
いまだ、都市部を中心に緊急自体宣言が発令されており、大規模な商業施設は一部休業を余儀なくされている。
  そんな状況の中、各社や各ブランドの月次売上速報で、対前年同月比を見ると、一瞬、回復か?と、勘違いしそうな数字が並んでいる。対前年比150%とか、200%とか、近年見たことのない数字が並んでいるが、これらは、昨年の緊急事態宣言発令時に、大規模商業施設が全国的に休業していた数字との比較であることを注意しなければならない。
  昨年は、小売業や商業施設は軒並み、前年比10-30%で推移していたのだから、その数字を指標に150-200%になったとしても、成長とは言い難い。昨年、前年比30%だったブランドが、今年、前年比200%になっても、“前前年比=一昨年との比較”でいうと、まだ60%にしかなっていない。このブランドが2019年並に回復するには、333%の成長が必要だ。
  今はまだ、対前前年比で済むかもしれないが、今年の9月-10月になると、さらにこの数字が意味のないものになる。2019年10月に消費税増税があった関係で、駆け込み需要と反動減があり、本当の回復を知るには、さらに“前前前年比”まで、考慮する必要が出てくる。さらに来年を考えると、もう訳がわからなくなってしまう。
  前前年比とか前前前年比とか、まるでRADWIMPSの曲(※)のようなことを指標にしないと、回復度合いがわからない。企業やブランドの成長の度合いや、売上規模の大小を取り除いて、他社と比較して時代性を捉えているかを判断するのが、対前年比だったはずだが、もはや、この指標の意味をなさなくなっている。逆に対前年比だけを見ていたのでは、好調・不調を見誤ってしまう。
  もはや、機能しなくなった対前年同月比に向かって、「君の名は。」と問いただしたくなってしまう。
  
  ※RADWIMPSの曲 :2016年長編アニメーション「君の名は。」の挿入曲として日本の4人組ロックバンドRADWIMPSがリリースし、映画とともに大ヒットした楽曲「前前前世」を指す。

 
                 
                      
                     
                      
                     
                      
                    