世界中に広がるキャッシュレス化の流れ

https://www.paymentscardsandmobile.com/world-payments-report-2018-digital-payments-booming/
https://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-01/more-restaurants-want-your-money-but-not-your-cash


キャッシュレス化の流れは既に世界中で広まっている。フランス・パリに拠点を置き、世界40カ国以上で事業展開するITコンサルティング会社Capgemini(https://www.capgemini.com/)と仏銀行大手BNP PARIBAS(https://group.bnpparibas/en/)が発表した「WPR2018」(World Payment Report 2018)によると、2016年度の世界キャッシュレス決済処理件数は、10.1%の成長率で、4,826億件に達した。また、2016から2021年までには、世界のキャッシュレス決済処理件数は、新興市場の成長率21.6%を伴い、年間成長率12.7%で加速する見通しだ。また、北米に於ける、キャッシュレス決済処理数も2021年までに引き続き上昇すると予測されている。


■ワシントンDCで広がるキャッシュレス化

事例1) 公共交通に於けるICカード導入の試み

米国では、現在首都ワシントンDCで、キャッシュレス決済を決済手段として導入する動きが進んでいる。ワシントン首都圏交通局(WMTA)(https://www.wmata.com/)のレポートによると、乗車の際の現金による支払いを廃止し、SmartTripカード(ワシントンDCの地下鉄、路線バス、循環バスで使用可)と呼ばれるSuicaのようなICカードを導入することを検討しているという。SmartTripカードの導入によって、乗車時に於けるスムーズな決済、運行時間の短縮といったスピーディーな移動を目指す。
SmartTripカードは、特定の券売機で前もってチャージすることができる。バス乗車時には運賃箱のICリーダーに、地下鉄の改札では改札機にかざすだけ。既に、Route 79 MetroExtra – Georgia Avenue Limited Lineでは、2018年6月から2019年6月までの試験期間中にSmartTripカードの導入を実施し、完全なキャッシュレス決済を実現している。
SmartTripカードhttps://www.wmata.com/fares/smartrip/
この試験導入が成功すれば、キャッシュレス決済は、2019年6月以降、正式導入が決定し、地域の他のバスルートにも導入されることになる。一方で、このキャッシュレス決済の導入に懸念を抱く人々も多いという。

■キャッシュレス化の懸念点

公共交通に於けるICカード導入は、ワシントンでバスに頼る生活をしている人々にとって困難な状況を招くのではという声も上がっている。Greater Greater Washington(https://ggwash.org/)によると、この地域の10人に1人以上が銀行口座を保持していないアンバンクと形容される人々であり、そのほか25%が銀行口座を持っていても十分に利用できていないアンダーバンクと形容される人々で、クレジットカードの使用、またデジタルペイメントシステムへのアクセスに制限があり、現金が唯一の支払方法である場合が多いことが分かった。アンバンク、アンダーバンクの多くが貧困層で有色人種。銀行口座を持たない理由としは金融制度からの利益や恩恵を理解していないため、金融機関に対する不信感、高額な利用手数料、または単に銀行の近くに居住していない事が考えれるという。キャッシュレス化の浸透は、銀行口座、クレジットカードやデビットカードを持たない人々(低所得者、クレジットカードを持たない若年層や高齢者)を隔離するような動きに繫がり、都市部に於いても多くの世帯が取り残されることが懸念材料となっている。

ちなみに、米国連邦準備制度理事会が行った調査によると、米国に於ける成人人口の7%(1600万人にあたる)が、チェッキング口座(当座預金口座のようなもの)、セービング口座(貯蓄用口座)及びマネーマーケットアカウント(連邦政府の保険付き預金口座)を保持していないアンバンクであることが判明。これらの銀行口座を保持していない人々は、代替金融サービスとして、小切手換金業者、郵便為替、質預かり屋、ペイデイローン(米消費者金融が給料を担保に提供する、短期の小口ローンサービス)サービスを利用しているという。更に、前述の銀行口座を保持しない7%に加え、米国成人人口の19%が銀行口座を持っていても十分に利用できておらず、代替金融サービスを使用しているアンダーバンクであることが分かった。
ワシントンDC市内の飲食店ではキャッシュレス化が進み、キャッシュでの取引をやめているところがある。

事例2)キャッシュレス化を導入したファストカジュアルレストラン:Hill Country (https://hillcountry.com/

キャッシュレス化を導入したファストカジュアルレストラン:Hill Countryhttps://www.bloomberg.com/news/articles/2018-11-01/more-restaurants-want-your-money-but-not-your-cash
https://www.popville.com/2018/07/hill-country-bbq-going-cashless-august-13th/

ワシントンDCのダウンタウンに店舗を構える、テキサススタイルBBQレストラン「Hill Country」は、現金での支払いを認めない完全キャッシュレス化に踏み切ったレストランのひとつだ。完全キャッシュレス化を導入した理由には、キャッシュでの取引により、ビジネス全体の取引が7%落ちた事、強盗の侵入により店の現金を盗まれた事を機に、従来の現金でのやり取りを見直し、時間のかかるキャッシュ管理やキャッシュでのやり取り、強盗や盗難の被害にあうリスク、売り上げの現金の集計、従業員の安全等を考慮し、キャッシュレス化の導入に至った。
ワシントンDCでは、多くのファストカジュアルレストランがHill Countryのように、オペレーションのスピード化と防盗性を兼ねて、現金の取引をやめている。例えば、米国で人気のサラダチェーンで、卓越したビジネスプランを展開する「Sweet Green」も2016年から一部店舗で、2017年には全店舗でキャッシュレス化を導入した。キャッシュレス化を導入する以前は、オーダーするまでの長蛇の列に対して消費者からの苦情が非常に多かったという。現金での取引を止めたことで、断然早いサービスを提供できるようになったそうだ。

■キャッシュレス化を阻止する動きも

キャッシュレス化を導入するファストレストランが増える一方で、10人に1人が低所得者で、現金に頼る生活をしているエリアでは、キャッシュレス化に批判の声を上げている。ワシントンDCで進むキャッシュレス化をめぐり、現金での支払いを受け付けないのは差別にあたるとして、2018年6月、市議会議員Daivid Grosso氏他5名が、小売飲食業に対して、現金での支払い受け付けを求める法案を提出した。これは、現金での支払いを希望する人、クレジットカードを保持していないない人々に対しての差別を防ぐことを目的としている。
一連のキャッシュレス化を阻止する動きがある中で、キャッシュレス化を阻止することが根本的な解決策にはならないと専門家は指摘している。今後小売飲食業はキャッシュレスを導入するところ、キャッシュレスを導入しないところと二極化が進みそうだ。

■米国に於けるその他キャッシュレス化事例

カード会社が小売飲食店にキャッシュレス化を推奨
事例1)VISAカードが米国小売飲食店に推奨するキャッシュレスチャレンジ

https://usa.visa.com/about-visa/newsroom/press-releases.releaseId.15521.html
VISAカードキャッシュレスチャレンジhttps://www.manhattandigest.com/2018/06/07/courtesysimo-pizza-meatpacking-district/
https://www.confectionerynews.com/Article/2017/08/31/Sol-Cacao-targets-150k-annual-revenue-with-new-Whole-Foods-listing

2017年、ビザカードが米国内の小売飲食店を対象に、キャッシュレスチャレンジと呼ばれる、キャンペーンの募集を開始。これは、キャッシュレス化の導入によって、レストランビジネスが受ける利益や恩恵を説き、同キャンペーンに参加したレストランの中から、VISAカードのビジョンを体現し、キャッシュフリーの未来を約束する選ばれた50社に、1万ドルの賞金が与えられた。
NY市内で賞金を得たのは、ミートパッキング地区に店舗を構えるナポリ風ピザ店Simo Pizza (https://simopizza.com/)と、ブロンクスを拠点に、3兄弟が手がける最もエシカルな方法で収穫された高品質なカカオ使用したチョコレートを製造するSol Cacao(https://www.solcacao.com/)の2社。

ウェアラブルガジェットFitbitにもキャッシュレス決済機能が搭載
事例2)キャッシュレス決済機能を搭載した新たなスマートウォッチFitbit Versa

https://www.fitbit.com/shop/versa
スマートウォッチFitbit Versahttps://www.wired.com/review/review-fitbit-versa/
https://www.americanexpress.com/us/credit-cards/features-benefits/digital-wallets/fitbit-pay.html

Fitbitから、健康とフィットネス、生活をもっと便利にスマートにする新たなスマートウォッチFitbit versaが登場した。4日間以上のバッテリーライフ、300曲以上の音楽を保存・再生、アプリ・クロックフェイス、通知機能、心拍数の測定、水泳に対応、そしてfitbit payというキャッシュレス決済機能を搭載した。外出先からでも、いつも使用しているクレジットカードやデビットカードにどこからでもアクセスできる。

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