Hanako世代女性は、 「生涯主役」 で 「しおれない」

“この先シニア”共同研究プロジェクトの結果から分かった2020 年のシニア像 伊藤忠ファッションシステムでは、2013年12月から2014年3月にかけて“この先シニア”共同研究プロジェクトを実施してきた。本プロジェクトは6社の参加企業を得て行われ、2015年4月には参加企業のファミリーマートとサントリーが共同開発した飲料も発売された。また、花王“Hanako研究”プロジェクトも含めて、今年6月にその成果をまとめた書籍『シニアビジネスの新しい主役 Hanako世代を狙え!』がダイヤモンド社より刊行される。今号では、“この先シニア”であるHanako女性の特徴と今後のライフプランについて、概括してご紹介したい。 *文中に登場する世代名はifs世代論による名称 *プロジェクト概要は、図1参照

「生涯主役」で 「しおれない」
Hanako女性の特徴5つのポイント


シニアビジネスというと、そのターゲットとして“今どきアクティブシニア”団塊世代を思い浮かべる方も多いと思う。しかし2020年のオリンピックイヤーには、Hanako世代(1959 ~ 1964年生まれ/現在51 ~ 56歳)の先頭が60代になり、この消費に欲張りな最後の世代がシニアマーケットを激変させる予感がある。“この先シニア”Hanako女性の特徴を、“今どきシニア”団塊女性との違いに触れつつ、以下の5つのポイントにまとめた。

①自分が中心、いつまでも女性として輝く自分が何より大事
団塊世代以前の女性は、「家族の中で妻・主婦・母という役割を担う自分」として生きてきた。対してHanako女性は、「社会の中で輝く自分」でありたいし、その自分像を周囲から認められ称賛されることが優先で、妻・主婦・母の役割は自分の一側面にすぎない。子育てが終了し仕事もリタイアするこれからは、時間もお金も自分が輝くために使いたい。良くも悪くも自己中心で、家族や他人に尽くしたり、ボランティアなどで社会貢献しようとする意識は希薄である。

②夫とは対等なパートナー、子育ては自分の成果
団塊女性は旧来の「夫についていく関係」を意外にも引きずっているが、Hanako女性は、「夫はパートナー、共同生活者」である。また「子育ては自分の義務」としてきた団塊女性に対して、Hanako女性は「子育ては自分の成果」であり子どもは自分の成果物である。自分のDNAを受け継ぐ孫は大切ではあるが、適度な距離感を保ちたく、孫の子守として利用されることは好まない。むしろ自分の興味に、子どもや孫を巻き込みたいくらいだ。

③家事は自分の役割と認識しつつも、輝くためには外注もOK
団塊女性までは「家事は生涯自分の役割」だが、Hanako女性は「家事という役割からそろそろ卒業」したい。外出で忙しくて時間が無かったり、疲れてイライラするくらいであれば、掃除など家事の代行サービスを頼んだり、総菜を買ってきて夕食を済ますことは、許容範囲だ。自分が輝き心地よく過ごすためには、時間をお金で買うことも厭わない。家事の外注化にトライする最初の世代に対して、新たなビジネスチャンスが見込めそうだ。

④老化は少しずつ実感するも、美容・健康面でエイジレスを目指す
なるべく長くアクティブでありたい“今どきシニア”団塊女性は、美容より健康に対する関心が高く、「元気」「知性・教養」というキーワードが響く。対して生涯女性として輝きたいHanako世代は美容命であり、「見た目の女性らしさ」にこだわり続ける。もちろん老化のサインは無視できないが、「年齢不詳(エイジレス)」を目指す。いつまでも若く美しく主役であるための努力は怠りなく、輝き続けるための出費は厭わない。

⑤老後は今の延長、できれば今よりもアップグレードしたい
夫の定年後刺激のない毎日になった団塊女性は、「非日常の刺激」にお金をかける。その代表が旅行だが、疲れないためのアップグレードシートや旅先ファッションには財布のひもが緩む。対してHanako女性は、「日常のアップグレード」にお金を使う。今までできなかった自分の思いのままの日常生活、例えば趣味に没頭したり美容に時間を使ったりする生活をかなえたい。ハレや誰も見ていない非日常によりも、日常を快適に楽しむために限りある資源を使いたいのだ。

このように、Hanako 女性には「終末へ向かって生活をシュリンク・ダウンサイジングさせるシニア」という雰囲気はない。「生涯主役」を演じきるための舞台装置は、可能であれば今よりもアップグレードしたいくらいだ。

子ども次第で今後の人生が大きく変わる!
子どもの有無、子どもとの関係性から見える3つのライフプラン


一方で、ほぼ皆婚世代であるHanako女性(図2)であっても、子どもの有無や子どもとの関係性がその後の人生における情報網の広さ・深さ、行動力の速度や範囲、受動的ライフイベントの頻度、主役感を得る舞台などに大きな影響を及ぼすことが分かった。既婚女性を、子どもとの価値観が類似している「子どもは成果物Hanako」、価値観に相違が見られる「子どもは別物Hanako」、そして約2割存在するDINKS(図3)を「変化点自己演出DINKS Hanako」と名付け、3つのタイプに分類。それぞれのHanako女性が今後置かれるであろう環境を想定し、そのライフプランの方向性を捉えた。

 

①「子どもは成果物Hanako」は、子や孫のライフイベントで自ら主役を演じる
文字通り子どもが成果物であり、自己満足だけでなく周囲からも承認・称賛されているケース。子育てが終了しようとも、今後も子どもや孫との距離は近く、子どもの就職や結婚、孫の誕生などのライフイベントも、今の暮らしの延長線上で自分自身が主役となるような消費に置き換えられる可能性が高い。息子とは恋人、娘とはよきライバルであり親友。団塊世代でも母娘消費が注目されてきたが、Hanako女性の場合は、「娘の方が高いバッグを持っていることがあって、年上の私からしたらそんなこと許せません」などと、主役意識が高い分、自身と比較する発言が多い。身近に、娘=若い女性=ライバルが存在するがゆえに、女性としては「年齢不詳」を目指さざるを得ないと言えそうだ。

② 「子どもは別物Hanako」は、夫をパートナーに再び人生を踊る
子育てはひと通りきちんとしてきたものの、子どもとは基本的に価値観が合わず、今後のライフプランに子どもや孫が登場する頻度が少ないと予測されるケース。分岐点は子育て終了時であり、「自分の人生をやり直すタイミング」を迎えることになる。特に、夫は共同生活者であり、家族を演じてきたHanako 女性にとって、今後の暮らしを充実した楽しいものにしていくためにも、かすがい(子ども)に代わる夫との新たな接着剤探しに迫られている。「今さら2人でドライブなんて…息苦しそう」など、そもそもカップル消費を謳歌してきた人たちであっても、そのハードルは高そうだ。2人行動の必然性ある消費シーンを創出していくことになるだろう。

 ③「変化点自己演出DINKS Hanako」は、自分が最も輝くステージを自らつくる
キャリアとして培ったスキルはあるが、今後のライフプランに受動的に組み込まれる子どもや孫のイベントは全くないというケース。分岐点は自身のリタイアであり、その後のライフイベントは自らつくり続けなければ、ほぼ無いに等しい。男女雇用機会均等法前後に社会人スタートを切ったHanako DINKSの場合、達成感の大半を仕事で得てきており、リタイア後は濡れ落ち葉と言われた男性の定年後と変わらない状況が待ち受けている可能性が高い。夫婦の立ち位置はある程度確立されているが、それは仕事という別世界を互いに持っていたからこそ成り立ってきた場合も少なくない。これまでの良好な関係をキープするためにも、リタイア後も自立した世界を持ち続ける人生プラン構築に着手する必要がある。

上記は、多様化するHanako女性のマインドから捉えているため、属性的に3つのタイプにハマらない場合であっても、より近いものをベースに今後のHanako女性の人生が組み立てられると考えられる。その辺りの商機のポイントや攻略法については、ぜひ本書をご覧いただきたい。

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