ミレニアル世代の消費動向:モノを所有せず「借りる」マインドセット

■「所 有」から「共有」、そして必要時に「利用する」という消費動向の変化

昨今、米国に於ける多くの若年層が“モノを所有しない”という選択をしている。デジタルネイティブである彼らは、デジタル端末を駆使して瞬時に多様なサービスと繫がり、必要な情報はオンライン上で事足りるため、常に変化するモノやサービスに時間、労力やお金を払って所有するよりも、必要に応じて借りることを好む傾向にある。また、“必要時にモノを借りる”という意識が、従来の経済的理由や要・不要の判断からだけでなく、コト消費を重要視する彼らの新しい消費動向、新しいラグジュアリーの定義になりつつある。
courtesy of The Urban Institute
https://www.cnbc.com/2018/07/09/these-are-the-reasons-why-millions-of-millennials-cant-buy-houses.html
また、家を所有する事=「アメリカンドリーム」の象徴であった親世代と比べ、家の価値、住まいや家具に対する消費の仕方にも大きな変化が現れている。ワシントンDCを拠点にするシンクタンクで経済及び社会政策の調査を行っているThe Urban Institute(https://www.urban.org/)が行った調べによると、ミレ二アル世代は、Baby Boomer やGen Xに比べて、18%も家の所有率が低いことが判明した。回答の上位は「頭金が払えない」(53%)、「ローンの審査が通らない」(33%)といった金銭的な理由が大半を占めるが、一方で「賃貸の方が不便でない」(28%)、「引越しをするため」(24%)、「家の所有はリスクが高い」(23%)、「賃貸の方が好ましい」(21%)等の理由も多く、家を所有することの経済的なリスクやひとつの住処に縛られたくないと考える人が多々いることも判明。ミレニアル世代は身軽でフレキシブルなライフスタイルを好む傾向が強く、また彼らの必要時に借りたいというニーズの高まりを受け、モノを所有せず月額制で利用できるインテリアや家具のレンタルサブスクリプションサービスが拡大している。

■利用者の利便性と廃棄物の縮小を追及したサステーナブルな家具のサブスクリプションレンタルサービス

Feather
https://www.livefeather.com/
Feather
https://www.superbcrew.com/furniture-rental-startup-feather-raises-3-5m-to-enable-furniture-rental-for-millennials-on-the-move/
Featherは、NYのソーホー地区を拠点に2017年Jay Renoによって設立された月額制のサブスクリプションモデルを導入した家具のレンタルスタートアップ企業。引越しが多い、モノを所有したくない、コミットはしたくないが良いデザインの家具を試したいと願う若年層をターゲットに、現在はNY市内、SF, LAとLA郊外のOrange County郡でサービスを展開。
アメリカ合衆国環境保護庁(EPA)によると、毎年9.7ミリオントンもの家具が廃棄されているという。この数字はアメリカの総人口が、毎年家具をひとつ捨てる事と同じ量に値する。何故これほどまでに家具の廃棄が多いのか?それは現代における若年層の生活がかつてないほどに変わったことが主な理由として挙げられる。彼らは、大学進学からマイホーム購入までに平均12回の引越しを繰り返し、引越しの度に新しい家具を買い替える人が多い。また、一般的にデザイン性の高い家具は高価格なものが多く、なかなか一度に揃えることができなかったり、気軽に買い替えするのが難しい。一方でファストファーニチャーは、低価格であるがデザインの選択肢の幅が狭く、廃棄後の再利用・リサイクルができない素材が多いため、環境にも非常に有害だ。
このようなジレンマを解消すべく、廃棄物の縮小と利用者の利便性を追及したのが、家具のレンタルサブスクリプションサービス「Feather」。West Elm(https://www.westelm.com/), Casper(https://casper.com/home/)、 Joybird(https://joybird.com/)、Tuft & Needle(https://www.tuftandneedle.com/), Pottery Barn(https://www.potterybarn.com/)といったミレニアル世代に人気の家具ブランドとパートナーシップを結び、スタイリッシュでサステーナブルな定額制の家具のレンタルサブスクリプションサービスを可能にした。また、同社のオリジナルの家具のレンタルも行っている。レンタル期間のオプションは非会員(最低3ヶ月の縛りで$99~/月)と年間会員(会員費$19/月+ミニマムの家具レンタル$29~/月)の二つ。使用方法は、リビングルーム、ダイニングルーム、ベッドルーム、ホームオフィス等の部屋に合わせてキュレートされたルームパッケージから、または個別品目から好きな家具を選択し、月額でレンタル料を払うシステム。家具の配送・組み立て・設置や引越しの際の家具の撤去もFeatherがおこなってくれる。気に入った家具があれば買い取ることも可能だ。Featherは、2019年5月にシリーズA投資で1250万ドルミリオンを調達。累計で1600万ドルの資金調達に成功。資金は事業の拡大に活用される予定。

■既存のホーム業界をディスラプトする家具レンタルサービス

Fernish
https://fernish.co/
Fernish
https://www.forbes.com/sites/amandalauren/2018/07/16/furniture-subscription-startup-fernish-launches-collaboration-with-create-barrel/#282eac0a6010
https://cdn.geekwire.com/wp-content/uploads/2018/09/EmptyName-387-630×420.jpg
引越しを頻繁にするMichael Barlow氏とLucas Dickey氏は、引越しの際にかかる高額な費用はもとより、“おおがかりな家具の移動”、“新しいスペースと前の家からもってきた家具が合わない”、家しい家具探しに時間がかかる“、”手軽な家具を購入したものの引越しの都度破棄し、それが環境破壊に繫がる“といった自身の苦い引越し体験から、消費者が好きな家具を必要な期間、簡単なステップで借りれるサステーナブルなビジネスモデルを構築し、2018年、定額制の家具レンタルサービス「Fernish」をLAで設立した。Fernishは、業界を牽引するCrate and Barrel(https://www.crateandbarrel.com/)やCB2(https://www.cb2.com/)のほか、新進家具ブランド Campaign (https://www.campaignliving.com/)やFloyd(https://floydhome.com/)と提携し、異なるテイスト、スタイル、ニーズに合うような質の良い厳選された家具を定額制料金でレンタルすることを可能にした。2019年からはIKEAが新しいパートナーとして加わり、家具の選択肢を拡充することに成功。ますユーザーは、Fernishがキュレートしたセレクションから、または単品で好きな家具を選ぶ、次にレンタル期間(最低3ケ月から最長12ヶ月)を選択する。料金は月$99~。気にいった家具があれば買い取ることもできる。現在はLA, Seattleでサービスを展開。Feather同様、家具の配送・組み立て・設置、引越しの際の家具の撤去や掃除もFernishが全ておこなってくれる。
「良いデザインの家具を使いたいが、1年後同じ場所にいるかわからないため、何千ドルも一気に家具に投資することはできない」という若年層のニーズに正にフィットするサービスだ。
若年層のモノを所有しないという消費動向が加速するなかで、このようなモノのレンタルサービスは今後も拡充の一途を辿るのではないかと予測する。




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