2019 年の生活者の気分 変化著しい時代、柔軟な思考・行動力を持つ自分に調整する年に

■気負うことなく先を見据える

データ1:「これから半年間で増やしたい気分」トップ10の順位は、昨年とまったく変わらず、「楽しい」「安定した」「穏やかな・安らかな」などが上位を占めた。生活者が欲している気分というのは、変化著しい時代であってもそう大きく変化するものではないということを改めて感じさせる結果となった。ただ、11 ~ 15 位に変動があり、「人とつながっている」(12位→11位)、「チャレンジする」(14位→13位)、「肩の力が抜けた」(16位→15位)が順位を上げた。中でも「肩の力が抜けた」は昨年に引き続き順位を上げており、先行きが見えない中、気負ってもただ空回りするだけで実りがないといった気持ちが見え隠れする。同時に、自分だけではままならない状況を切り開くためにも人との関係性を重視する動きや、新たな可能性に向かってチャレンジする意向が徐々にではあるが高まっていると言えるだろう。

また将来に向かっての志向を捉えるため、データ2:「2025年の暮らしの方向性」を尋ねた結果の上位を見ると「家族とのコミュニケーションを大切にしたい」「健康を重視した暮らしがしたい」「身の丈に合った暮らしがしたい」「時間を効率的に使いたい」「年齢相応の暮らしがしたい」「一人の時間を持てる暮らしがしたい」などが挙がった。増やしたい気分との関係性を見るためコレスポンデンス分析を行った結果、それらの周囲には、増やしたい気分上位の「安定した」や、「穏やかな・安らかな」「のんびり・ゆったりした」「いきいきした」が近しいことが分かった。2025 年に向けてまず優先するのは、ごく身近な人間関係、そして自分自身の生活を整えることになるだろう。しかも、「効率」「一人」といった時間的意識を持ちながら、「身の丈」など欲張ることなく、「年齢相応」と無理なく、自分にふさわしい暮らしを手に入れたいと思っていることが分かる。SNSなどを通し多様な暮らしを身近に目にできてしまう今、ややもすると自分を見失いがちな状況下で、自分の身の丈とは?年齢相応とは?を改めて問い直すといった自身の定義の見直しが行われそうだ。
データ1:これから半年間で増やしたい気分
データ2:2025年の暮らしの方向性

■自分環境を整えた先に社会・自然環境への配慮を

データ3:「2025年の社会・地球環境のイメージ」を尋ねると、経済環境が「今よりも悪くなっている」と思う生活者が3割にとどまったのに対し、地球環境については6割方が「今よりも悪くなっている」と想像していることが分かった。しかし、データ2では、「環境負荷をかけないなど、持続可能な暮らしがしたい」は19 位と決して順位は高くない。全体では1割強しか反応しておらず、唯一2割を超えるのは70歳前後の団塊世代という結果だ。問題意識は持ちつつも、まずは自分の足元が定まらなければ社会・自然環境にまで意識・行動が及ぶ余裕は生まれないということなのかもしれない。

一方で、前述したデータ1で順位を上げた気分と「2025 年の暮らしの方向性」との関係性をコレスポンデンス分析で見ると、「人とつながっている」の傍らに「状況に合わせ、柔軟に生活スタイルを変えたい」「無駄がない・合理的な」が位置し、「チャンレンジする」には「人や社会に役立つことをしたい」「最新のテクノロジーを積極的に取り入れたい」が、「肩の力が抜けた」には「毎日の暮らしのリズムを一定に保ちたい」が近しいことが分かった。働き方改革や多様性の受容といった時代の流れを受けて、これまでの概念や規定に収まらない新たな生き方を探るべく、「隠れエクストリーム※」調査を実施しているが、「本業以外に何かしらの活動をしている生活者」へのヒアリングでは、海外の貧困エリアでファッションショーを開催するLINE世代の女性は、「毎日の着る服さえままならない子どもたちにファッションの楽しみを伝えながら、いつか労働環境をつくりたい」と話し、消滅可能性都市に暮らしているプリクラ下世代の男性は、「同じように消滅可能性都市認定エリアに暮らす人たちとオープンに語り合って、将来への可能性を見出したい」と回答するなど、社会や地域への問題意識を高く持っている点が共通している。自身の興味・関心があること、もしくは実感していることに軸足を置きながら、人的ネットワークを駆使しできることから実践しようとしている。データ2では15 位に挙がる「人や社会の役に立つことがしたい」というチャレンジを、先行層は課題として挙げているのだ。

データ3:2025年の社会・地球環境のイメージ
2019 年の生活者は、人や社会、環境へ配慮したいと思いつつも、まずは気張らず自然体で暮らしを整え直すことに注力することになりそうだ。ただし、企業には当然、環境改善の姿勢を持っていて欲しいと思っている。何気なく購入・利用したモノ・コト・サービスが社会・環境改善に配慮されていると、安心し穏やかでいられる。そうした小さな積み重ねが、自身が理想とする暮らしにいつしか近づけてくれると考えられるのだから。

※隠れエクストリーム:その人に内在する極端な行動パターンや問題意識、こだわりなどのこと


著者情報

ナレッジ開発室 室長 “ifsオリジナル世代区分・気分・見た目で消費の今と未来を読み解く”をベースに、会員制マーケティング組織「FA CLUB」の企画・運営を担当するほか、クライアント別案件にも携わる。最新発行物「自創―自ら変化を創造する」では、これからの時代の方向性にフォーカスし、アプローチヒントをレポートしている。1992年入社のばなな世代。趣味は人間観察

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