リアルを映す【ifsマーケター連載:太田の目】

繊維月報の連載など、外部への執筆・講演でもおなじみの ifs名物プランナー太田敏宏による、時代を独自に読み解くコラム「太田の目」。

今回は、生活者に訪れた「リアル」への変化と、企業のスタンスのズレについて時流を紐解きます。

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目を大きくしたり、顔が小さく加工できたりするなど、別人のように“盛れる”のが、プリクラの一般的な機種だった。誇張しすぎて、本人かどうか分からなかったり、なんだか別の生き物になってしまったりしている写真をよく見かける。それに対して、盛れないプリクラ機、ちょっと高性能な証明写真機やセルフ写真館のようなプリクラ機が韓国から上陸し、人気なんだという。

また、SNSの世界でも、Instagramでの投稿では、画角や証明、ポーズ、装飾など、“映える”ように演出するのが当たり前だった。それに対して、“映えない” “盛れない”ということを特徴として、人気獲得中のスマホアプリが「BeReal」。1日1回、ランダムな時間にアプリからの通知が届き、ユーザーは2分以内に投稿しなければならない。だから、外出中でも、食事中でも、授業中でも皆、2分以内に投稿する。かつ、各種のフィルターが一切使えない。つまり、友だちが同時刻に何をしているかという、本当のリアルが伝わる仕組みだ。

こんな、本当の姿を伝えるツールが流行する背景には、褒められたい、認められたいという“承認欲求”からの疲れがあると言われる。褒められたいが故に、欠点を隠し、誇張し、いい部分だけを切り取り、演出する生活に疑問を持ち始めている人も多い。あるいは、本当の姿を伝えて、それが褒められた方が気持ちいいのだろう。

いっぽうで、ビジネスの世界では、まだまだ、褒められたい企業、認められたい企業でいっぱいだ。殊更にいいことだけを切り取って発表する、世の中に“映える”ようなことだけ伝える。ステークホルダー側は、株主対策やCSRのためだと見抜いている。褒められていると思いきや、実は、おだてられている可能性だってある。いい気になりすぎて、誇張や欠点がバレた場合に、足元をすくわれないようにしたい。

盛る・映えるよりも、リアルを伝える。つまり、ビジネスの透明性の方が重視される時代になっているのだから。



著者情報

第1ディビジョン マーケティング開発第1グループ 小売業やメーカー向け戦略策定、商業デベロッパー向けの戦略・コンセプト策定・ディレクションなどが主な業務。時代を独自に読み解く視点で執筆・講演も行なう。同社ホームページにて「太田の目」を連載中。オリジナル調査「Key Consumer Indicators by ifs」のディレクターも務める。1963 年生まれの「ハナコ世代」。あいみょんの大ファン。

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