ファッションを再定義する:ifs fashion insight開催レポート:第2回:いまどき女子にとってのファッションを再定義する【Part①】

伊藤忠ファッションシステム株式会社(以下、ifs)では、次代に向けてのファッションの意味・役割を再定義し、新たなビジネスの視点を提案するコアプロジェクトとして、今年3月にトークセッションシリーズ「ifs fashion insight」を始動した。このプロジェクトでは、今の時代を敏感に感じとるゲストたちによるトークをもとに、時代の流れの中でのファッションの変化・変質を明らかにするとともに、次代のファッション×ビジネス視点について検討を重ねることを目指している。vol.2では10代~20代の女性に支持されるファッション誌『mini』編集長・見澤夢美氏、『ローリエプレス』編集長・遠藤優華子氏をゲストに迎え、“いまどき女子”のリアルなおしゃれ意識・感覚を紐解きながら、彼女たちとの関係作りのヒントを探った。


■実施概要
2018年6月27日 18:30~20:30
実施場所:DEJIMA

■トークセッション出席者
株式会社宝島社 「mini」編集長 見澤夢美氏
株式会社エキサイト ニュースメディア部 「ローリエプレス」編集長 遠藤優華子氏
伊藤忠ファッションシステム株式会社 ナレッジ開発室 中村ゆい

■ifs fashion insightオフィシャルモデレーター
稲着達也氏(アソビシステム株式会社CCO兼エグゼクティブプロデューサー)

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 ifsナレッジ開発室 中村ゆい(以下、中村):今回は、SNS世代の「いまどき女子」をテーマに、彼女たちにとってのファッションやコミュニケーションについて考えたいと思います。
情報やコミュニケーションの在り方が変化したことで、自分自身の価値観を発信したり自己表現をしたりする場が、かつてとは大きく異なります。「いまどき女子」たちは、ほぼ全員が「LINE」を使用しており、「YouTube」「Twitter」の使用経験も豊かです。2000年代くらいまでは、若者の自己表現の場は街・ストリートだったのですが、今はネットに場を移しています。

自己表現はネット上での物理的な見た目画像などのイメージが中心となってきています。最近の調査で彼女たちに「ファッションは何ですか」と聞いたところ、30代以上は「自分らしさや自分の内面を表現するもの」、20代では「こうなりたいというイメージに合わせて、つくるもの」という回答をしています。つまり、30代と20代という近しい世代間でも洋服に対する捉え方が大きく異なるというわけです。SNS世代にとってのファッションについて、メディアの方からリアルな話を伺えればと思っています。

ifs fashion insight オフィシャルモデレーター稲着達也氏(以下、稲着):モデレーターの稲着です。アソビシステムは、「原宿系カルチャーを世界へ」をキーワードに、さまざまなエンタメコンテンツを提供しており、ファッション&カルチャー雑誌の刊行やWebマガジン「HARAJUKU KAWAii STYLE」の運営、さらに、プロダクション事業など多岐に渡る事業展開をしています。本日は、SNS世代特有のファッションというのは何かを再定義することを試みたいと思います。

株式会社宝島社 「mini」編集長 見澤夢美氏(以下、見澤):宝島社は、おかげさまで8年連続ファッション雑誌実売No.1となりました。ファッション誌市場の約3割のシェアがあり、現在、12誌発行しています。『mini』創刊の経緯は、もともと雑誌『宝島』のスピンオフでファッション誌『CUTiE』が発刊し、その後、『CUTiE』の男性版として『smart』が、さらに『smart』みたいなファッションをしている女の子が裏原にたくさんいるというところから『smart』のガールフレンド版として『mini』が誕生しました。
10代~20代は雑誌を買わない世代といわれますが、その中では『mini』は伸びていて、月間15万部を超える平均実売部数です。

表紙では、ストリート感のない女優さんにあえて『mini』っぽいストリートな格好をしてもらうことにこだわっていて、女優さんの個性を出すというよりは『mini』の世界に染まっていただくというのを大事にして絵づくりをしています。たとえば、女優の石原さとみさんにはストリートのイメージはあまりないと思うのですが、そういう方にも表紙に起用して『mini』の世界観で表現するというのが持ち味です。付録では、コスメが非常に反響も良くて完売することも多いコンテンツになっています。

エキサイト株式会社 「ローリエプレス」編集長 遠藤優華子氏(以下、遠藤):『ローリエプレス』は、ポータルサイトのエキサイトが運営する女性向けメディアで、約2年前にアプリが立ち上がりました。それ以前の『ローリエ』から『ローリエプレス』へと名前を変えてリニューアルしました。キュレーションメディアが多いなか、『ローリエプレス』は立ち上げ時からずっとオリジナルメディアとして運営しており、かわいいものが好きな女子に向けて情報を発信しています。メディアのポリシーとしては、「かわいくなるための一歩をお届けしたい」というコンセプトを持っていて、おかげさまで、昨年はApp Store総合ランキングで1位を獲得しました。ユーザーは、都市部に暮らす女子が多く、ほとんどが週3回以上積極的にアプリを利用してくれています。年齢層は90%が18~24歳のインスタが好きな情報感度の高い女の子たちで、ユーザーアンケートによると53%が「インスタグラマーになりたい」と答えているのが特徴的だと思っています。なりたい顔ランキングでは、1位石原さとみさん、2位小嶋陽菜さんなどテレビで活躍されている芸能人に加えて、YoutuberやInstagramで活躍されているモデルがランクインしているのが、いまどきの女子っぽいですね。

この10年のファッションの変化

稲着:雑誌は長く積み重ねていくことでとアーカイブが残っていきますね。『mini』の創刊当時と現在を比較すると、この10年間でファッションはどのように変化していますか。

見澤:2008年の『mini』の表紙を見ると、現在と比較するとカッチリとした印象です。中面はカタログ的な記事が多く、スナップページが強かったですね。タレントや女優さんの衣装よりも、親しみのある子のファッションの方が真似できそうという理由で人気がありました。現在では、雑誌よりもInstagramなどSNSで検索したり、ZOZOTOWNでいくらでも見られるようになったので、雑誌としてはSNSで見ることのできないコンテンツをいかに届けるかに注力するようになりました。また、ここ数年はコスメ需要が高まっているので、巻頭ページでも注目度の高いページでメイク特集をするようになりました。

稲着:「いまどき女子」が関心を持っていることに、メイクの存在感が増してきています。この10年間で服を購入しなくなった一方で、メイクに費やす時間やお金は増加しているようですが、『ローリエプレス』ではメイク記事への反応はいかがですか。

遠藤:コスメ系記事は、すごく人気がありますね。『ローリエプレス』の中でも美容系コンテンツの人気は強いです。『mini』と少し近いと思ったのですが、『ローリエプレス』はすごく突飛なアレンジやハイレベルなコンテンツを提供するというよりも、どちらかというと教科書チックで基本に忠実な内容を展開することがすごく多いです。夏だからといってカラーメイクを前面に出すよりも、そのカラーメイクをいかに自然に普段メイクとして取り入れるかという記事の方が読まれやすいですし、カラコンも選び方から教えてあげる方が人気です。

中村:遠藤さんご自身としては、今のファッションのムードについて、どのように感じていますか?

遠藤:イメージを言語化するのは難しいのですが、たとえば『mini』の表紙を見比べると10年前の表紙は、パっと見て「昔っぽい」と思いました。一方で、今の表紙は、ヘルシーさがあって、「今っぽい」ですね。昔の表紙はたくさん色が入っていて、文字もドーンと大きめだったけど、最近の表紙はそれらを厳選した中で、文字量は多くても余白があります。そこがすごく「今っぽい」と感じます。

稲着:『mini』の表紙を見比べただけでも、当時と今の時代の気分というのが分かる感じがあります。やはり、「SNSの登場」というのがこの10年では一番大きいですよね。
中村:そうですね。ここでは「ファッション」を冒頭で話した広義の意味というよりは、「ファッション=服」という意味で使っています。以前は自分を表現するためには「服」が一番重要でしたが、弊社の調査結果でも、いまはメイクや自身のケアなどへの関心がますます高くなっています。だからといって、服がおろそかになったわけではなく、むしろ全体的な感度がすごくアップしています。おしゃれのスキルもメイクのスキルも全部が昔よりも感度が高いです。

見澤:ファッションも、ストリートではブランドというよりも音楽とすごく密接になってきています。『mini』ではLDHやK-POPを取り上げたりしています。そうした音楽の嗜好も含めて自分がこういう風に見られたい、こういう人間ですと言うのを語るのがファッションです。とはいえ、『mini』は、ページ数が少なく弊社では一番薄い雑誌です。その中にギュっと情報を詰め込んでいるので、編集面ではファッションとビューティーにプラスしてLDHとK-POPという感じですね。

高まるボディケアへの関心

稲着:10年前にボディクリームやボディオイルを若い人が使っているイメージはあまりなかったです。『ローリエプレス』の読者層は10代~20代ですがやはりボディケアへの関心は高いですか。

遠藤:とても読まれますし、最近は毛穴や皮脂のテカリなど、夏ならではのスキンケアの記事がすごいクリップ数です。アプリで記事を読むと「お気に入り」ができる仕様になっていて、それがPV以外の部分でどの記事が人気かという指標としています。とくに、クリップ数が伸びるのは後で読み返したくなるような記事が多いですね。

中村:以前は、ボディケアを「して当たり前」のような空気感はなかったですね。メイクして盛ることには意識があったけど、その後のケアまでは及ばなくてみたいな。

遠藤:『mini』の表紙を見ていて、10年前の「盛る」文化から自然さを重んじるようになってきたという流れはあるかなと思いました。メイクアップも大事だけど、普段のケアも大事。「盛る」の意味もちょっと変わってきていて、重ねて盛るのではなくて、そもそものベースの質を上げていってナチュラルにきれい、素っぽい感じが結構受けているように感じます。

稲着:リップやチークは結構派手めになってきた印象がありますが、肌の色はナチュラルに見せるのが今風ですよね。

見澤:すっぴん肌風、透け肌という企画が人気です。3.11の震災をきっかけに何となく読者の感じが変わってきました。モノではなくて、ボディケアやスキンケアなど自分に投資する、自分をみがくことにお金をかけるという意識がちょっと芽生えたかなという気がしています。なんでも持っていればいいわけではないという風潮がちょっと出てきたかなと感じました。
また、『mini』では「透け肌ベースメイクマニュアル」がとても人気です。 カラーメイク特集と異なり地味な誌面になりがちですが、とにかく初心者というのを意識して細かく解説するような企画が人気ランキングで上位だったりします。

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