2021.09.29 - 太田の目

個性化するコモディティ

マーケティング開発第1グループ

太田 敏宏

H20リテイリングとOKストアによる、関西スーパーの争奪戦が繰り広げられている。時代変化に対応した生き残り策として、今後も合従連衡の動きは盛んになるだろう。巨大資本への集中や、それに対抗するための合従連衡、人口減少社会での売上の食い止め、ドラッグストアによるテリトリーの侵食、コンビニエンスストアの定着、EC化の進展など、今後、目が離せない状況になっている。
食品小売業は別の視点でも注目業態になっている。コロナ禍での生活防衛や、遠くより家の近くで買い物を済ませたいという動きに加え、「個性化」と「エンタテイメント化」で注目が集まっている。従来なら、食品スーパーはそのエリアにおける、決まった数の胃袋の奪い合いというのが競合の焦点で、「安さ」や「鮮度」「品揃えの豊富さ」という実用性がポイントだった。それが今、食品小売業に「個性」と「エンタテイメント」という付加価値が求められるようになっている。成城石井やカルディなどの輸入食品や独自の商品開発を行う業態に加え、巨大な容量で驚きを与えるコストコ、他店にはない視点でオリジナル商品を作り出す業務スーパー、安さが一つのエンタテイメントになっているロピア、肉の品揃えに特化したジャパンミートなど、毎日、どこかのニュース情報番組やバラエティ番組で取り上げられている。売られている状態に始まり、オリジナル商品の試食、消費者が実際にやっているアレンジレシピなど、何度、取り上げられても、まだまだ、ネタが生み出されている。番組だけでなく、これらの業態がSNSでも多く取り上げられ、たくさんの「いいね」を生み出している。
これらの業態は、シェアという不毛な争いを避けられるばかりでなく、苦痛であるはずの家事をエンタテイメントに変換し、生活に潤いと豊かさを与えているといってもいいだろう。他の業態でコモディティ化(※)が進む一方で、最もコモディティであるはずの、日常の食品小売業態が付加価値に移行していくという、なんとも皮肉で楽しいことが起きている。

※コモディティ化:コモディティとは「日用品や生活必需品」のこと。コモディティ化とは、日用品のように、商品の付加価値が薄れ、生活者にとっての商品の選択の基準が市場価格や量に絞られること。