新しいビジネスカテゴリー”Shopper-Tainment”

コロナ禍で在宅期間が長引く中、若年層消費者の“今見て、今買う”という購買意欲を刺激するエンターテイメント性を強く打ち出した動画配信サービスで、“Shopping”と“Entertainment”をかけ合わせた“Shopper-Tainment”が次世代のECとして注目されている。セレブがお気に入りの商品を紹介する動画配信サービスやそのアルコール版など、今回は米国で新しいビジネスカテゴリーとして注目されているショッピングの新しい形“Shopper-Tainment”をレポートさせていただきます。


米国発、ライブストリームショッピングアプリ
ShopShopsの中国に於いて人気上昇中

https://shopshopslive.com/
米国発のオンラインライブコマースアプリShopShopsが中国の若年層消費者の間で大人気だという。ShopShopsは、リアルタイムのオンラインショッピング体験とライブストリームセールスイベントによって実店舗と中国の若年層消費者を繋ぐ革新的でインタラクティブなリテールプラットフォームだ。
ShopShopsは、2015年に北京出身のLiyia Wu氏が、中国の25-35歳の若年層消費者をターゲットに設立。Wu氏の米国と中国での卸ビジネスと小売りビジネスに於ける包括的な経験を融合し、彼女の描くビジョンをインターナショナルなアプリShopShopsに落とし込んだ。ShopShopsは現在、NY、北京、東京に拠点を構え、3.1Philip Lim、Rebecca Minkoff他、デザイナーズブランドやスタートアップブランドとパートナーシップを締結し、米国の各都市で店舗イベントを開催している。
ShopShopsのライブコマースの仕組みは、ShopShopsと契約しているホストが、パートナーブランドのショップ店内から、ショッピングのライブ配信を行い、実際に試着したり、視聴者の質問に答えながらリアルタイムで商品を紹介していく。視聴者は気にいった商品があればその場で購入ボタンを押し商品を購入する。ライブ配信後、ShopShopsが注文を纏めてブランド側に提出し、商品受領後、中国の購入者に発送するシステムだ。ブランドからShopShopsへのコミッションは約20%。ShopShopsのライブストリームの平均視聴者数は15,000人で平均売上はおおよそ$8,000(おおよそ84万円)。生放送のライブ感、タイムセールのような切迫感がありながらも、視聴者への対応、そして、スピーディーな受注システムが視聴者を惹きつけている。売上はまだ小さいが、今後如何に魅力的なブランドと提携を継続出来るかが成長の鍵となるかもしれない。

米国Shopper-Tainment事例 
NOW//with

https://nowwith.com/
NYを拠点に長年メディア企業でエグゼクティブを務めたAbra Potkin氏と、長年大企業に於けるアーティストやセレブとのパートナーシップ提携を手掛けるNicole Winnaman氏が設立した人気セレブがホストを務めるショッパブルビデオ(インターネットの動画を通じ商品等を販売するビデオコマースで、動画上で直接商品が購入できるサービスまたはプラットフォームの意) NOW//withが11月12日に再ローンチを予定。Potkin氏とWinnaman氏は、“新型コロナウィルス感染症のパンデミックを受けて、多くの店舗の閉鎖が与儀なくされ、全てがオンラインに移行する中、我々は、次世代のホームショッピングの姿であるShopper-TainmentとしてNOW//withの再構築に至った”と話す。
NOW//withの新しいサイトは、①多くのセレブを起用②NOW//with独自の開発技術によりビデオ上でより簡単に買い物ができるようになった③Facebook, InstagramやSnapchatを含むソーシャルメディアを跨ぐ幅広いディストリビューションが特徴だ。NOW//withでは、セレブがお気に入りの商品をビデオで紹介し、視聴者はそれに即アクセス、即購入することができるリアルなショッパブル(購入できる)経験を提供。
NOW//withは元々2018年に、全米最大の加入者数のキャリアVerizonとのエクスクルーシブなライセンスによってローンチされ、当初は女優で起業家でもあるNiclole Richieが自身のコレクションHoney Minx Collection(ラウンジウェア、ジュエリー、アクセサリーやビューティー商品をVerizonのYahoo Lifestyleチャンネルで販売していたが、Verizonとのライセンス契約が2019年3月に満了したことで、Potkin氏とWinnaman氏が新たに引き継いだ。両氏は、以前とは異なる全く新しいモデルを導入し、主演するセレブにはかつてのような高額な出演料を払うのではなく、レベニューシェアモデルによって、収益のおおよそ30%を支払うシステムに変更。
NOW//with は11月の再ローンチに向けて、2020年6月以来ベータテストを行っているが、ベータテスト期間中のある番組では1500万人以上の視聴者にリーチすることができ、おおよそ300万ドル(約3.1億円)の収益を獲得したという。コロナ禍で在宅期間が長引くなか、今後もNOW//withのshopper-tainmentビジネスモデルは大きな成長を見込んでおり、最近、同社は投資家から450万ドル(約4.7億円)の資金調達に成功した。

アルコールのストリーミングサブスクリプションビジネス 
The Spirits Network

https://store.spiritsnetwork.com/
The Sprits Networkは、プレミアムスピリッツ(アルコール度の高いウィスキー、バーボンやウォッカ等)愛好者向けに2019年9月より“ショッパブルストリーミングエンターテイメントチャンネル”をスタート。同チャンネルはメンバーシップ制で、(Explorer, Enthusiast, Connoisseur)の3段階のメンバーシップから成り立つ。Exploreは無料のサービスでコンテンツの視聴とコンテンツ上での商品の購入が可能。Enthusiastは、月額$99でコンテンツの視聴とコンテンツ上での商品の購入に加え、750mlのスピリッツとキュレートされたボックスが年に4回届けられる。Connoisseurは、月額$149で、コンテンツの視聴とコンテンツ上での商品の購入に加え、ウルトラプレミアムスピリッツ750mlとキュレートボックスが年に4回届けられ、送料無料やディスカウント等も適用される。
The Sprits Networkが配信するオリジナル番組では、特定の商品が紹介されると、スクリーン画面に”buy-bar”というポップアップが表示され、商品をセレクトすると、シームレスなワンクリック操作で購入ページに飛び、購入を済ませることが可能だ。The Sprits Networkは、オリジナルコンテンツにショッピングの場を統合することによって、まるでNetflixとQVCの間のような立ち位置を取っている。

オンラインビデオ統計

https://www.netsolutions.com/insights/shoppable-videos-the-untapped-gold-mine-in-ecommerce-retail/
・2021年、人々は毎日平均100分以上オンラインビデオの視聴に時間を費やすだろうと予測。48%の消費者は、自身の興味や好みを反映したビデオを視聴。
・2022年、インターネットトラフィックの全ての消費者の82%がビデオからの訪問者となる。55%の人々がビデオを毎日視聴し、78%の人々がビデオを毎週視聴するだろうという興味深いデータが出た。

主要エンターテイメント企業の今後の動向

・Amazon
https://www.amazon.com/b?ie=UTF8&node=20968995011
Amazonが旧式のショッピングTVを再活性化し、現代の消費者に向け転換させようとしている。
元スーパーモデルHeidi Klumと元パーソンズの教授でファッションコンサルタントTim Gunnがホストを務める新しいファッションショー番組”Making The Cut”がショッパブルTVとして拡充。”Making The Cut”は、各週、デザイナー達が競い合い勝者を決めるリアリティ番組。優勝したデザイナーのコレクションは番組終了後、即Amazon.comに於いて購入可能となり、更に、勝者に与えられる賞には、Amazon.comでエクスクルーシブなコレクションラインを販売する権利も含まれる。Amazonは、視聴者を”Making The Cut”の世界に引き込み、感情的に訴える物語を製作することに成功。視聴者にとって、番組から直接購入したアイテムはショップのラックから買った商品よりもより意味があり、物語は伝統的な広告よりもより説得力のある商品の販売方法だと言われている。Amazonは、”Making The Cut”で未来のパワフルなテクノロジーの在り方を提示している。

・YouTube
YouTubeは、EC戦略の拡大の一環として、現在ショッピング機能のテストを行っているという。まだ詳細は明らかになっていないが、YouTubeのコンテンツクリエイターがタグ付けしたアイテムをビデオ上で購入できるショッパブルエンターテイメントを画策しているようだ。YouTubeは、20億人以上のユーザーがプラットフォームに押し寄せ、年間150億ドル(約1.6兆円)の収益を上げているという。新型コロナウィルス感染症のパンデミックを迎える以前からYouTube人気は健在で、YouTubeプラットフォームのレベニューシェアリングモデルは新鮮なコンテンツと新しいクリエイターを一定に供給することを確実にしている。YouTubeが新しいショッピング機能を始動すれば、瞬く間にマンモスECチャンネルになるだろうと予測されている。

・Facebook x Topshop
https://intelligence.wundermanthompson.com/2012/10/shoppable-live-streams/
Topshopはショッパブルライブストリームの先駆けで、既に2012年からFacebookとパートナーシップを締結し、ランウェイショウのライブ放映を行い、視聴者は、ランウェイに登場したコレクションをソーシャルネットワーク上にシェアしたり、また放映中にモデルがランウェイで着用したアイテムを直接オーダーすることが可能だ。Topshopによると、200万人の視聴者がこのライブストリームを視聴し、ランウェイに登場した幾つかのアイテムはショーが終了する前に完売したという。
ECのビデオ広告で、モデルが着用しているアウトフィットを見て、“あ、この洋服、この靴今ほしいと!”と思ったことは誰しも経験したことがあるだろう。ビデオをその場で一時停止して商品をワンクリックで購入できたら!過去に我々が抱いていた願いが今現実になった。エンターテイメントとECの融合、インタラクティブな動画上で商品を購入することが可能なショッパブルビデオは、近年、最も革新的でインタラクティブなEC体験の一つに違いない。次はNetflix, Amazon Prime Video, Disney Plusがショッピングの場になる日は近いかもしれない。

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