街づくりとウォーカビリティ(Walkable + Reality)【ifsマーケター連載:太田の目】

繊維月報の連載など、外部への執筆・講演でもおなじみの ifs 名物プランナー太田敏宏による、時代を独自に読み解くコラム「太田の目」。

今回は街づくりを手掛けてきた視点から、「ウォーカブル」な街の実現に向けたヒントをお届けします。
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2020年にウォーカブル推進法(改正都市再生特別措置法)が成立してからというもの、街づくりのトレンドは、ウォーカブル一色とも言える状況になっている。「まちなかにおいて多様な人々が集い、交流することのできる空間を形成し、都市の魅力を向上させ」*、居心地が良く歩きたくなるまちなかづくりに取り組むエリアや、車道を歩道や広場へと変更する取組が全国で盛んになっている。

歩行者の居心地を高めることで、交流や滞在を促す。交流や滞在は偶然な出会いを生み、消費や新しいビジネスの創出に期待するというものである。こうなると、商業施設も、従来のように、建物の中にいかに客を閉じ込めておくかという発想から、通りや広場との一体化を図って、街の一部としての機能が求められるようになる。商業施設のファサードを高級ブランドで固めるのではなく、通りと融合したカフェなどにすることが魅力になりつつある。

通りと融合するという発想の典型が「横丁」である。通りに沿ってカジュアルな飲食店を並べ、出入口もなるべくオープンにする。ウォーカブルな飲食店ゾーンを演出する。「横丁」づくりは新しい商業施設の核になりつつある。「横丁」というネーミングそのものも、もとは飲食店を指すのではなく、表通りから横に入った細い道という「通り」を指すものであることは、偶然の一致とは思えない。

「横丁」にしても「歩きたくなるまちなか」にしても、それを形成するショップや飲食店が重要になる。有名なナショナルチェーンを並べても、歩きたくはならないし、ちょっと寄って行こうかという気分の盛り上がりにも欠ける。期待を持たせる猥雑さや、体験したくなるような神秘性など、多少のリスクはあるものの何らかの発見や人との出会いも期待できそうといった、そこでしか味わえないような魅力が求められる。

安心感を味わいたいなら、口コミサイトの点数やECサイトで徹底的に比較すればいい。街で体験したいのは、偶然や発見であり、その店にちょっと寄って行こうという、ある種の「勘」とちょっとした「勇気」、それが満たされた時の「充実感」である。それがリアルな場(=Reality)の真の魅力となってきている。
 
*「都市再生特別措置法等の一部を改正する法律概要(国土交通省作成)より引用

著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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