単なるはやりで終わらない志向への影響。若者女子に人気の韓国

伊藤忠ファッションシステムでは、これまでの世代論の一環として、現在の17 ~ 20歳にあたるLINE下世代〈仮〉(1997年~ 2000年生まれ/現17 ~ 20歳)の消費行動分析を行っている。そこで浮かび上がってきたのは、若者層を中心に近年活発な「韓国ブーム」であること。ファッションビルなどにも韓国のファッション、メイクブランドが次々に登場している。今回はその実態がうかがえるオープンデータと、韓国に魅力を感じこれまでに4 ~ 5回旅行している20代女性4人へのインタビューから、今なぜ若者が韓国に魅力を感じているのかを探った結果、若者の韓国との今後の関わり方が見えてきた。


10 代・20代女性:「ファッションで参考にしている国」 1位は韓国

トレンドマーケティングのFRIL lab(フリルラボ)の調査(データ1)によると、20代未満、20 ~ 24歳、25 ~ 29歳女性が「ファッションで参考にしている国」は、1位韓国、2位アメリカという結果だった。現代の若者は西洋的なスタイルよりも、身近なお隣の国・韓国をお手本にしていることが見て取れる。一方、30代プリクラ上世代(1977 ~ 81年生まれ/現36 ~ 40歳)・プリクラ下世代(1982~ 86 年生まれ/現31 ~ 35 歳)の女性では1位アメリカが断トツでトップ。高校生時代にギャル文化を創り出し、西海岸カルチャーなど、ハリウッドセレブのアメリカンカジュアルスタイルに影響を受けた世代であり、今もその刷り込みは顕在だ。また、西洋文化に憧れ、パリやニューヨークなど欧米からのコレクショントレンドが一世を風靡していた時代に20 代であった今の50 代ハナコ世代(1959年~ 64年生まれ/現53 ~ 58歳)の女性では、フランスが1位に挙がっている。ファッションで参考にしている国は、各世代が根底に持つ憧れ像によって変化してきている様子が顕著に現れている。

データ1:海外ファッションで最も参考にしている国
データ1:海外ファッションで最も参考にしている国出典:FRIL Lab

同じアジア人として感じる 「親近感」 と「 エッジの効いたデザイン」がポイント

SNSを通じ、国もブランドも情報がすべてフラットに手元に並ぶ中で、なぜ今の若者層は「韓国」に注目しているのだろうか。「韓国人は骨格や顔のつくりが自分たちと似ているので、メイクなど真似しやすい」(26 歳女性・会社員)、「欧米のスタイルはかっこいいとは思うが、非現実的だと感じてしまう」(23歳女性・会社員)など、距離的にも文化的にも遠い欧米より、韓国を自分たちとの共通点を感じられる身近な国として捉えていることが分かる。実際に「LINE」や自撮りアプリ「SNOW」など日本の若者が普段使用するアプリも韓国が開発したように、韓国人はSNSの使い方や見せ方に長けており、オンライン上での情報発信が多いのも特徴。「おしゃれなカフェやオススメのコスメなど、Instagramで現地の女の子が発信している情報が豊富」(21歳女性・大学生)など、一般層レベルからSNSを通じて最新のトレンドが積極的に発信されており、リアルタイムで情報を受け取ることができるのも韓国を身近に感じられる理由と言えるのかもしれない。「日本のファッションは同じようなものが多いが、韓国ファッションはデザインがかわいいのに、値段が安くお得」(21 歳女性・大学生)など、色使いやディテール面など、日本では見られない独自のエッジの効いたデザイン性があると若者の目に映っているようだ。また凝ったデザインのトップスが約2,000円~、ボトムスが約3,000円~というように、価格帯も比較的買い求めやすいことから、流行に敏感な20 代前後の女子にとって、韓国ファッションは手が届く範囲で十二分におしゃれが楽しめる存在となっている。

「#(ハッシュタグ)」から始まる情報コミュニケーション

現在の若者は、雑誌やテレビなどのマスメディアからより、圧倒的にインターネットから日々の情報を受け取る世代。中でも、SNSを駆使して最もストレスなく情報をキャッチするいわゆるデジタル・ネイティブ世代に当たる20 代前半の女子は「#(ハッシュタグ)」を日々のコミュニケーションに活用。特定のキーワードをタグ付けすることによって、同じ趣味嗜好を持ったコミュニティに簡単に参加できたり、自分好みの情報に最短でたどり着くことができる。ハッシュタグという共通カテゴリ下に含まれる不特定多数の投稿から、モノ・コトのイメージを膨らませていくという思考回路だ。例えば、20 代前半の女性に韓国のイメージを聞くと、「チーズタッカルビ」「韓国コスメ」「TWICE」などSNSやメディアで頻繁に見かけるはやりのワードがカテゴリやジャンルに関係なく列挙され、情報の受け取り方自体が個々に切り分けられた拡散ワードをベースにしていることがうかがえた。韓国には、歴史的背景から日本に対してポジティブではない印象をもつ世代も存在するが、日本の若年層は、韓国に対して、政治・経済からは独立した好ましい拡散ワードとして、ポジティブに捉える傾向がありそうだ。

“お手軽な異国感”が魅力

JTB総合研究所によると、全体的に韓国や台湾が近年日本人に人気で、特に若い世代ほど訪問しやすい近距離のアジア圏を選ぶ傾向が見られる。データ2は「学生時代に行った海外旅行先」をリサーチしたもの。18~ 29歳男女で韓国、台湾、アメリカがトップ3にランクインした。中でも18 ~ 29歳女性では50%近くが韓国を挙げるなど、女性からの人気は圧倒的。前述の韓国の魅力にもあるように、美容やファッションなど、女性が好むコンテンツが楽しめることに加え、飛行機で2 ~ 3時間という手軽さと工夫を凝らせば国内旅行より安価で抑えられるコスト感、また治安的にも比較的安定していることが人気を後押ししているようだ。

一方、50 代ハナコ世代が若かりし時期はバブル景気全盛期で、豊かな資金力を背景に海外旅行も多方面へ出掛けていたことが数値からも分かる。注目すべきは、学生時代の旅行先として全世代で人気のハワイやグアムに続いて、他の多くの世代では見られなかったフランス、イタリア、イギリスなど欧州各国が浮上していること。あらためてデータ1の「ファッションで参考にしている国」を見るとフランスがトップに挙がっていることから、旅行先を選ぶ際に“ファッション”的な魅力もひとつの基準になっていたといえそうだ。

データ2: 学生時代に行った海外旅行先 (※トップ10)データ2: 学生時代に行った海外旅行先 (※トップ10)出典:JTB総合研究所『海外観光旅行の現状2017』(インターネット調査/ 2016年1月以降にビジネス旅行を除く海外観光旅行をした 18~79歳の男女2,060名/調査期間2017年5月8日~5月15日)

若者層にとって韓国は、親しみのあるお隣の国であるだけでなく、「いき過ぎない異国感」を感じられる場所であると言えそうだ。日本ではあまり見かけない大胆で斬新なデサイン、本場の韓国料理、ハングル文字など、海外旅行感を手軽に感じられるポイントが随所にある。自らの生活と極端に異なる場所でストレスを感じるものよりも、ある程度想像がつく範囲内で最大限に楽しみたいという、現代の若者の消費価値観が現れている。

2005年ごろの韓国ブームなど、時代の変化とともにさまざまな形で注目されてきた韓国が、現在では日本人の食や美などの選択肢の一つとしてライフスタイルに取り込まれていることがわかる。上の世代でも、学生時代に旅行した国が今もファッションを参考にする国として挙がることから、今の若者にとって韓国コンテンツは今後の志向にも影響し続けると推察される。

20代前半女性インタビュー「韓国関連の消費について」

①これまでの韓国旅行回数
②1回の韓国旅行の支出額
③韓国に興味を持った年齢/きっかけ
1.23 歳女性/会社員
①5回
②5 ~ 6万円*
③16歳/東方神起が好きで韓国アイドルにハマった
20代前半女性インタビュー「韓国関連の消費について」1
2.21歳女性/大学生
①5回
②4 ~ 5万円*
③19歳/大学の周りの友人に誘われて韓国旅行に行ったこと
20代前半女性インタビュー「韓国関連の消費について」2
(* 航空券、ホテル、飲食代、買い物など含む)

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