「唐揚げとバーガー」。こう聞くと、なんだか、ハンバーガーチェーンのセットメニューのようだが、少し違う。新型コロナウイルス感染拡大に伴う、営業時間短縮や酒類提供制限で打撃を受けている外食業界大手が、こぞって打ち出している新戦略だ。
店内での飲食が難しくなっているため、外食業界ではデリバリーとテイクアウトに光明を見いだそうとしている。デリバリーとテイクアウトに適した食材、その結論が、唐揚げとバーガーなのである。座席を多く持つ飲食店と比べて、デリバリーとテイクアウトをメインに据えた、唐揚げ専門店やハンバーガーショップは、出店コストや人件費も少なくて済むというメリットもある。
また、唐揚げやハンバーガーは、価格帯が低く、日常性が高い。つまり、食べる頻度も高いため、客数やリピートも期待できるという点も挙げられる。多くの企業がこの2つに参入しているため、今後は差別化競争に突入していくだろう。それと同時に、数多くの企業が参入しているからこそ、話題を提供できているとも言える。
ラーメンやうどんも、日常性という点では唐揚げやハンバーガーに並ぶが、デリバリーやテイクアウトに向いていない。しかし、うどんに関しては、丸亀製麺がテイクアウト用に「丸亀うどん弁当」を発売。わずか4カ月で900万食を突破するというヒット商品になった。唐揚げやバーガーに参入せずに、自社で独自の答えをみつけた格好だ。
同じく、苦境に喘ぐアパレル業界。ファッションが売れないのは、不要不急だからだという声が多く聞かれる。外食も考えてみれば、不要不急なのは共通。材料を買って、家で調理するか、スーパーで惣菜を買えばいいのだから、代替手段だってある。しかも、飲食業は感染源になるからという状況で、なるべく営業するなと、追い込まれている状況である点を考慮すれば、外食の方がアゲインストだとも言える。
不要不急だから服が売れないのではなく、本当に必要だと感じるものを提供できていない、もしくは、心を動かされるようなもの、話題になるようなものを提供できていないと考えるべきなのかもしれない。すぐに答えが見つかるとは限らないが、アパレル業界でも、唐揚げとバーガーを探し求める必要がある。



著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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