2020.06.30 - 太田の目

失われた季節を求めて

マーケティング開発第1グループ

太田 敏宏

コロナ禍で様々なものが失われた。経済的な損失だけではなく、精神的な損失も大きかったのではないだろうか。コロナによって奪われた季節感もその1つである。
三密を避けるために花見の宴が自粛になり、ゴールデンウィークの大型連休がなくなった。夏の甲子園は、春の選抜に続いて中止が発表され、学校の夏休みも、休業の影響で短縮されるところが多い。花火大会も軒並み開催中止が発表されている。関東近県では海水浴場のオープンを断念したところも多い。季節感の創出は、そんな季節の風物詩の中止や延期だけではない。
できるだけ外出を避けるように言われ、テレワークが行われることで、季節感の移り変わりを肌で感じる機会も、いつもの年よりも減ってしまった人が多いのでないだろうか。春の始まりを感じたと思ったら、コロナの騒ぎが始まり、ようやく緊急事態宣言が解除されたと思った途端、梅雨に入ってしまった。多くの人が好きな「春」が飛んでしまい、季節を感じる心のゆとりができ始めたと思ったら、多くの人が嫌いな「梅雨」が来てしまったため、なおさら季節が失われた感覚になってしまったのかもしれない。
ファッションにおいても、百貨店や商業施設の営業自粛で、春の立ち上がり期から、一気に夏のセールへと季節が飛んでしまった。そのセールもまた、密を避けるために、施設ごとの一斉開催を取りやめ、ブランド個々に行うようになった。
新しい生活様式の下では、季節に関係なくマスクを着用し、季節を感じるようなお祭りやイベントもしばらく行われないだろう。おそらく、人々は季節にさらに飢えてくる。五感をフルに使って、季節で起こる自然の営みや変化を感じたいと思うようになるのではないか。Go Toキャンペーンなどが実施されれば、季節を感じやすい場所への旅行がブームになり、季節を感じるような食材を求めるようになるだろう。
コロナの教訓を生かして、なるべくシーズンレスな商品を増やし、年中売れるような商品を強化する策は、リスク回避にはなるかもしれないが、人々の心を動かさないかもしれない。

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※伊藤忠ファッションシステム マーケティング開発第1グループでは、「KCI Key Consumer Indicators by ifs vol.2」として、全国に住む20-60代男女1,112名を対象にフリマアプリなどを中心にした「Re-commerce」に関するwebアンケート調査を実施し、それを元に考察を行いました。
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