原材料費や燃料などの高騰に加え、円安という状況が襲いかかっている。身近なあらゆる製品が値上がりをしている。
消費者は、自分の生活を守るべく、できるだけ安価な商品、できるだけコスパのいい商品、センス、デザイン、品質が妥協できる範囲で安い商品を買おうとする。そうなると、消費者は必然的に、いわゆる“プチプラ”とか“ワンコイン”とか“均一価格ショップ”に目が行くわけである。「3COINS+plus」やダイソーの旗艦店が、銀座に出店して話題になったように、これらの業態への期待は一層高まりを見せている。
しかし、一方でこれらの“プライス”を切り口にしている店も、原材料費高騰や円安が直撃している当事者の一つである。値上げに踏み切るのか、価格を維持するために内容を精査するのか、あるいは価格維持のために質や量を下げるのかという、判断を迫られている。
“一皿100円”を謳っていた回転寿司チェーンなどは、値上げという判断が客足を遠のかせる結果に結びついているし、価格を維持するために内容量を減らした食品メーカーなどは、“ステルス値上げ”などと批判を浴びるケースが目立つ。
“100円均一”の業態は、消費税のことを考えれば、支払う金額は100円でないことを、消費者はもう既に理解している。これらの“均一価格ショップ”の中にも、売価が100円を超える商品も展開されているし、“300円”を謳う多くの店は、1,000円を超える商品もかなり展開されており、300円で売られている商品ばかりではない。回転寿司チェーンだって、高額の皿も展開されている。
物価高騰で期待されている業態だけに、回転寿司チェーンのように“一斉値上げ”的な方法になってしまうと、消費者は、さも裏切られたかのような錯覚を抱く。やり方次第では、これまで培ってきたブランドに対するロイヤルティさえも失いかねない。安さが正義となってしまっている日本においては、価格の改定は、ブランド価値を大きく左右する大きなジレンマとなっている。


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2023年春より、多様なステークホルダーからの参加者が連携し、 「未来に向けた豊かさの持続」 のためのエコシステムを作り上げる、会員制の共創プラットフォームを立ち上げます。詳細情報はifsの本HP上で公開いたしますので、ぜひご期待ください。

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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