無理せず今を受け入れる団塊ジュニア世代vs理想を追い自ら頑張るプリクラ上世代

伊藤忠ファッションシステムでは、さまざまな視点から世代研究を行っているが、今回はライフステージの境目にある「アラフォー」前後の「団塊ジュニア世代」(1971~1976年生/現在42~47歳)と「プリクラ上世代」(1977年~1981年生/現在37~41歳)にフォーカスしグループインタビューを実施した。これまでに明らかになっている各世代の基本価値観をふまえた上で、子育てや仕事にと多忙な彼らの“今”を知ることで、今後のマーケティングアプローチのポイントをまとめた。




◆「アラフォー」という言葉だけではくくれない


団塊ジュニア世代、プリクラ上世代共に、バブル崩壊による就職氷河期を経験し、社会人スタート期から苦労してきた世代と言われる。とはいえ、両世代が体験してきた20歳前後のカルチャーはまるで異なり、たった5 歳の差でもそれぞれの特徴の違いが顕著だ(※表 参照)。
まず、基本属性※1を見ると、男性では団塊ジュニア世代、プリクラ上世代共に「既婚」が約50%、「子どもがいる」は40%前後と大きな差がないが、女性は、「既婚」が前者80%弱、後者約60%、「子どもがいる」は前者55%、後者約40%と15 ~ 20ポイント近く差が見られた。プリクラ上世代は子育てファミリーではない割合も高く、結婚年齢の幅拡大化の影響もあってライフステージの多様化がうかがえる。ただ、ライフステージが違っていても、それぞれの世代ならではの特徴は共通項として存在している。




◆モノ・コト選びの裏にあるのは、安心感か独自性か


グループインタビュー※2 では、モノ・コトを選ぶ際に重視するポイントを聞いた。団塊ジュニア世代は、「良いもの=高い」という認識を持ち、確かな品質が保証されているものや、皆に長く愛されているブランドなどに安心感を持つ傾向がうかがえた。「安くて良いモノはないと思っている」(男性)と安価なものに抵抗感を持つ人が多いものの、「PB商品はちゃんとしたメーカーが作っていると知ってから好きになった」(女性)と、安心感が担保されれば積極的に選ぶようだ。
購入前の情報源として、「知人にすすめられると衝動買いしてしまう」(男性)と、信頼の置ける仲間内のクチコミを重視する傾向がある。彼らは20 歳前後の頃、セレクトショップのフィルターを通し選ばれたブランドに親しんでいただけに、選択の際には確固とした拠り所と後押し役が今も必要なようだ。
プリクラ上世代でも同じようにブランドへの関心が高いが、安心感よりも、「他人とかぶらないもの」「ひとひねりあるデザイン」「限定品」など自分らしさが表現できることに魅力を感じるようだ。また、近年話題のライフスタイルショップに見られるような「アウトドアライフ」「オーガニックフード」などへの関心も高く、暮らしに取り入れている人も多い。彼らはトレンドへのキャッチアップにも敏感で、「今何がはやっているかを知りたい」(女性)、「ネット世代なのでまずは何でも調べてから買う」(男性)と、10代からポケベル、PHS、携帯電話、PC……と、話題のデジタルツールを次々と駆使してきた経験が、消費行動に組み込まれていることがうかがえる。
団塊ジュニア世代は安心という納得性を、プリクラ上世代は独自性に加えてトレンド性の実感を求めていることが世代間の違いとして表れている。

◆美意識の磨き方は、自然体か若さ維持か


両世代で最も多く関心を集めたカテゴリーが「美容」「健康」だ。団塊ジュニア世代では「若さよりも年相応に見られたい」など、自分の役割や年齢に合った見た目であることを重視。女性は、ちょっとした合間にできる美顔器やストレッチ、食事はオーガニックでヘルシーであることを心がけるなど内面から美を磨く傾向が見られた。理想の姿をビジュアルコラージュで表現してもらうと、自然の中でヨガやストレッチをする様子が挙がる。男性の場合は、「お腹の脂肪が気になる」という声も多く、ジム通いやランニングなど、毎日のワークアウトを習慣化して健康的な体づくりを意識しているようだ。団塊ジュニア世代は「無理しない」をモットーにあくまでも自然体であることを重視している。
一方プリクラ上世代では、「なるべく若く」「カッコよく、キレイでありたい」など、理想の自分像に向かって努力を惜しまない人が多い。趣味が美容という人も多く、女性はエステやマツエク、ネイルなどの日常的なメンテナンスを欠かさないなど美意識の高さは昔から変わらない。男性では20 代の頃から育毛サプリメントを服用するなど、継続的なセルフケアをする傾向が見られた。男女共に理想像として外国人モデルを掲げ、ワークアウトをする理由には「筋肉をつける」「引き締まった身体」などと目標設定も高い。プリクラ上世代は、ストイックに昔と変わらない自分を追求することがキーワードと言えそうだ。

◆家族志向と自分志向


子育てファミリーでは、それぞれの世代による「家族観」の違いが浮き彫りとなった。まず、団塊ジュニア世代は「家族志向」の人が多く、「子どもがやりたいと言うことは何でもやらせたいので、自分のことは後回し」(女性)というように、自分の欲求は抑えて我慢する傾向がある。「子どものためにキレイなお母さんでありたい」と自分のことも家族目線だ。また、男性では「息子が野球を始めたので、自分も一緒に始めたら面白くてハマっている」(男性)と、子どもの関心事が家族の話題の中心になることも多い。世代にかかわらず、ファミリー層は子ども最優先の生活になりがちだが、とりわけこの世代ではまるで二人三脚のように親子の距離感が非常に近く感じられる。
一方、プリクラ上世代では、「子ども第一」としつつも、同時に、自分らしさを大切にしたいという「自分志向」も垣間見られた。「最近家族で行ったハワイ旅行では、子どもに自我が出てきたので合わせて行動していたら私の時間がなくて不満だった。子ども一人でできることも増えてきたので、別行動で自分が楽しめる時間を積極的に持ちたい」「ママになってもヒールは8cm」(女性)、「趣味はキャンプ。子どもも一緒に巻き込んで家族皆で楽しむ。たまに、家族を置いて一人でソロキャンプに行くこともある」(男性)など、子育て中でも自分の「好き」を優先する。プリクラ上世代は、これまでギャル・ギャル男文化を創造するなど、“個性”を磨き続けてきたことが背景として考えられる。

◆多様性が顕著な時代の中でも、変わらない基本的価値観


今回の調査の結果から、ライフステージによって消費対象が変わっても、世代別の価値観は年を経ても変わらない部分が多く見られた。
団塊ジュニア世代は等身大感覚を大切にし、「無理せず自然体」「身体にやさしい自然派」といったナチュラル感が魅力に映る。有名ブランドやメーカー、周囲の後押しなど権威あるお墨付きに安心感を覚えることからも、認知率が低いモノでは説得力のある機能性やストーリー性が必要となる。
プリクラ上世代は「自分らしさ」への関心が高いため、「無難」「シンプル」「ベーシック」なものには魅力を感じない。旬を実感できるトレンド性のあるもので、なおかつ自己流にアレンジできることがモノ・コトを提供する際の要と言える。ただし理想像が高く年齢とのギャップに悩む人も多く見受けられたことから、トレンド×アレンジをカッコよく取り入れるお手本となるロールモデルの存在も求められていくだろう。
両世代共に、この先50 代、60 代……と年を重ねていく中で、ライフステージや環境の変化に応じてその都度興味対象は変わってゆくだろう。しかし、それでも彼らがベーシックに持つブレない価値観に注目することで、今後のアプローチ・ポイントが見えてくるのではないだろうか。



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