2018.09.6 - All , モノを買わない世代の気分消費

~コト消費のその先は?~
フェス化する映画上映、世界観に深く入り込める仕掛けにライン世代の注目が集まる

事業開発推進グループ

竹貫 仁

LINE世代が10代を過ごした2000年代後半から2010年代前半にかけて、映像を取り巻く環境が大きく変化しました。YouTubeやニコニコ動画のような動画サービスが普及し、NetflixやAmazonプライム・ビデオといった定額視聴サービスも登場しました。また、近年では、SHOWROOMやTik Tokといったサービスも人気を集め、自分の端末であらゆる映像を発信し、コストもあまりかからずに鑑賞できるようになりました。そのような環境下に育った私達は、“個”として気軽に映像との接点を持つことが当たり前になっていますが、今、それとは反する「爆音映画祭」なる映画館での鑑賞イベントが若者の間で話題を呼んでいるようです。今回はこの「爆音映画祭」を体験し、その魅力を探ってきました。

爆音映画際 MOVIX昭島

「爆音映画祭」とは、通常の映画用の音響セッティングではなく、音楽ライブで使用しているスピーカーを使用し、大音量に包まれながら映画を鑑賞するイベントです。2004年に吉祥寺バウスシアターという音楽ライブ等も行う多目的施設を拠点としてはじまり、2014年に吉祥寺バウスシアターが閉館してから、全国各地の映画館やライブハウスなどへ広がりを見せています。上映する映画はかつての名作から最近の話題作まで多岐にわたりますが、サウンドトラックが多かったり、派手な銃撃戦があったりと、大音量にしたら面白そうな作品を選んでいるようです。今回私が鑑賞したのは『ベイビー・ドライバー』というサウンドトラックも派手なアクションも豊富にある映画で、「爆音上映」を楽しむのにうってつけの作品でした。入場して最初に目についたのが、スクリーン前に置かれた巨大なスピーカーで、これからどのような音が鳴るのかと楽しみになりました。

LINE世代「爆音映画祭」を体験

いざ始まってみると、サウンドトラックやアクションが迫力を持って迫ってくるのはもちろんのこと、登場人物の足音、車のドアが閉まる音といった通常の映画鑑賞では素通りしてしまうような音が、こちらが注意を向けざるを得ないような音へと変わっていました。その結果、ただ流れてくるストーリーを追うのではなく、登場人物の一挙手一投足を音の振動によって全身で感じる、それこそ音楽ライブのような体験をすることができ、フェスに来ているような感覚になりました。終演後には、同世代と思われるグループが「久しぶりに映画館来たけど、五感が刺激されて面白かった。」「爆音だけど耳が痛くならなかったし、ここまでリアルな感じや迫力があるとは思わなかったよ。また見に来ようかな。」などと興奮しながら話しているのも耳にしたほどです。

 

実際にインスタでも、「爆音映画祭」のリピーターたちの投稿をいくつも目にした他、映画上映中に、ペンライトを振ってスクリーンの登場人物に声をかけたりすることができる「応援上映」という新しい手法を用いたイベントにも注目が集まっていました。映画の内容は同じでも、一緒に観る人たちの反応は変わってくるので、何回もリピートして劇場に足を運んでいるようです。SNSで広く浅くコミュニケーションしているLINE世代のコト消費は、瞬時にして一体感やつながりを感じることができる「思い出づくり消費」とも言われていますが、今回の体験やリピーターたちの体験談を通して、思い出づくりには「誰と行くか」だけでなく、「どれだけその世界観に深く入り込める場所・モノ・コトか」という、経験の深さも重要なポイントであるように感じてきました。