙がったこと。 自分にとっての価値が重視されているあたりには、自身の居場所や拠点のあり方が問われる時代になっていることの表れとも言えそうだ。

この傾向は、「幸せとはどのような状態なのか」についての記述式回答結果からも裏付けられた。「ある程度の水準の衣食住が満たされており、落ち着いて過ごせる家族や友人がいること」(LINE世代・女性)、「安全で健康的な毎日を送れること。周りの人と良好な状態を築いていること」(プリクラ下世代・男性)、「日常生活に困らない程度のお金があり、気を遣わずに自分らしく居られる場所があること」(ハナコ世代・女性)、「健康に支えられた自信を実感しながら、仕事、プライベートに張りのある生活を送ること」(DC洗礼世代・男性)など、欲張ることなく、近しい人たちと平穏な毎日を過ごせることが幸せだという。至極当たり前のことと言ってしまえばそれまでだが、これほど複雑で情報に追われる成熟社会であっても生活者にとって根本的に大切なことはシンプルなことのようだが、この結果は、普通に手に入れられるかというと案外難しいものでもあるということを示唆しているのかもしれない。

 

2018年の生活者は、まずは平穏な心の余裕を手に入れるため自分にとって不必要なものを削ぎ落とし、理想の“素”の状態をキープしながら、新たなことに着手するという状況づくりに入っていくと言えそうだ。

◎ 調査概要
・調査地域:首都圏 ・調査方法:WEB
・標本抽出:実査会社保有パネル
・実査期間:2017年9月22日〜 24日
・調査対象:21 〜 71歳・男女計1,854名
(9世代男女各103名)

 
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