米コロナ禍における食品購買行動の変化

パンデミックを受けて、消費者の食品購買行動に大きな変化がみられている。 コロナ前、米国では消費者の外食産業に費やす金額が、食品小売に費やす金額を追い越すのではないかと言われていたが、新型コロナウィルス感染症の拡大に伴い、外食産業が大打撃を受けたことで状況が逆転し、通常は8年間でみられる食品小売の売上成長がたった1カ月で見られた。 今回はコロナ禍に於ける消費者の意識と食品購買行動に於ける変化をレポートさせて頂きます。


食品産業協会FMI(https://www.fmi.org/our-research/research-reports/u-s-grocery-shopper-trends)が実施した2020 U.S. Grocery Shopper Trends Reportによると、2020年3月から4月に於いて、41%の消費者が自炊を始め、27%が毎食の献立を事前に考えるようになったと回答。更に、20%が今まで作ったことのない献立に積極的に挑戦するようになったと答え、36%がコロナ前に比べてより健康に気を使った食生活を送るようになったと回答を寄せた。
コロナ禍で、大半の時間を自宅で過ごすことを与儀なくされる中、人々はより複雑な料理に挑戦し、その一環でパン作りがブームとなったことで、小麦粉やイーストがスーパーの棚から一時的に消えたことは記憶に新しい。大手スーパーKroger社の理事長Rodney McMullen氏によると、このような先例のない状況下に於いて、パスタ、ビール、ワインやベーキング調理器の売上は30%増、イーストに限っては600%増という驚異的な売上を記録したと話す。更に、McMullen氏は、新型コロナウィルス感染症を起点にした人々のキッチンへの回帰は、消費者の食品購買スタイルや価値観を永久に変えたと話す。

■コロナ禍で加速する食料品のネット通販

世論調査及びコンサルティングを行う企業Gallup(https://www.gallup.com/home.aspx)が、米国の消費者を対象にした調査によると、1年前まで81%の消費者が、食料品のネット通販を利用していないと回答していたことが分かった。Brick Meets Click/Mercatus Grocery Survey(https://www.mercatus.com/newsroom/announcements/june-online-grocery-sales/)によると、米国の食料品のネット通販の売上は、2019年8月時点で全体売上の僅か3%に充たる12億ドル(約1,246億円)であったが、2020年4月には売上が40億ドル(約4153億円)に、6月には72億ドル(約7,475億円)に達し、おおよそ4,560万軒の家庭がデリバリーとピックアップサービスを利用していることが調査で明らかになった。新型コロナウィルス感染症の感染拡大により、多くの消費者が感染を懸念し、従来の店舗での購入からネットでの購入に切り替えた事もあり、食料品のネット通販の急速な拡大が進んだことが推測される。

■食料品のネット通販の顧客満足度は
Amazon Primeが優勢

数多とある食料品のネット販売の中でWholefoodsを傘下に収めているAmazonのサブスクリプションサービスAmazon Primeのピックアップやデリバリーの顧客満足度が一番高いことが調査によって分かった。2,000人の消費者(オンラインと実店舗訪問者)を対象に、昨年4月から5月に実施された顧客満足度調査によると、同社は5段階のうち4.47を獲得したという。
Amazon Primeに対抗する流れから、Walmartは、新しいサブスクリプションサービスWalmart+(https://www.walmart.com/plus)をスタート。月間費用$12.95または、年間費用$98で、ミニマムオーダー無し、160,000余りのオンライン商品の同日配送サービスを新たに提供し、消費者の時間的及び金銭的な節約の手助けを狙う。また、サンフランシスコを拠点に、北米5,500の都市でオンデマンドの食品配送サービスを展開するECプラットフォームInstacart(https://www.instacart.com/)も、コロナパンデミック禍で、食料品のネット通販とピックアップサービスの急激な需要の増加を受け、全米で30万人を新たに雇用。Instacartは、Albertsons, Aldi, Costco, CVS, Kroger, Loblaw, Publix, Sam’s Club, SproutsやWegmansなど、他スーパーやドラッグストア等北米の約3万店舗と提携している。更に、2012年に設立された食料品のネット販売サービスRosie(https://www.rosieapp.com/)も同様に需要を拡大している。消費者が地元のお気に入りのショップからオンラインでオーダーした商品の同日配送及び店舗でのピックアップが可能だ。

■初のオンラインオンリーストア“dark store”
をオープンしたWhole Foods Market

Whole Foods Marketは、オンラインで注文した商品の受取りやデリバリーに特化した“dark store”をブルックリンにオープンした。政府による自宅待機命令やソーシャルディスタンシングにより、店内の密集を回避するために入場制限が課される中で、幾つかのスーパーは、実店舗を発送やピックアップオーダーのみに対応する物流センター“ダークストア“(店内は実店舗と同様に商品が陳列されているが、消費者が直接店内に足を運ぶことがないことからダークストアと呼ばれている)に転換する動きが見られる。今後、抗ウィルス薬やワクチンが浸透し始めても、消費者は引き続きデジタルツールを上手に活用し、シームレスに生活に溶け込ませていくだろうと専門家は話す。

■ローカル食材の需要増加を受け、
農家もオンラインに販路を移行

https://www.barn2door.com/
コロナ禍に於いて、不安定な供給チェーン、消費者の健康や安全への懸念、地元コミュニティへの感謝とサポートの高まりから地産地消の動きが益々活発になっている。地産食材は瞬く間に売り切れ、コミュニティが農業を支える地域支援型農業のサブスクリプションサービスまで存在するようだ。
シアトルを拠点に、農家からの直送ECプラットフォームBarn 2 Doorも地産食材への需要増加に伴い成長を遂げているスタートアップだ。Barn 2 Doorは、農家が仲介業者を介することなく、直接的に収益を受け取れるシステムがあるべきだというアイデアの元、地産食品の購買に興味のある消費者と農家を繋ぐことをミッションに、食とテクノロジー業界で20年以上のキャリアを培い、包括的な知識と経験を持つJanelle Maiocco氏によって設立されたスタートアップ。Barn2Doorは、米国内の何千もの農家を対象に、売上、在庫、ロジスティックス他を管理する独自のECソフトウェア経由で、農家が消費者に直接食品を販売できるシステムを提供。同サービスを利用し始めた農家によると、注文が以前に比べて10倍以上増加していると話す。Barn2Doorは、直近で投資家から600万ドル(約6.2億円)の資金調達を得て、累計で1,160万ドル(約12億円)の投資資金を得ることに成功している。

■レストランもオンラインで
オリジナル食品販売をスタート

新型コロナウィルスの感染拡大で、飲食業界も時短営業や営業自粛の煽りで大打撃を受けている。
NYでは屋内飲食が再び禁止となった今、この難局を乗り切る為に、レストランではメニューの他に食料品やオリジナルの調味料等の販売をスタート。NY を拠点にするセレブシェフで、21世紀で最も影響を与えた人物の一人に選ばれたDavid Chang氏が手掛けるレストランMomofuku(https://shop.momofuku.com/#)では、Chang氏とチームが10年の年月をかけて開発したというレストランオリジナルの調味料の販売に乗り出した。屋内飲食が難しい昨今、自宅でもMomofukuの味を再現し楽しんでもらうための試みで、オリジナル調味料を使用したレシピはオンラインで公開している。また、NY市内を拠点に、マイクログリーンや食用花を栽培している水耕農場Farm One(https://farm.one/)も、従来のレストラン向け卸事業から一部BtoC型に展開し、一般消費者にサブスクリプションサービスを開始した。
今後もオンラインと店舗の垣根を変えるシームレスな経験の重要性が増していくだろう。


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