人口減少と消費意欲の減退というダブルパンチを受け、ショップが売る力を失っている。モノに興味を失っているのだから、これからはコト提案と飲食強化だと、がんばってはいるものの肝心のコト提案も、ワークショップだ、フードホールだと、どこか既視感のある提案ばかりで、なかなか集客に結びつかない。
人口が減少していくのだから、これまでと同じトラフィックを期待するのは無理がある。同じ人が何度も行くというリピーターをいかに作るかが大事だ。行くと必ず自分の欲しい物がある、いつも何かを発見してしまう、本能が欲してしまう味。つい通ってしまう、寄ってしまうという通いグセを促すような店は強い。店で提供されるものだけでなく、あの人に会いたいというのも重要なポイントになる。

今の消費者は、できるだけモノは買いたくないという前提であるため、どこにでもある店、いつでも買える店、他の店と大差がない店は素通りされてしまう。素通りされないのは、クセが強い個性的な店である。店の前で違和感を覚え、思わず二度見してしまうと、怖いけど入ってみようかという気にさせる。店に入った結果、意外に自分にフィットしていたとなると、それは通ってしまう要因となる。少し遠回りになっても、わざわざ行く理由ができてしまう。その感覚を他の誰かを共有できてしまうと、疑問は確信に変わり、もうその店から離れられなくなる。

渋谷パルコはリニューアルで、相当にクセが強い商業施設となった。一度目は、何だか不思議な商業施設と感じてしまうが、もう一度空いている時にじっくり見てみようかなという気にさせる。決して万人受けするとは思えないが、これからの時代には“アリ”かもしれない。
漫才の千鳥ではないが、クセがすごい店はやはりすごいのである。

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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