ママになり始めたポストバブル世代

~おしゃれママと子供たちがファミリーマーケットを変える~ 従来型の大型ファミリーブランドが売れなくなってきたり、子供服の売れ筋が変わってきたり・・・ファミリーマーケットで変化が起きつつある。というのもプリクラ世代を中心としたバブルを知らない新しい価値観を持ったポストバブル世代がママとして市場に参入し始めているからだ。ハマトラ、ワンレン、ボティコン・・・といった一元的なマスファッションしか経験してこなかったプレバブル世代と比較し、セレクトショップやマルキュー、ウラハラ・・・といった様々なファッション経験をしてきたおしゃれ感度の高いポストバブル世代ママ。彼女たちがどのようなファッション志向を持っているのかをレポートする。 *ポストバブルママ:バブル崩壊時の91年に高校を卒業していない世代。つまり、73年以降生まれの現在20代後半~30代前半を想定。団塊ジュニア世代とプリクラ世代の2世代にあたる。


目指すママ像によって4つに分類


ポストバブル世代ママのファッションを分類すると、大きくは4つのグループに分かれる(図1参照)。

縦軸はファッション選びの視点で、他人の目を意識する“好感度重視志向”か、他人はどうあれ自分の視点でファッションを楽しむ“個性重視志向”かという軸。横軸はテイストで、おしゃれさよりも女性らしいファッションを好むか、女性らしさというよりはおしゃれに見えることを意識したファッションを好むかという軸をとっている。

①フレンチカジュアルママと②フェミニンカジュアルママは、他人の目線を重視するコンサバな志向性が強いという意味で、団塊ジュニア世代に多く、③ストリートカジュアルママ、④セクシーカジュアルママのような個性重視のファッションを志向するタイプは、プリクラ世代が中心となっている。幼稚園ママ友の目線を気にするグループというのは、その意味でも①②のママグループにあたり、また身体のラインを強調した女性らしいシルエットを好むというのがセクシー志向の②③、スカートにスパッツを合わせて着こなせるのがファッション感度の高い①③のママという読み方になる。

■図1 ポジショニングマップポストバブル世代ママをファッションの意識と志向を軸に分類すると4つのタイプの分類される。

学生からの刷り込みはママになっても、
40代、50代になっても変わらない


これらのママファッションの分類は今に始まったことではなく、消費の自由裁量権(*)を獲得した高校生、大学生の頃から刷り込まれており、たとえば、学生時代にフレンチカジュアル系のファッションをしていた子がママになって、セクシーカジュアルママになってしまう・・・といったことは、今までの調査結果からはほとんど見られない。ファッションがこれだけ多様化、成熟化した今、“ファッション=自分がどうありたいか・・・”といった根本的な性格や考え方、気持ちをそのまま表現できるツールになっており、かっこよく目立ちたい子はヘソ出しもいとわず、かわいくモテたい子は必然的にえびちゃんファッションを志向するという方程式が成立している。

その意味で、今の彼女たちが40代、50代になったからといって、いきなりセクシー系ママがストリートママに移行する、あるいはいきなりコンサバファッションになる・・・ということも考えにくく、これらの本籍地を把握した上での商品開発ということが今後も重要になってくる。

(*)消費の自由裁量権:「自由な時間」「自由なお金」「自由な判断」「自由な情報」という4つの消費裁量の権利。これを獲得した時期=10代後半から20代前半の生活環境や消費経験は強力な刷り込みとなり、その後の消費行動に大きな影響を及ぼす。特にファッションについては、この時期に流行ったスタイルや人気を集めたブランドの傾向が、引き続き好まれる。

子供のファッションも
ママの志向性によって異なる


これらのママファッションの志向性は、子供ファッションにも大きく影響している。現状の子供服の購入傾向に関して、実際のショップに聞いたところ「ストリート系ママは、デニムを中心としたアメカジ風、フェミニンママは高級インポート、フレンチカジュアルママは、『ハグオーアー』などのこだわりナチュラル系といった感じで、フェミニンママがストリートやアメカジ系のブランドを買うことはまずない。」(自由が丘のリサイクルショップ「ViVity」海野店長)など、ママの志向性によって明らかに傾向が異なるという。中でもセンスがいいのは、ストリート系、フレンチカジュアル系ママで、ママと同じように子供にも自分と同じように重ね着をさせることができる。一方、フェミニン系ママは、モノというよりブランド名(マミーナ系ブランド)で判断する傾向があり、これは好感度×女性らしさ=百貨店王道ブランドを好むフェミニンママの特徴がそのまま反映していると言えそうだ。

従来とは違う選択眼のある
ママ層をめぐる新たな動き


とはいえ、ポストバブルママは、プレバブルママと比較し、ファッション経験値が高く選択眼もあり、なかなか手ごわい消費者だ。前述のリサイクルショップでも「この『バーバリー』は三陽商会ですか?『ポロ』は「ナイガイ」ですか」など、特にネット販売では問い合わせをしてから購入するケースがほとんどとのこと。インポートは縫製が悪く、ライセンス商品しか売れない。また、現在150以上のブランドを扱っているが、次々に新しい商材が持ち込まれたり、新しいブランドの問い合わせがきたりと、店長も取り扱いブランドが覚えきれないほどマーケットが広がっている。

その他、今年3月にはセレクトショップのユナイテッドアローズが、自店で育ったポストバブルママを狙ったディズニーとのコラボレーションによる子供ショップ「Disney Loved By Nature for UNITED ARROWS」を立ち上げるなど、新たな動きもみられる。

子供に自分の意思がでてきたら、なかなかママの思うようにはいかなくなるというのが従来の考え方だが、これだけママがオシャレになれば、母娘でのファッションの共有化、影響度が強まることは十分予想され、今後の動きが注目される。

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