新しいリテールの在り方:Community is the new retail

昨今、既存のリテールの在り方にディスラプションが起きており、同じ興味を持つ人々が集まるコミュニティの確立と成長こそが、新しいリテールの機会を創出していると言われている。オンラインにルーツを持つブランドが、オンライン上でコミュニティを確立し、成功した次のステップとしてポップアップショップの開催や実店舗を構える動きが目立つ。 また、近年 “フェス”や “コン”(コンベンションの略)が世界中でブームを巻き起こし、従来のショッピングと一線を画したコミュニティ発の新しい体験型リテールイベントが好調だ。その中でも影響力があると言われているのが、2016年からLAのLong Beachでスタートし、今年からシカゴでも開催が始まったスニーカーとストリートウェアのマーケットプレイス「COMPLEXCON」と、昨年初めて開催されたストリートファッション&カルチャーのオンラインメディアHYPEBEASTが手がける初のフェス「HYPEFEST」だ。 今回は、コミュニティが発信する新しいリテールの形を探ってきたいと思います。


■「COMPLEXCON」:次世代のスニーカー・ストリートウェアの見本市

https://www.complexcon.com
https://arrestedmotion.com/2018/11/recap-complexcon-2018/
https://www.dandad.org/awards/professional/2019/experiential/230219/unlock-the-drop-complexcon/

■今最もハイプな祭典「COMPLEXCON」とは

近年、最もハイプな祭典と呼ばれている「COMPLEXCON」は、従来のファッション業界向けの展示会や見本市を一般消費者に向けて作られたイベントで、今年で開催4回目を迎える。同イベントは、スニーカーとストリートウェアカルチャーを知る上で欠かせないイベントとして世界中から来場者を迎え、ポップカルチャー、アート、フード、スタイル、スポーツ、音楽、テック、イノベーション、アクティビズムそして教育を融合したハイブリッド型の大規模な祭典兼展示会へと年々進化を遂げている。
「COMPLEXCON」の組織委員会のメンバーには、アーティストの村上 隆氏、ラッパー、シンガー、プロデューサーで起業家のPharrell Williams氏が名を連ね、ファッションデザイナーのVirgil Abloh、フットウェアデザイナーでスニーカーショップ「KITH」のオーナーRonnie Fieg、ラッパー、プロデューサーのNas、ラッパー、シンガーのJaden Smith、スクリーンライター、プロデューサー、女優のLena Waithe、アメリカンストリートウェアデザイナーのDon C他、数多の著名人がパネルとして参加。昨年11月に行われたイベントでは、2日間の会期中におおよそ5万人が来場し2500万ドル(約28億円)の収益を上げた。COMPLEXCONの経済効果には目を瞠るものがある。

■「COMPLEXCON」誕生の背景

COMPLEXCONの創業者は、ファッションデザイナー、アーティスト、若年層向けのデジタルメディアプラットフォーム「Complex」(https://www.complex.com/)の設立者でもあるMarc Ecko氏と、ファッショントレードショー「Agenda」(https://www.agendashow.com/)の設立者であり、最近では、ミレニアル世代やGen ZをターゲットにTVとE-commerceを融合させた次世代型のライブモバイルショッピング「NTWRK」(https://thentwrk.com/)の設立者でもあるAaron Levant氏。彼らは、従来のコンベンションやカンファレンスとは違った、前例のない一般消費者の好奇心を駆り立てるような没入型の体験ポップカルチャーの祭典を、今、最も影響力のある人々と最も熱いブランドのクリエイティブなコラボレーションをもって開催したかったと語っている。

■COMMERCE + CULTUREの融合:新しいリテール体験を提供する「COMPLEXCON」

COMPLEXCONでは、世界中からストリートカルチャーを牽引する音楽、ファッションブランドが集結し、ポップアップショップから人気ブランドとアーティストのイベント限定コラボ商品の販売、アートインスタレーション、ワークショップ、ゲストパフォーマーによるライブパフォーマンスやクリエイターやアーティストによるパネルディスカッションまでエキサイティングな催しが目白押しの二日間。専用のスマホアプリには、会場内でのイベント情報通知が届き、参加者は自分の興味のあるコンテンツを求めて会場内を移動する。
近年、米国の百貨店、ショッピングセンターや実店舗では、客足が減少していることが伝えられている。一方COMPLEXCONでは、何千人もの一般消費者が入場料(1dayパス$80、2dayパス$135、Early パス$225、VIPパス$600)を支払い、新商品やイベント限定品を求めて各ブランドのポップアップショップやブース前にできる長蛇の列に並んでいる姿が見られる。この現象は、消費者の、他の友人が参加しているクールなイベントに参加できず、自分だけとり残されることへの不安や恐怖の感情FOMO(Fear of missing out)やユニークでクールな新しい体験をソーシャルメディア上で友達にシェアしたいといった消費者感情が大きく関係していることが窺える。
COMPLEXCONとは、単なるショッピングイベントではなく、商業、文化のインターセクションであり、参加者とデザイナー、アーティストやパフォーマーとの距離が非常に近い事も同イベントの醍醐味の一つだ。COMPLEXCONは、既存の購入体験に様々な付加価値を与え、「モノ」よりも体験や経験にお金を費やす現代の若年層が求める新しいリテール体験イベントだといえよう。

■HYPEBEASTが手掛ける初のフェス「HYPEFEAST」

htthttp://coveteur.com/2018/10/09/hypebeast-founder-kevin-ma-launch-hypefest/ps://www.gq.com/story/among-the-hypebeasts
http://coveteur.com/2018/10/09/hypebeast-founder-kevin-ma-launch-hypefest/#
ストリートファッション&カルチャーのオンラインメディア「HYPEBEAST」(https://hypebeast.com/)は、同メディア初となる音楽、ファッション、アートとスニーカーが集結するフェス「HYPEFEST」をNYのブルックリン地区にあるネイビーヤードで昨年10月に開催し話題を呼んだ。ミュージシャン、プロデューサーそしてデザイナーの藤原ヒロシ氏や、閉店したパリの人気セレクトショップ「COLETTE」の元クリエイティブディレクターSarah Andelmanがボードメンバーに名を連ねていることもあり、業界内では開催前から大きな話題になっていた。

■HYPEBEASTとは

日本のストリートファッションやスニーカーカルチャーに興味を持ち、スニーカーの収集家でもあっった香港生まれ、カナダ、バンクーバー育ちのKevin Ma氏が設立したストリートファッション&カルチャーのオンラインメディア。もともとは、2005年「HYPEBEAST」というスニーカーに纏わる個人ブログをMa氏が開始したのが始まり。その後、ブログのアクセス数が増えるにつれ、広告が入るようになり、彼らが知りたい情報を配信することをコンセプトに、スニーカー、ウェア、音楽、カルチャー、デザインを扱うメディアプラットフォームへと進化を遂げていった。2011年にはECサイト「HBX」をオープン。現在は、香港、NY、ロンドン、日本、韓国、上海、パリ、LAの世界8都市に拠点を構え、世界各地に300人ほどのスタッフを抱えている。HYPEBEASTでは、世界中で配信された最新のニュースを時差なく閲覧することが可能で、またそのアーティスティックなコンテンツや写真にも定評がある。

■HYPEFEST: “体験できるイベント”

HYPEFESTは、いつもデジタルでコンテンツを見てくれている読者に、今度は、自分達の良いと思ったモノを直接体験・体感してもらう場所、人と人の繋がりが生まれる場所を作りたいという想いから誕生した。“体験できるイベント”をコンセプトに、二日間にわたり開催されたHYPEFESTは、従来のショッピングイベントとは一線を画した音楽、アート、ファッションやフットウェアが融合された精選されたカルチャーイベント。“文化と学びに値段をつけるべきではない”と考えるMa氏自身が全てのチケットを購入し、HYPEFESTを完全無料の体験にした事でも注目を集めた。
同イベントには、A-COLD-WALL, Adidas Original, Awake NY, BAPE, Diesel, G-SHOCK, Lacoste, Marcelo Burlon, Moncler X Palm Angels, Heron Preston, Puma, Undercover, Sacai他50以上のブランドがブースを出店し、イベント期間限定のエクスクルーシブな限定商品、コラボ商品、カスタマイゼーションアイテムを展開。さらに、HYPEFESTの会場で購入した商品は、直接自宅に送られるシステムとなっており、購入した商品を会場内で持ち歩く必要もなく、身軽に会場内を回れることも次世代の買い物の在り方ではないだろうか。
その他にも、トークショー、ライブパフォーマンス、アートインスタレーション、パネルディスカッション、DJやフードトラックまで盛りだくさんの催しものが目白押しの二日間で、会場は来場者の熱気に包まれた。二日間のイベントで、約1万人の来場者を記録したという。
次世代のリテールの在り方として、コミュニティづくりをすることが今後もキーとなるだろう。
次回はビューティー関連のコミュニティが発信するリテールの在り方をレポートさせていただきます。




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