デジタルネイティブ世代のギフト消費 ネット時代、ギフトはリアルなシーンを盛り上げるツール役を担う

■消費に堅実な生活者貯蓄に高い関心


入り口として、2019 年3 月に実施した「生活満足度を上げるために行っていること」(調査対象: 首都圏在住/ 18 - 72歳の男女、計 2,060 名)の調査結果を紹介する。全体のトップに「貯蓄をする」が挙がり、まずは生活者の消費への堅実度が顕著に表れた結果となった。中でもライフステージの変わり目である30 歳前後のいわゆるアラサー世代で「貯蓄をする」の数値が高く、生活インフラ整備や将来に備えた安心材料として、経済的安定が満足度に大きく作用する様子がうかがえる。2 位は「旅行に行く」だが、世代間の格差が大きく、年齢が上がるのに比例して数値が高くなる。「人との関わり」にフォーカスしてみると、全体の3位に「家族と過ごす時間を増やす」が挙がり、30 代前後のハナコジュニア世代とプリクラ下世代で約50%、プリクラ上世代以上でも約40%が反応するなど、10 代後半~ 20 代前半の25 ~ 30%に比べ高い数値を示している。

一方、「友人と過ごす時間を増やす」は全体で14 位だが、LINE下世代とハナコジュニア世代、団塊世代がそれぞれ約30%と高く、それ以外の世代では20%を切っていることから、ライフステージによって関わる人の優先順位が入れ替わることが見て取れる。ただし、「一人の時間を増やす」も全体の5 位に挙がり、10代後半で50%、他世代でもほぼ30%が反応していることから、生活満足度を上げるためには、「一人の時間」をキープすることもまた重要なこととして意識されている。

■デジタルネイティブはリアルに会う場面を重視

次に、「人間関係を円滑にするためにしていること~家族の場合」(データ1)、「人間関係を円滑にするためにしていること~友人・知人の場合」(データ2)を見るため、さまざまな角度から選択肢を提示し関連する消費の傾向を探った。上位を見ると、双方とも1 位と3 位に「食事に行く」と「いつも笑顔でいる」が挙がる。それ以外の項目を見ても、「一緒に出かける」「定期的に会う機会を設ける」など、実際に会うことが重視されており、会った際には笑顔で穏やかに心地よい時間が流れるよう雰囲気づくりを怠らない様子がうかがえる。

「誕生日など記念日に贈り物をする」について見ると、「~家族」では5 位に挙がり、30 代後半の約45%を筆頭に、他世代も30 ~ 40%が反応。「~友人・知人」では10 位であり30 代以上では20%以下の反応しかないが、10代後半で40%、20代半ばで40%弱が反応と、世代差が大きい。ただ、各世代、対象は異なりつつも40%はなにかしら贈り物をしているという結果となった。特に、10代後半は「家族」より「友人」が10 ポイント以上上回っており、友人との円滑な関わりに贈り物が媒介していることが分かる。

■国内ギフト市場は将来有望下世代ほどギフトに明確な意味

矢野経済研究所のデータ(2018 年11月時点)によると、国内ギフト市場は2018年105,610 億円(小売金額ベース・見込み)、2019年度106,580億円(予測)と、ここ数年前年を上回る状況が続いており、モノを買わないと言われる中では有望な市場と見ることができそうだ。巷では、ギフトコンシェルジュなどが登場し、贈り先の趣味嗜好やライフステージなど多様化するライフスタイルに適した情報を提供するサービスや、こだわりの逸品をセレクトしたギフトショップやサイトも増えている。

定性リサーチでギフトの頻度を聞いてみると、男性より女性、シングルよりファミリーの、中でも上世代ほど頻度は高くなる。自身の役割の種類、人との距離感により個人差が見られるものの、贈り合うタイミングはやはり誕生日やライフイベントが中心になっている。

実際に、デジタルネイティブ世代の「ここ半年であげて喜ばれたもの」、「もらって嬉しかったもの」には、「母の日にペアのお食事券をあげた。父と二人で出かけることが減っていたので、一緒に行ってもらうよう父の日を前倒しにしてプレゼントした/ 20,000円」(LINE世代・女性)、「母の日に、日頃の労をねぎらうため自分で準備した手巻き寿司を振る舞った/ 4,000 円」(LINE下世代・男性)、「突然チケットを渡され、ディズニーランドへ行った。サプライズで用意してくれてその日一日とっても幸せだった/ 4,000円」(LINE下世代・女性)、「バレンタインにTHREEのメンズケアセットとポーチをもらった。チョコだけでなく、しっかりケアできる効果の高いものを選んでくれたのがうれしい/ 5,000 円」(ハナコジュニア世代・男性)など、コトを前提としたモノが選ばれるなど、相手のニーズを汲み取ったものが多く挙がった。特徴的だったのは、上世代にはお中元お歳暮といった儀礼的な贈り物や「ランチで会う時用にアウトレットでブランドもののハンカチを買っておいた」などバラマキ土産の挨拶代わりの贈り合いが未だに存在しているのに対し、下世代ほど相手にとって必要なものを贈るという、ギフトに明確な意味を持たせているということ。またギフトを渡すシーンの演出も緻密に計画していたりすることだ。

■ギフトはリアルな時間を満足度高く過ごすためのツール

「断捨離」ムードが定着する中、「無駄なものは買わない」、「どうせなら楽しむ」といったスタンスが、「無駄なものはあげたくない」、「単なるモノに留まらない」といったギフト内容・シーン演出にもつながっているように感じる。その辺りのギフトに対する考え方や選び方、ブランドの意味などは世代によりグラデーションが見られるため、その特徴を一覧にまとめた(図1)。

アラサー以下の、ネットを駆使するデジタルネイティブ(現役下)にとってのギフト消費は、日々のつながりを盛り上げ、リアルな時間をより満足度高く過ごすためのツールとしての傾向がある。相手のことを考えながら選ぶ・買う、どのように贈るかという当日の演出を事前に考える、そして当日、相手が喜んでくれるポジティブなシーンを共有するという一連のプロセスを経て、それぞれの楽しみが次の楽しみを生んでいき、相手のことを考えながら自身にとっても“ 楽しい” が連鎖的に広がり、気分盛り上げ型消費に置き換わっていくという傾向が見られる。

ネット時代だからこそ、人との関わり方をサポートするモノ・コト・サービスの有り方を突き詰めることで広がりある消費シーンが生まれていくに違いない。






著者情報

ナレッジ開発室 室長 “ifsオリジナル世代区分・気分・見た目で消費の今と未来を読み解く”をベースに、会員制マーケティング組織「FA CLUB」の企画・運営を担当するほか、クライアント別案件にも携わる。最新発行物「自創―自ら変化を創造する」では、これからの時代の方向性にフォーカスし、アプローチヒントをレポートしている。1992年入社のばなな世代。趣味は人間観察

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