売らない百貨店・売られる百貨店

ここのところ、立て続けに百貨店各社が、“売らない店”の展開を開始している。いわゆるOMO型店舗とか、ショールーミングストアなどと言われる店舗である。渋谷西武では、2021年9月から「CHOOSEBASE SHIBUYA」を、大丸東京店では「明日見世」が10月から展開されている。さらには、2022年4月には新宿高島屋でショールーミング型店舗が開設されると発表された。
いずれも、ネットを中心とするD2Cブランドを中心に品揃えを行い、店頭ではサンプルのみが展示され、ネットに誘導する仕組み。決済もネット上で行われる。百貨店は店頭での在庫を持たずに商品を販売することができ、D2Cブランドは百貨店の集客力を生かして、幅広いお客様に商品が紹介できる。高島屋が予定している店では、AIカメラなどの分析データや、販売員からの情報もブランド側にマーケティングデータとして提供される。
D2Cブランドは、SNSを中心にファンを育て、その力で売るということがビジネスモデル担っているケースが多い。しかし、世界観を伝えるには、やはり、リアルな空間の力が必要と考えるブランドも多い。それによって、ポップアップストアやリアル店舗を持つケースが増えている。このニーズを百貨店が商機と捉えて、ショールーミング店舗を構えている。ここで人気が出たブランドに関しては、百貨店でリアル店舗を常設することにもつながる。“売らない店”を発端として、“売れる店”に発展させることも可能だ。
D2Cブランド以外にも、アマゾンなどネットを中心に事業を展開してきた企業が、リアル店舗に再注目する一方で、セブン&アイ・ホールディングスが、そごう・西武を売却する方針を決めた。
新しい事業価値を見出すための“売らない店”・“売れる店”ができる一方で、事業価値が無いと“売られる店”も、増えていくかもしれない。


著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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