地方への注目って、どうよ?

地方創生とか、地方移住とか、地方発のヒット商品とか、この頃やたらと「地方」という言葉を目にするようになった。コロナ禍で密な都会にいることへの不安や、ネットショッピングやテレワークで、都会にいなければならない意味が薄れたなどの理由も含めて、地方への注目が集まっている。
しかし、地方の方が面白いとか、地方なのに頑張っているというニュアンスに、いささかの違和感を覚える。この場合の「地方」は、「首都に対してそれ以外の土地」的な意味で使われており、言い直すと「東京じゃないのに面白い」「東京でないのに頑張っている」という意味にとれる。ネット時代においては、情報はフラットになっており、東京であろうが地方であろうが、面白いものは面白いし、優れているものは優れているはずだ。なのに、まだ「東京」が全ての頂点であるかの如く語られている。
また、「地方」をひとかたまりで捉えていることが気になる。長野が面白いとか、奈良が頑張っているというのではなく、「地方」が面白いという言い方もどうかと思う。ひとつの地方にいる人からすれば、自分の地方が注目されるのは、都道府県では47分の1、市町村で言えば1,718分の1である。地方の人からすれば、「地方」に注目してほしいわけではなく、「自分の住んでいる場所」に注目してほしいのだ。それに、一度注目されたからといって、それが継続するとは限らない。都会から見た物珍しさで注目されているので、次に注目されるのは何年後かわからない。
また、地方が面白いのではなく、東京が面白くなくなったという見方はできないだろうか?これまでは、人がいる、情報が集まる、刺激があるなどの要素が「東京」を面白くしていた。ネット化し、コロナで人が減り、画一化が進み、東京と地方の温度差が減少した。これによって、地方が台頭しやすくなった。地方にとってはいいことかもしれない。しかし、一方で、世の中全体で考えると、面白さの総量が減少しているのかもしれない。それぞれの地方が頑張ることは応援したいが、東京もなんとかしないとね。


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著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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