小売業、3つの世代交代【ifsマーケター連載:太田の目】

繊維月報の連載など、外部への執筆・講演でもおなじみの ifs 名物プランナー太田敏宏による、時代を独自に読み解くコラム「太田の目」。

今回のテーマは小売業における「経営者」・「ビジネスモデル」・「消費者」の世代交代について。
この三者を軸に、新しい時代への切り替わりを紐解きます。

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カリスマ的な創業者が、エポックメイキングな事業を起こし、市場をディスラプト(創造的破壊)していく。
小売業は常にこの繰り返しで新陳代謝が行われてきた。創業者が高齢化し、神通力が鈍ったり、成功モデルを信じすぎたりすることは、成長を阻害する。
この際に、経営者の世代交代がうまく行かないと、他企業から次の“創造主”が現れ、市場を奪っていく。
高度成長期に伸びた業態は、低成長期への対応ができずに、その役割を終えつつある企業も多い。今起きつつあるのは、1990年代の低成長期に新業態で成功した業態が、経営者の世代交代期を迎えており、これを乗り切れるかが課題となっているように思える。

経営者だけでなく、ビジネスモデルも同時に世代交代が必要になっている。
商店街の個店中心の時代から、大型店やチェーン店の時代を経て、今はDX化の時代、もしくは再び、魅力ある個店の時代になっている。
EC化の時代には、店舗が大きいことや、たくさんあることは大きな意味をなさない。店舗を介さずに商品が手に入るのが当たり前なのだから、店舗の意味を買える必然性が生じる。
例えば、一つの方向性として、リアル店舗が生き残るためには、そこでしか買えないものや、味わえない店が選ばれるようになると言われている。
そこでしか体験できない店がチェーン化していくのは、理論上おかしい。
多店舗化・大型化で伸ばすビジネスモデルは、世代交代が必要なのだ。

3つ目は消費者の世代交代、つまり、よく言われるZ世代対応だ。
日本においては、総人口の15%弱しかおらず、消費意欲もさほど高いとは思えないため、「Z世代って、実際どうなんすかねえ?」とよく聞かれる。
ところが、世界では2020年時点で世界人口の約3分の1がZ世代であり、ミレニアル世代を上回っており、今後はZ世代が消費の主役になると言われているのだ。人口減少が進み、日本市場だけでは売上が作れないとすると、世界のZ世代に向けたコンテンツや商品、業態を作り出すのが必須になる。

”新しい時代の消費者”であるZ世代に向けた新機軸の商品やサービスが、世界から押し寄せてくると仮定するならば、それに勝つためには、こちらも”新しい時代のビジネスモデル”を打ち出すほかない。このことを判断できる”新しい時代の経営者”への世代交代が求められている。

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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