ハナコジュニア世代が求めるネットショッピングサービスとは

ハナコジュニア世代(‘87~‘92年生まれ/現在20歳~25歳)はデジタルネイティブ世代と言われている。今後消費の自己裁量権が高まるであろう彼らだが、調査してみると意外にもネットショッピングには消極的。ネットショッピングは拡大基調と言われているのになぜなのか? そこで、自身もハナコジュニア世代である筆者が同世代目線でベースとなるマインドや消費傾向を今一度見直してみることで、彼らの心をつかむネットショッピングサービスの可能性を見出したい。

ハナコジュニア世代はネットショッピングに消極的

ハナコジュニア世代はネットの習熟度が上の世代に比べて高い。小学校にパソコンルームができ、早くも中学生の頃から携帯電話を所持、各家庭に1台はパソコンがあり…と、とにかく物心がついた頃から常にデジタル環境に身を置いて育ってきたからだ。弊社が実施したアンケートでも、「今後お金をかけたい分野」で「デジタル通信機器」と答えた割合は全世代の26.5%と比べてハナコジュニア世代は32.4%とダントツに高い結果となった(図1参照)。ハナコジュニア世代は今後益々加速するであろうデジタル化に対してポジティブな姿勢でいることが伺える。一方で、彼らのネットショッピング利用率は上世代に比べて意外に低いことも同調査で明らかとなった(図2参照)。その理由をインタビューしてみると、「堅実」「失敗回避」なハナコジュニアにとってネットショッピングは「実際に商品を手にとって確かめることのできないリスクの高い買い物」で、こだわらず安く買いたい場合などを除いては敬遠することがわかった*。 仮説だが、彼らはライフステージ的に学生が多く、実店舗で見て触れて気に入ったものを購入できる時間があるので、忙しい上世代に比べ、ネットで購入するメリットを「安さ」以外には感じられないのかもしれない。

ハナコジュニアにネットショッピングの可能性はないのか? 改めてハナコジュニア世代のファッション意識を踏まえた上で、今後のネットショッピングサービスについて考えてみたい。

ハナコジュニア世代の消費特徴

まず、ハナコジュニアの消費特徴として、「欲しい=買う」ではなく、「欲しい→必要かどうか考える→買う」と、ワンクッションあることだ。つまり実際に役に立つものにお金を使う傾向にある。その選び方は品質重視で、長く使えることが重要と考えており、購入する際には「身の丈」感や納得感が必要とされる。このように、基本的には財布のひもは固く「堅実さ」が顕著となっている**。

ハナコジュニアのファッション意識は二極化

ファッション意識では、ハナコジュニア世代はメインストリーム層とエクストリーム層の2極化が進んでいる。この世代は上世代に比べると全体的にファッションへの関心は高く、感度は底上げされているものの、均一化が進み、メインストリーム層8割、エクストリーム層2割と、メインストリーム層がその名の通り巨大化している。店に売っているものをなんとなく着ているメインストリーム層と、業界進出を目指すほどの高い意識を持ち、異なるテイストの強い個性を持ち合わせるエクストリーム層の間にはファッション意識に大きな差が生まれ、二極化に至っている(図3参照)。両者のそれぞれのファッション消費の特徴から、彼らが求めるネットショッピングのあり方を探ってみよう。

同調を求めるメインストリーム層

弊社では定期的にストリートキャッチ調査を行っているが、メインストリーム層はファッション性で個性を発揮するよりは、周りの友達と同調し、ダサく見られないことが服選びのポイントとなっている。そのため親や兄弟や友達など自分をよく理解してくれている周囲の人に意見を求める傾向にあり、販売サイドからの「売れ筋」という宣伝文句も彼らを安心させる。

こうしたメインストリーム層がネットショッピングに求めるものは、「何が流行っているか教えてくれるもの」「家族や友人の意見を気軽に聞くことができるもの」「売れ筋商品などを一覧で見ることができるもの」「合理性に価格比較できるもの」であるといえよう。

そんなメインストリーム層にうけているのは、以下のような3つのSNSサービスだ。

2012年12月にサービスが開始された「snatch!」( http://lp.snatch-ec.jp/)は、「SNS機能付き価格比較」アプリで、バーコード読み取りやキーワード検索機能を使い、Amazon、楽天、Yahoo!ショッピングに掲載されている全商品の価格を一括横断的に比較でき、気になる商品のレビューを一度にチェック出来るというもの。

2つ目は「モノの百科事典」をコンセプトとしたSNS「sumally」(http://sumally.com/)。ハナコジュニアへのインタビューでも、「ノンジャンルでランダムに出てくるから暇つぶしに最適だし、感性が高められる気がする」と好評だ。

3つ目はグルメの実名口コミSNS「Retty」(http://retty.me/)だ。実名登録なので、「身近な人の評価もあり、情報交換可能で信頼出来る」ということらしい。身近な人の口コミの方がより信頼性高く感じられるという。
以上3つの共通点としては、「持ってる」「欲しい」などの「購入する」という以外のボタンがあること。今まで「自分」対「ショップのサイト」という1対1の関係になりがちだったが、これらのサービスを利用すると、家族や友達を巻き込んで相談しながらショッピングを楽しむことができる。この「巻き込み」を気軽に出来るサービスがファッション部門で充実すれば、メインストリーム層にとってネットショッピングを後押しするきっかけとなるのではないだろうか。

個性や差別化を求めるエクストリーム層

もう一方のエクストリーム層は「ファッションはコスプレのツール」として捉えている。会う人や場所など場面に応じてキャラ設定をし、それに合わせて服だけではなく、ヘアやメイクやネイルも含めてコーディネートする。ファッションで目立つことに抵抗感はなく、周囲との差別化を積極的に図っている。そんなこだわりが強い人ほど妥協はできないため、彼らにとっては自分らしさを演出できるものかどうか、が消費のポイントとなる。そのためには、「流通量の少ないものでも検索に引っかかること」、「カスタマイズできるもの」、「そのサービスを使うことで欲しい物がはっきりすること」が重要だ。

そんなエクストリーム層の注目を集めているサービスがある。1つ目は大人気アプリ「Instagram」を使って撮影した写真を並べて自分だけのiPhoneケースをデザインすることができる「Casetagram」(http://www.casetagram.com/)だ。2012年1月に日本語に対応、その後iphoneアプリも登場し、雑誌で紹介されるなど、人気が高まっている。

2つ目は、2010年に日本でのサービスを開始した「shoes of prey(図4参照)」(http://www.shoesofprey.jp/)。自分好みの、色、形、素材、ヒールの高さにカスタマイズして理想の靴が作れるということで話題となっている。


shoes of prey

3つ目の「SHOP STYLE」(http://www.shopstyle.co.jp/)はネット通販のサイトに掲載されている商品が集約されているアプリで、アイテムもしくはブランドごとに商品を検索することができるもの。情報の多さと、ビジュアルの見やすさから、漠然とした自分の頭の中にある欲しい物と照らし合わせることができるという。

これらのサービスは、自分らしさを表現するために自らモノのデザインができるということ、ネット上で自分らしいものを簡単に探せ、個性化や差別化をうまくサポートしてくれことが特徴。

現状、カスタムメイドはiPhoneケースや靴という限られたカテゴリーでしか実現していないが、例えば、洋服の生地を自分でデザインできるサービスや、その生地を使って洋服をカスタムメイドできるサービスが行われるなど、個性や差別化を存分に発揮できるサービスが実現すれば、エクストリーム層へのネットショッピング誘導が狙えるかもしれない。
上記のようにネットの習熟度は上世代に比べてダントツに高くとも、ネットシッピングが盛ん、とはいかないのがこの世代のなんとも難しいところである。世代特徴とくすぐりポイントを掴み、企業がサービスを確立するのが早いか、ハナコジュニア世代自身が、社会にでて、自ら新たなビジネスを構築するのが早いのか注目していきたい。

*出典:2010年6月発行FA流行誌vol.67『ハナコJr.の“今”を探る』より
**出典:2011年1月発行FA流行誌vol.71『ハナコJr.の実態』より

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