マーケティング戦略アップデート 最終回  変化すること、しないこと

激動の時代だからこそ

経営戦略誌である本誌コンテンツのなかで、読者のみなさまにとって少し箸休めにもなるページの役割を担い、本連載を当社のマーケッターが執筆してきた。この激動する時代を多様な角度から捉えるため、あえて世代の異なる7人の執筆者が担当した。

第 1 回 SDG と若者
第 2 回 オフライン体験に期待を高める「インスタ世代」
第 3 回 世代によるサスティナビリティ観の違い
第 4 回 東京一極マーケティングの転換点
第 5 回 風の時代と心地よさ
第 6 回 徒歩旅行のポテンシャル
第 7 回 “移動型” コンテンツで楽しむ暮らし方
第 8 回 世界の変化、未来への行動
第 9 回 身近- 心近なモノ・コト・ヒト・マチ
第10 回 「常連さん」の時代
第11 回 地域を活かすワーケーション
第12 回 D2C とE コマース
第13 回 Z 世代は社会問題を意識した観光を求めている

ここまでの計13回、タイトルを並べてみると意外な共通点をみることができる。
● 経験したことのないコロナ禍の距離感で、人生における大切な時間を過ごしているいまの尊さ
● 不確実性の高い世の中でマインドフルネス、ウェルネスといった心身の健康の大切さ
● 個のこだわりの集合が、本質的な長期消費に
● オフライン本来の魅力への期待
● 昔から引き継がれる持続可能性をもった“日本流”
● 原始的なアプローチがデジタルと組み合わさり顧客を魅了する
二律背反として反対に見えることでも、しっかり噛み合うことで両立したときに魅力が増す。そんな視座が多く見られた。
今後も、世界では新型コロナのような重大リスクが突然起こっても不思議ではない。ボラティリティが高すぎて誰も未来を予測できない状態である。戦争、金融危機、新たなパンデミック、地球温暖化、極度の貧困がグローバルリスクと捉えられている。一方、子どもの死亡率低下や水・食料調達の改善、自然保護区の拡大など、積み重なる変化のため気づきにくい側面もあるが、力強く1つひとつを解決し、良化も起こっている。

変わらないことの魅力

ダーウィンの進化論について、政治演説でそのフレーズが使われて以来、「変化できたものだけが生き残る」との意訳をビジネス界でもよく耳にする。しかし、どう変化するか予想が困難な社会環境のもとで、効率化を進めることの正当化に用いられるなら、やや正確ではないと考える。実は非効率で無駄が多い選択肢をもっているほうが、変化に柔軟に対応できる性質といえるからだ。
デジタル化は速く、安く、そこそこ上手く、そして個を理解し最適なタイミングで接続することにその目的がある。2030年には6Gが実現し、アバターが自分の代わりに働いてくれるようになるなど、劇的にバーチャルの世界が拡張する「ソサイエティ5.0」がはじまると言われている。変化への受容性を高めることは、今後ますます重要になるであろう。
一方で、「らしさ」や従来から大切にしてきた要素をビジネスとしての価値に変革し、時代に合わせて進化させることも必要だ。
ドラッガーは市場を“market” として見たのではなく、一人の個である人間(= “a Customer”)の集まりとして見ていた。今後は欲望喚起型の消費行動は限定され、顧客との関係性を重視し本質的に価値があるものへと移行する傾向が強まるであろう。

深呼吸をしよう

ビジネス環境をシビアに見積もりつつ、自社の隠れている魅力を再発見するために社員や顧客と対話し、外部からも信頼できる有効な情報を手に入れる。自社にもきっと、他社にはできない顧客を惹きつける魅力が時代の変化のなかに隠されているはずである。デジタルでできない顧客体験を準備し、それをデジタルで広めよう。
レジャーを“自由な時間” と捉えれば、デジタル化により創出された余暇の過ごし方において、大きな空白市場が口を開けているはずである。
当社マーケッターによる本連載は市場の姿でもあり、世代が異なる執筆者一人ひとりの内面を表わしていたともいえるかもしれない。本連載が、ビジネスで多忙な毎日を送る読者のみなさまの「ひと息」をつく場となれていたならば、われわれの本望である。

著者情報

ifs未来研究所 所長代行 アントレプレナーとして事業経験後、現職に就く。 2022年よりifsのシンクタンク組織であるifs未来研究所を継承し、環境・社会・経済を「一体かつ不可分」とした未来型協働解決アプローチを実践する。 74 年生まれの団塊ジュニア世代。

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