サステナブル元年:No single use plastic

近年、プラスチック廃棄物による環境汚染が、世界的に深刻化の一途を辿っている。使い捨てされ、きちんとリサイクルされないまま環境中に出たプラスチック廃棄物は、最終的に海洋に流出し、海の生態系を脅かす存在となっているのは周知の事実。今回は、この問題に対する米国の流れ、注目企業、またNYにおける注目ショップをご紹介させて頂きます。

■深刻さを増す海洋プラスチック問題

海洋汚染問題の解決に取り組む、カリフォルニア州マリブを拠点にする非営利団「Plastic Ocean International」(https://plasticoceans.org/)によると、年間3億トン以上のプラスチックが生産され、その半分が、ペットボトル、レジ袋、食品の包装容器、食事の持ち帰りなどに使用する容器、ストローやマドラー等の使い捨てプラスチックだという。プラスチックの生産量は、年々増大しているにもかかわらず、その90%以上はリサイクルされていない。また、ワシントンDCを拠点に、海洋保護に注力しているNGO団体「Ocean Conservancy」(https://oceanconservancy.org)によると、世界の海洋には少なくとも1億5000万トン以上のプラスチック廃棄物が存在し、それに加え毎年800万トン以上のプラスチック廃棄物が海洋へ投棄されていることが判明。このままの状況が続けば、2050年までに、海洋におけるプラスチックは魚の数よりも多くなると警笛を鳴らす。

■世界で加速する脱プラスチックの動き

プラスチック廃棄物問題の事態の深刻化を受け、2017年年末、中国が廃プラスチックの輸入を禁止。その後、世界中でプラスチック廃棄物への対策が進んでいる。米国に於いては、2018年10月に、”Save Our Seas Act” (https://www.congress.gov/bill/115th-congress/senate-bill/3508/text)(海洋漂流ゴミに関する法律が改正されたもの)にトランプ大統領が署名・成立した。また、2019年4月29日から5月10日にかけて、スイスのジュネーブで開催されたバーゼル条約(有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)第14回締結会議(COP14)では、さらに「汚れたプラスチックごみ」の輸出規制が強化されることになった。

■プラスチック製ストロー、容器、レジ袋廃止の動き

Environmental Protection Agency (アメリカ合衆国環境保護庁)(https://www.epa.gov/)が発行した2015年のレポートによると、米国に於ける容器・包装材量は、1960年から2015年の間、185%の上昇を見せ、2700万トンから7800万トン近くに急増。また、EPAのデータによると、米国に於ける一般廃棄物のうち、容器・包装材が主要部を占めることが判明。2017年には、8010万トン相当の容器・包装材が排出された。これは一般廃棄物全体の29.9%にあたるという。
プラスチックごみを減らす具体的な取り組みとして、世界各地でプラスチック製ストロー廃止の動きが活発化している。2018年、米コーヒーチェーンのスターバックスは、2020年までに使い捨てストローの使用を全店舗で廃止すると発表。また、米ホテルチェーンのMarriott International は、2018年より、使い捨てのプラスチック削減のため、使い捨てストローやマドラーの廃止を実施。更に、同社は、客室のシャワー室に備え付けのシャンプー、コンディショナー、シャワージェルの使い捨てプラスチックボトルを大きなポンプ式に切り替えを始め、既に北米1000軒のホテルで導入を開始している。

■廃棄物問題に革新的なソリューションを生み出す企業

TerraCycle: 「捨てるという概念を捨てる」

https://www.terracycle.com/en-US/

https://www.terracycle.com/en-US/
TerraCycleは、ニュージャージー州トレントンでTom Szaky氏によって、「捨てるという概念を捨てる」をモットーに、2004年に設立された廃棄物問題に革新的なソリューションを生み出すスタートアップ企業。Szaky氏は、多くの廃棄物が海に廃棄され、そのうちの数%しかリサイクルが可能でないこと、それ以外のものは埋立地または焼却所に送られるというゴミ問題危機の現状から脱する為に、廃棄する以外の方法として、廃棄物を回収するプラットフォームTerraCycleを立ち上げた。
同社は、タバコの吸い殻や使用済みの紙おむつなど、従来リサイクルが難しいと言われてきた、ほぼ全ての廃棄物を回収し、リサイクルを行う事業を現在世界21カ国にて展開。また、環境意識の高い企業とパートナーシップを組み、リサイクルが難しいと言われている廃棄物を回収・再資源化し、パートナー企業の製品に利用する取り組みも行なっている。同企業の回収プラットフォームを利用してリサイクルされた多くのものはプラスチックのペレットへ姿を変え、新たな製品の原料として使われる。例えば、海洋プラスチックがシャンプーボトルに、歯ブラシなどのデンタル製品が子供達の遊び場に、そしてタバコの吸い殻が柵やベンチの原料に使用される。

TerraCycle Loop: 使い捨てパッケージ対策


https://www.cbsnews.com/news/terracycle-loop-zero-waste-products-procter-gamble-nestle-household-brands-expanding/
https://www.cnn.com/interactive/2019/01/business/loop-reusable-packaging-mission-ahead/index.html
“全世界の廃棄物問題は、我々が使い捨て容器や包装材に依存していることが根本的な原因だ”とSzaky氏は言う。その解決策として、TerraCycleは、世界初となる革新的な循環型e-commerceショッピングシステム「Loop」(https://loopstore.com/)を開発。Loopは、Protector & Gamble, Kroger, Nestlé, PepsiCo, Unilever他、大手消費材メーカーや小売店とパートナーシップを結び、従来使い捨てされていた梱包材、一般消費財の容器や食品の包装容器などを、繰り返し使える耐久性の高い容器に変えることで、商品の使用後、消費者から容器を回収し、洗浄・補充を経て、再利用する画期的なショッピングプラットフォーム。
Loopは、メーカー側、消費者側双方にとって有益なシステムだ。メーカーは再利用できるようなパッケージのリデザインをおこなうことで、より機能的で革新的なパッケージへと進化させることができ、また長期的な観点からもコスト削減が期待できるという。例えば、Loopで販売されているHäagen-Dazsの商品は、ステンレススティール製の容器に入っている。これはHäagen-Dazs社とLoopのR&Dチームが提携し、最新の冷却テクノロジーを駆使することで、ドライアイスや保冷剤を使用しなくても長時間保冷が可能な容器へと進化を遂げた。消費者にとっても、改良された商品、利便性の高いショッピングサービスが体験できるだけでなく、現在のライフスタイルを変えることなく、サステナブルな消費を実現することが可能になった。

Loop利用方法

利用方法は、①Loopのページに登録をし、Loopのショッピングサイト上で提携しているブランドの商品を注文。月額のメンバーシップ料金は発生せず、商品の容器を借りるために返金可能な一回限りの少額のデポジットを行う。②注文した商品は、従来の使い捨て段ボール、プラスチックやアイスパック等の包装材の代わりに、耐久性が高く、再利用可能な容器と共に、運送会社UPSとのパートナーシップのもとデザインされた不正開封を防ぐ封印を施されたLoop Toteに入れられて配達される。③使い終わった容器は、Loop Toteに入れて、UPSが提供する無料のピックアップサービスを予約するだけ。④回収された容器は、Loopの施設でFDA基準に基づき最先端のクリーニングシステムによって洗浄・消毒された後、中見を補充し再利用される。定期的に利用する商品の自動補充サービスもオプションとしてある。Loopは、現在米国10都市とパリでのローンチ及び、英国、カナダ、ドイツ、日本でのサービス拡大を目指している。

■NYにおける脱廃棄物・脱プラスチックの動き

米国ニューヨーク州では、2020年3月からプラスチック製のレジ袋の使用が禁止される。この流れを受けて脱廃棄物、脱プラスチックの流れをいち早く形にしたのが、無駄・ゴミ・浪費をなくすZero Waste且つ、ミニマルでサステナブルなライフスタイルを推奨するエコ雑貨ショップ「Package Free」とNY初のZero Wasteグロッサリーショップ「Precycle」だ。

Package Free:ゴミを出さない生活を提案するショップ

137 Grand St, Brooklyn, NY 11249
https://packagefreeshop.com/

https://packagefreeshop.com/
https://techcrunch.com/2019/09/26/package-free-picks-up-4-5-million-to-scale-sustainable-cpg-products/
Zero Waste(ゴミを出さない) ムーブメントへの認知を広げるために、Zero Wasteという概念をビジネス化させたのが、環境活動家、起業家そしてエコブロガーで究極のエコに拘るLauren SingerとZero Waste アパレルデザイナーDaniel Silverstein(http://zerowastedaniel.com/)の二人。2017年、ブルックリンのウィリアムズバーグ地区に、容器、包装材を一切使用しないパッケージフリーをポリシーに、ゴミを出さないライフスタイルを推奨するエコ雑貨ショップ「Package Free」のポップアップをオープン。現在同ロケーションは、ポップアップの成功を経て旗艦店となっている。

Package Free創立者: Lauren Singer

大学で環境学を専攻していたLaurenは、もともと環境への関心が高かったが、Zero Wasteを実際に実践し始めたのは2012年から。その背景には、カリフォルニア州を拠点にするBea Johnson(https://zerowastehome.com/)女史のごみを出さないシンプルな暮らしにインスパイア―されたことがきっかけだっだという。Johnson女史は、Refuse(拒る), Reduce(減らす), Reuse(再使用)Recycle(資源化), Rot(堆肥化)をモットーに、2008年からZero Waste 生活をはじめ、家族4人が年間に出すゴミの量がグラスジャー1瓶という驚異のZero Waste 生活を送っている。2012年からZero WasteをはじめたLaurenは、自身のブログ「Trash is for Tossers」(http://trashisfortossers.com/)をスタートし、彼女がどのようにZero Wasteライフスタイルを実践・達成しているかをブログで発信。彼女が過去5年の間に排出したゴミは、何と16ozのメイソンジャー1瓶という驚きのZero Waste生活を実践している。(平均的なアメリカ人が毎日排出するゴミの量は1.99kgだと言われている。)
Package Freeは、“世界のゴミを減らそう!”をスローガンに、プラスチックフリー、ゴミ環境にポジティブなインパクトを与えることをミッションに掲げたブランド、またゴミを出さずにすむアイテムや道具を一同にキュレートし、消費行動だけでなく、実際の生活でもゴミを出さないライフスタイルを提案している。同社は、2019年9月、Laurenのサステナビリティにフォーカスしたファイナンシャルモデルと、消費者のサステナブルな商品を求める需要の高まりが投資家を動かし、シード投資で450万ドルの資金を調達。その後、ニューヨーカーと世界中からNYを訪れる観光客にZero Waste ムーブメントを紹介できたらとの思いから、2店舗目となる新たなショップをマンハッタンのチェルシーマーケット内に11月にオープンした。Package Freeは、Zero Waste ムーヴメントに於いて、ほぼ無名のスタートアップ企業から主要企業へと目覚ましい成長を遂げている。

Precycle :NY市内初のZero Waste グロッサリーストア

50 Cypress Ave, Brooklyn, NY 11237
https://www.precyclenyc.com/
https://www.sustainthemag.com/stories/2019/2/19/precycle
ラトビア出身のKaterina Bogatirevaが、2018年にブルックリンのブッシュウィック地区にオープンした容器入り商品の販売をしないバルクフード(量り売り)のグロッサリーショップをオープン。幼少期の頃から、食品を無駄にしないという価値観を持ち、マーケットには常に自前の瓶を持参していたという。ある日、学校から帰宅した息子から、“ママ、プラスチックはどのくらい長くゴミ処理地に残るの?”という質問をされたことがきっかけになり、日々、家庭からでるゴミの量を減らしたいと長らく思っていたKaterinaは、食品を無駄にせずに、不必要な容器や包装材を使用しない量り売りのグロッサリーストアをオープンすることを決意。2018年、量り売りのグロッサリーショップPrecycleのオープンに至った。
同店では、地産の新鮮な青果、卵、牛乳、パスタ、小麦粉、豆、ナッツ、シリアル、スパイス、調味料、油、お茶から液体石鹸や歯ブラシといった生活用品まで展開。利用者は、自前の容器を持参、または店内に用意されている有料のリユーザブルの容器や袋を利用することができる。まず、入店時に、持参した容器の重さを店内の量りで計測し、容器に直接または、テープに重さを書いて貼る。次に欲しい量の食材を容器に詰め、会計時に、容器分の重さを引いた商品分の重さだけの金額を支払い、持参したバッグに入れて持ち帰るシステム。
Food Marketing Instituteによると、消費者が1ドル使う毎に、其の内の8セントがパッケージング代に支払われているという。Precycleのミッションは、使い捨てのパッケージングを削除し、通常パッケージングに支払われているお金をセーブし、消費者に還元したいと考えている。また、ゆくゆくは今後の収益の一部を地元の団体に寄付すること、そして今後はB Corp 認証企業を目指すという。






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