近年、米国ではワークライフバランスの充実を図るため、様々な場所が仕事場になりうるという認識が広がりつつある。定められたオフィスに出勤し、決まった自分のデスクで一日中仕事をするという従来の働き方に改革がもたらされようとしている。既に数多くの企業が、通勤をなくし自由な勤務地で働くリモートワークを実践したり、オフィスにジム、レストラン、自然の要素を導入しているところや、仕事環境にアウトドアオフィスを採用しているところも存在する。今回は、米国でのこうした新しい働き方の事例をご紹介させていただきます。


◆OptOutside(アウトサイド選択)キャンペーンを掲げるREI

courtesy of REI
https://www.rei.com/blog/news/optoutside-will-you-go-out-with-us
シアトルを拠点とするアウトドアブランドREIは、ホリデー商戦初日のBlack Fridayに全店舗をあえて休業とし、その日は従業員にアウトドアでの活動を推奨。一昨年からハッシュタグ「#OptOutside」(アウトサイド選択)キャンペーンをSNSで大々的に展開し、顧客やスタッフに向けて家族や友人と休暇をアウトドアで楽しむようにというメッセージを送った。この働き方改革によって、従業員のワークライフバランスが充実し生産性やクリエイティビティが上がっただけでなく、その多くがアウトドア愛好者である顧客の共感をも呼び、Black Friday後の週末にはオンライン上のトラフィックが26%上昇、売上高9.3%増、ECでの売り上げも前年比23%増という相乗効果を生んだ。

◆「Out of Office」アウトドアで働くことを推奨するLL Bean

courtesy of Event MarketerLLBean
http://www.eventmarketer.com/article/l-l-bean-outdoor-workspace-be-an-outsider/
https://bangordailynews.com/2018/06/26/business/ll-bean-shows-off-new-outdoor-coworking-space-with-us-tour/

メイン州を拠点にするアウトドアブランドLL Beanは、全国28都市、35ロケーションを展開するコワーキングスペース「Industrious」(https://www.industriousoffice.com/)と提携し、史場初の屋外でのポップアップオフィス「Be an Outsider at work」を6月21日にマンハッタンのMadison Square Park内にローンチ。この革新的な屋外のワーキングスペースには、カンファレンスルーム、個々のシェアワークスペースといったインドアのアメニティを設置し、公園の隅に快適な椅子や机の配置、電源コードやWi-Fi、アウトドアオフィスに必要な全てのものを兼ね備えた。NYの後は、ボストン、フィラデルフィア、ウィスコンシンでこのポップアップが巡回。
このプロジェクトの発端は、LL Bean社が、ワークプレイスストラテジーアナリスト、リサーチャー“The Healthy Workplace: How to Improve the Well-Being of your Employees-and Boost Your Company’s Bottom Line”の著者Leigh Stringer(http://www.leighstringer.com/)とパートナーシップを締結し、米国内の労働者22-65歳を対象にアウトドアに関する調査を実施したことから始まった。
この調査では、調査対象者の87%が屋外で過ごすことが好きだと回答。75%が屋外で仕事をしたことがない、86%が勤務日にもっと、屋外で時間を過ごしたい、また65%が仕事が大きなバリアになり、なかなか外で過ごす時間がないと答えた。面白いことに、回答者のたった半数が、仕事が片付くのであれば、外で仕事をしてもよいと上司が言っていると回答。
更に、多くの回答者は屋外で働くことがもたらす利益を信じているようだ。74%がアウトドアで働くことで気分の改善に繫がる、71%がストレスレベルが軽減、69%がリラックスできる、66%が健康やウェルネスの改善がのぞめる、64%が幸せが増加すると回答した。ちなみに回答者の41%がコンピューター関連の仕事に従事、32%がしばしばカンファレンスコールを行い、戸外での会議のほうが快適だと回答。
調査の結果、多くの回答者が、屋外でもっと仕事をしたいと切望していることが判明。この調査結果を踏まえて、史上初の屋外コワーキングプレイスの試みに至った。今後も、新しい仕事場環境としてアウトドアオフィスの導入が、クリエイティブな企業を中心に盛んになっていくと予測される。

◆昼寝用施設の登場

courtesy of Racked
https://www.racked.com/2018/7/13/17562404/casper-dreamery-nap-pods-experience
https://www.popsugar.com/fitness/photo-gallery/45039201/image/45039207/Casper-Sleep-Lounge-Dreamery

ワークライフバランス充実の一手として、ニューヨークの間で今、トレンドになりつつあるのが昼寝・仮眠専用施設の登場。忙しない仕事の合間に、専用スペースで仮眠をとることで、気分転換を図り仕事の効率をあげるという考え方が広がっている。

The Dreamery
186 Mercer Street, New York, NY
都会のミレニアル層からカルト的な支持を得ているニューヨーク発、オンラインベース高機能マットレスブランドCasper(https://casper.com/)が、昼寝用のラウンジ施設「The Dreamery」(https://dreamerybycasper.com/)をノーホー地区にオープン。Casperのマットレスを使用した仮眠用スペースで45分の「睡眠体験」が$25でできるというもの。

◆Co-working space x
ファッションブランドとプロフェッショナルネットワークコラボ

courtesy of blog.Linkedin.com
https://blog.linkedin.com/2018/february/14/linkedin-j-crew-and-wework-set-the-stage-for-success

コワーキングという新しい働き方を提示したコワーキングスペースの先駆けでその拡大が著しいWeWork(https://www.wework.com/)が、同スペースの会員(現在、66都市で212ロケーションを展開し、20万人の会員を持つ)を支援することを目的に、大手ファッションブランドJ Crew、及びプロフェッショナルネットワークLinkedinとパートナーシップを締結。WeWorkがファッションブランドとコラボをするのはこれが初めての試みだ。
このコラボは、WeWorkのニューヨーク、サンフランシスコ、アトランタ、フィラデルフィアのロケーションに於いて、仕事での成功、個人的充足感、次世代の起業家といったトピックスについてのパネルディスカッションほか、J Crewのポップアップを開催し、WeWork会員にディスカウント価格で商品が提供される。近年不調を強いられているJ Crew側にとっても、ブランドの認知度の向上に繫がり、双方にとっても画期的な機会となった。
リモートワークやアウトドアオフィスに始まった働き方改革は、従来の働き方の概念を覆した。今後は、より一層社員個々の幸せと健康を追及した働き方が求められていくだろうと予測する。

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